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⑤⑦



セレニティの側にはパーティーが終わるまで常に誰かが一緒にいた。

ハーモニーかブレンダが側にいたことでパーティー会場でジェシーに問い詰められることもない。


このことによってセレニティは更に注目を浴びることになる。


それは人脈も傷のことも女騎士の見習いだということも大きいのかもしれないが、セレニティ自身の魅力もあるだろう。

セレニティはこの場を心から楽しんでいた。

キラキラと輝く笑顔で周囲の視線を惹きつけていたのだった。


パーティーが終わり、セレニティはハーモニーとスティーブンに送ってもらいシャリナ子爵邸に帰った。


ハーモニーとスティーブンはシャリナ子爵達にジェシーがセレニティに手を出すようであれば黙っていないことをハッキリと伝えた。

シャリナ子爵達はひたすら首を縦に動かしながら「善処します」と言っていた。


ジェシーも少し後に鼻息荒くシャリナ子爵邸に帰ってきた。

セレニティに文句を言うつもり満々だったようだが、ハーモニーとスティーブン、セレニティを順に見て表情がコロコロ変わって忙しそうだ。


それからジェシーも加えて話し合いが行われた。

グッと拳を握っていたジェシーだったが、スティーブンに「セレニティは大切な仲間なんだ。ひどいことはしないでくれ……頼む」と言われたジェシーは「わかっておりますわ。スティーブン様」と、うっとりとした表情で頷いていた。


そして「セレニティがこの家での暮らしが嫌になればうちに来るように手配する」と言ったハーモニーの言葉にジェシーが大きく反応した。



「それって……」


「ネルバー公爵家で共に暮らすということだ」



ハーモニーの言葉にジェシーは目を見開いたまま動かなくなった。



「何かあれば我慢せずに言ってくれ」


「お気遣いありがとうございます。スティーブン様」


「スティーブンの言う通り我慢はダメだぞ。すぐに報告するように」


「はい!ハーモニー隊長」



セレニティはスティーブンとハーモニーに改めてお礼を言ってから送り出した。


シャリナ子爵邸に戻り、ジェシーがどう出るか身構えていると、彼女は怒るわけでもなく怒鳴るわけでもなくご機嫌なままだった。

その様子をシャリナ子爵達と口をあんぐりと開けたまま見ていた。


どうやらスティーブンの『大切な仲間』という言葉に納得して『頼む』とお願いされたことで機嫌が直ったようだ。

つまり一緒にパーティーに出たのは騎士としての仲間で、仲がいいのも騎士としての仲間だから……そう解釈したようだ。


そしてハーモニーの言葉で、自分が何かをしてセレニティがネルバー公爵邸に行ってしまうことは絶対に防がなければならないと思ったらしい。


ジェシーはセレニティに対して興味をなくしたように関わらなくなった。

最初はセレニティとマリアナでジェシーを警戒していたものの、それも無意味に終わる。


嫉妬をしたり、手に入れるまで追いかけて執着したり、愛する人のたった一言で身を引いたりと、ジェシーの行動を見ながら、改めて愛の恐ろしい一面を知ったのだった。



「愛とは恐ろしいものですわね」


「セレニティお嬢様、愛には色々な形がありますから……」


「たとえば何かしら?」


「そうですね……側にいると心が安らいだり、ドキドキと心臓が脈打ったり、心配になったり、守ってあげたいと思ったり……色々あると思いますよ」


「……!」


「セレニティお嬢様?」


「ありがとう、マリアナ。勉強になるわ」



マリアナの言葉にセレニティはパッとスティーブンの顔が思い浮かぶ。

全てセレニティとスティーブンの間でだけ、起こることに当てはまったからだ。

なんだか不思議な気分のままセレニティは愛を学ぶためにロマンス小説を読み込んだのだった。




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