第15話 俺の前夜の誕生日に幸あれ!
4月1日か、学校は今春休みなので、やることが無い。ちなみにホワイトデーは何もしていない。
とは言っても俺は本屋にいる。なぜなら欲しい新作が入荷したからだ。
あった、これだ。
『無職異世界生活〜無職の俺は異世界の無職でも気軽に過ごせます』
俺はそれを取り、買って本屋を出て行った。
本坂、なぜお前いるんだ?ドアの目の前に。
本は買っている、何を買ったんだ?
『コーラで異世界無双〜飲食最強冒険者として名を広めます』
そんなのあるのか、興味が湧くので、今度読ませてもらおう。
「ほ、本坂くん、私変なことした?」
「え、いやなんでもない、本のタイトルに興味を惹かれて」
近づきすぎたみたいだ。後あなたですよ、本坂は。
なんで動揺したんだ。
「やっぱ気になるよね!?」
「う、うん」
「この主人公が豪快にコーラ飲むところがたまらないよ」
「へえ、具体的にはどういう物語なの?」
「さあ、分からない」
コーラ飲む瞬間の所しか覚えてないのか。まあ本坂ならそうであろう。
てかラノベだよな?それ。
イラストしか見てないのか?
「へえ、では俺はこれで」
電車に乗り、家へ帰った。
「ただいま」
「おっかえりー」
「本坂さん、なんで俺より早くいるの?」
弟よ、こいつが来たなら退治しといてくれ。
はあ、めんどくさい。
「電車俺の時間帯と被ってたよね?」
「猛ダッシュでここへ来たの」
あ、そう、ならついでに。
「これ、早く返してくれるかな」
「ねえ、詐欺はいくらなんでも良くないよ」
詐欺なんてするわけないだろ。健全な男子だ。
「奢るって言ったんじゃん!」
1本なら許していたんだが、
「本坂さん、あの後5本飲んでたよね?」
「グヌヌ、まさかそんなことが」
あなたがやった事です。
これで借金は900円です。
「お金今持ってる?」
「……持ってない」
「学校でもいいから返してほしいかな」
「お菓子での返済はダメ?」
「お菓子?駄菓子だとだいぶ時間かかりそうだけど」
「いつから私駄菓子って言った?ちゃんと駄菓子の中でも高いもので返済します」
結局駄菓子じゃないか。
900円卒業までには返してくれるよな?
「兄よ、誕生日パーティーの準備が出来たぞ?」
「え?去井くん、誕生日なの?」
「まあ、誕生日は正確には明日なんですが」
「前夜祭ってこと?」
「そんな感じかな、弟はなんか本日には祝ってくれないんだよね」
「ふうん」
「本坂さん、さすがにパーティー始まるからコーラ飲むのそろそろやめてくれないか?」
「分かった」
2Lのコーラを3本飲むこいつは化け物だ。
弟が来て、電気を消した。
「兄よ、誕生日おめでとう」
俺はロウソクをフッと息をかけて消した。
いつも思うことだが、なぜ弟は当日にお祝いしない?
「弟よ、なぜ毎回俺の誕生日祝いは前日なんだ?」
「秘密だ、まあいい意味でもあるんじゃないか?」
何も理由になっていない。
「主役よ、ケーキ全部食われるぞ」
「え?」
弟のこれを聞き、本坂を見る。
ケーキは残り3切れになっていた。
「本坂さん、弟の分と俺の分は残してくれない?」
「?、残したよ、ほら弟くんと合わせて残り2切れ」
「あ、ありがとう?」
……弟の分はいいとして、俺の分は半切れになっているのだが。
「ご、ごめんなさい、去井くんのケーキ少し食べて」
「え、あ、別にいいよ」
「はい、あーん」
「……」
何故だろう、食べられたせいなのかトキメキを感じない。
前夜誕生日パーティーも22時になり、終了した。
本坂を見送り、片付けをする。
弟は本坂のせいなのか寝ている。
俺の誕生日を常に祝ってはくれる、前夜だけど。
まあ幸あれってことだよな。




