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⑨⑦


そう自分に言い聞かせるもののパタパタと目から落ちる涙は止まってくれそうにない。

いつまでも顔を上げないセレニティに「大丈夫?」と声がかかり、なんとかバレないようにしなければと俯きながら頷いた。



「あらあら……折角の可愛らしい顔が台無しね」


「まだまだだぞ、セレニティ」



そう言ってトリシャはハンカチを取り出して、セレニティの涙と鼻水だらけの顔を拭う。

肩を跳ねさせるセレニティを見て、ハーモニーとトリシャは困ったように微笑んだ。



「あなたに渡したいものがあって、こうしてここにきてもらったの」



トリシャがそう言うと、ハーモニーが背後からあるものを取り出してトリシャに渡す。



「なんだか押し付けがましいとも思ったのだけれど、これしか思いつかなくて……」



トリシャはそう言って箱をセレニティとブレンダに渡す。

セレニティが開けてもいいか確認してからリボンを解いて、箱を開くと、中にぎっしりと詰め込まれいたのは便箋と封筒だった。

セレニティはそれを見て目を見開いた。



「……っ!」


「やっぱりあなたたちと離れるのは寂しいわ。二人とも妹のように思っているから」



トリシャはそう言って潤んだ瞳で微笑んだ。

隣にいるブレンダは淑女らしく「ありがとうございます」と頭を下げる。

セレニティはトリシャと同じ思いで、同じものを選んでくれてくれたのだと思うと嬉しくて堪らなくなる。



「トリシャお姉様っ、わたくしも……!」



そう言ってセレニティも後ろに置いてある袋から包み紙を取出してトリシャたちに渡していく。

「開けてもいい?」というトリシャの問いかけに頷いたセレニティを見て、包み紙を丁寧に剥がしていく。

そして中身が見えた瞬間、トリシャはセレニティを抱きしめた。



「やだわ……考えていたことが同じだなんて嬉しすぎて言葉が出てこないじゃない」



ブレンダとハーモニーもそれには驚いたようだ。

互いに連絡を取り合うことを望んでいたのだから。


それからブレンダもセレニティやトリシャほど大量ではないが、花と便箋、そして羽根ペンをトリシャとハーモニーに渡す。

それには思わず吹き出してしまった。

その横で「皆、考えることは同じだな」と、ハーモニーは豪快に笑っている。


理由を聞いてみるとどうやらハーモニーが買いに行ったところでは、どの店でも便箋と封筒が売り切れていたそうだ。

その話を聞いて、いつも皆が行く店たちで買い占めたのがトリシャやセレニティ、ブレンダだとわかる。


それからセレニティは髪飾りを渡すために、長方形の紺色の箱を取り出して配っていく。

店員は誰に渡すのかがわかるように、リボンの色でわけてくれたようだ。


それにはトリシャたちは驚いている。

セレニティは「四人でお揃いなのです」と言って笑った。

皆が箱から髪飾りを出して「綺麗」「素敵ね」と髪飾りを見つめる中、セレニティは口を開く。



「トリシャお姉様、ハーモニー隊長っ……今まで、わたくしに色々なものを与えてくださり、ほんとうにっ、ありがとうございました!」


「セレニティ……」


「……っ」


「ブレンダお姉様もこのような場を用意してくださって感謝していますわ」



セレニティの目からは堪えきれずに涙がポロポロと溢れていく。

バレないようにガバリと頭を下げたセレニティは肩を振るわせながら両手で押さえていた。

セレニティが涙を必死になって抑えていると、セレニティの前に差し出される水色と赤色と紫色の宝石がついた髪飾り。



「セレニティ、つけてちょうだい」


「え……?」


「わたくしもお願い」


「アタシもだ」



顔を上げるとトリシャとブレンダが涙を流しながら笑っていた。

髪飾りを手にセレニティにつけて欲しいと願っているようだ。

セレニティは布で乱暴に涙と鼻水を拭ってから、一歩前に踏み出した。


トリシャ、ハーモニー、ブレンダ、そして自分の髪飾りをつけ終えて前を見る。

三人とも同じ髪飾りをつけてくれている。


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― 新着の感想 ―
[一言] 精神病の域までいってるなぁ 本当になんでなんだろう?何が起きてこうなったんだ姉。小さい頃はまだ憧れの範囲だったのに
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