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⑨⑧



それだけでも嬉しいのに皆が口々に「大切にするわ」「これで離れていても心は一つね」「お揃いだな」と言って笑っている。

セレニティは歯を食いしばりながらも涙をこらえて笑みをつくる。

その様子を見てトリシャが「その顔はずるいわ」と言って、再びセレニティを抱きしめたのだった。



「セレニティ、わたくしもハーモニーもあなたを妹のように思っているわ。大好きよ」


「離れていてもアタシはセレニティの味方だからな」


「何かあったらわたくしがいるもの。大丈夫よね、セレニティ」



ブレンダの言葉にセレニティはブンブンと首を縦に動かした。

隣国にいく二人にも「何かあったら、わたくしが飛んで行きますからっ!」と大号泣しながら言っていると、ハーモニー口から衝撃的な一言が紡がれる。



「セレニティ、アタシがいなくなった後の白百合騎士団を頼む」


「ぐす、はいっ!わかり…………え?」



その言葉にセレニティは驚きすぎて涙が止まってしまう。

呆然としているとハーモニーはその理由を説明してくれた。

白百合騎士団の令嬢たちはハーモニー同様に結婚する女性が多く、家に入らなければならない人が大半になったこと。


白百合騎士団を結成した理由の大半である男嫌いのトリシャが結婚により、隣国に行くため護衛が必要なくなったこと。

平民出身や帰る場所がない女性騎士たちはハーモニーとトリシャについてリタ帝国に行くそうだ。

リタ帝国では女性でも普通に体術や剣術を会得するらしく、女性騎士たちはアーナイツ王国よりもずっと暮らしやすいのだと教えてくれた。


そして悲しいことにセレニティと、ハーモニーやセレニティに憧れて入ってきた数人しか白百合騎士団には残らないことになってしまう。

元々、十数人しかいなかったメンバーは更に少なくなってしまうことになる。



「父もセレニティが続けたければ続けていいと言っていた。セレニティは父の命の恩人だ。それからベレット殿下と王太子妃であるパトリシア様が結婚しただろう?」


「は、はい!」


「最初の任務は恐らくパトリシア王太子妃の護衛となるはずだ」



白百合騎士団にはまだまだやることはたくさんあるようだ。

ハーモニーは白百合騎士団を解散させるのではなく、今までのように活動して欲しいと願っているように思えた。



「わたくし、残った皆様とがんばりますわ!」


「……ああ、セレニティなら大丈夫だと信じている」



ハーモニーは手を前に出す。

セレニティはハーモニーの手のひらをぐっと力強く握り固く握手を交わした。

ハーモニーから「ありがとう」と声が聞こえてきた。


こうして少しの時間ではあるが、四人でこうして過ごせたことはセレニティにとって大切な思い出になった。

何より髪飾りも便箋も渡せたことに安堵していた。


そして別れの時間が近づいてくる。

セレニティが大号泣をはじめたのをきっかけにトリシャとブレンダも肩を震わせて涙を流す。



「やだわ。最後まで我慢しようと思っていたのに……」


「そうだな」



ハーモニーも静かに涙しながらセレニティの頭を撫でていた。


そんな時、リュシアンとヤンがブレンダの控室を訪れた。

リュシアンは涙する四人に驚いていたが、すぐに状況を察したのだろう。

それからトリシャに「よかったな」と声を掛けていた。


反射的にリュシアンに挨拶をしたセレニティとブレンダを見て僅かに反応を見せたがすぐに取り繕っていた。

泣きすぎてそれを気遣う余裕もなかったが、リュシアンが女嫌いというのは本当なのだろう。


四人で抱き合いながら気持ちを吐き出して、最後は笑顔で別れた。

次にトリシャの顔を見られるのは彼女の結婚式になるだろう。

ハーモニーはトリシャが落ち着くまでは結婚式は控えるそうだ。


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