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そのことがセレニティにとっては嬉しかった。

ジェシーがいなくなり彼の優しさを間近で感じることができた。

彼は忙しく、常にセレニティの側にいられるわけではない。

しかしセレニティを気遣ってくれていることはわかった。


スティーブンとの距離感はあっという間に縮んでいた。

幸いにも子宝に恵まれたセレニティは男児を産んだ。

レオンと名付けて、スティーブンとの関係も少しずつであるがレオンを通じて近づいていく。


やっと幸せを掴んだと思ったのも束の間、ネルバー公爵夫人に屋敷の仕事を任されるようになった。

セレニティを毛嫌いしているからか、その態度は厳しいものだった。

セレニティは嫁いでから夫人の笑顔を見たことはない。

失望、軽蔑、憎悪……セレニティは息苦しさを感じていた。

プレッシャーやネルバー公爵夫人の期待に応えられずに悩む日々。

トラウマから表舞台に立てないセレニティに送られるのは冷たい視線だけだった。


その影響を受けてか、侍女達の態度も辛辣だった。

「役立たず」「お荷物」「最低」

これ以上、スティーブンに迷惑をかけることはできないと思ったセレニティはひたすら耐えていた。


そしてセレニティも少しずつではあるが前に進もうと努力していた時だった。

セレニティはネルバー公爵夫人がスティーブンに愛人を勧めているところを見てしまい、大きなショックを受けた。


(やっぱり、わたくしはここでも邪魔者なの……?)


スティーブンは断っていたが夫人も諦めるつもりはないらしいと、世話をしている侍女達が嘲笑うように言った。

乳母もネルバー公爵夫人の味方であり、セレニティはここでも居場所をなくしていた。

侍女達からの嫌がらせや小言に疲弊していき体調を崩していたセレニティをスティーブンは気遣ってくれたのか別邸に行くように勧めてくれた。


セレニティは息子のレオンと共に別邸に移った。

ネルバー公爵夫人はセレニティの全てを嫌っているのだと思った。

だからレオンを本邸に戻そうとしないのだと。


セレニティにとってレオンだけが心の支えだった。

マリアナとセレニティでレオンを育てていた。

何もかも初めてではあったが、レオンと共にいる時間がセレニティにとって癒しだった。


そしてセレニティの知らぬ間にネルバー公爵夫人にうまく取り入ったのが姉のジェシーである。

二十三になった彼女は誰とも婚約することなく、度々ネルバー公爵邸に出入りしていたことを聞いたセレニティは驚愕した。


セレニティはレオンだけは守りたいとマリアナに度々別邸に会いに来るジェシーを追い払うように頼んでいた。

するとそんなタイミングでスティーブンも別邸に出入りしなくなり、不安が頭を過ったが大丈夫だと言い聞かせていた。


(あり得ないわ……ジェシーお姉様は関係ない)


この時の嫌な予感がまさか現実になるなんて思いもしなかった。


数ヶ月後、いつもは別邸に顔を出そうとするジェシーが「今回だけはどうしても」と、セレニティの元に現れた。

マリアナの顔色も悪い。

気になったセレニティは久しぶりにジェシーに会うことにした。

すると、明らかに彼女のお腹は大きくなっている。

それがなんなのか、一度経験したセレニティは知っていた。



「お姉様、そのお腹は……?」


「ウフフ」


「結婚、したのですか?」


「いいえ、違うわ……愛する人との子供なの」


「…………っ!?」


「そのうち、あなたも真実を知ることになると思うわ」


「嘘……うそよ」


「彼に愛されているとでも思ったの?あなたはただの足枷……どこに行っても邪魔者なのよ」



その瞬間、セレニティの中で何かが壊れた。

ジェシーがずっと誰を愛していたのか聞かなくてもわかっている。


(まさかスティーブン様が……?そんなことって)


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