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三年経っても状況は何も変わらなかった。


お茶会やパーティーに参加しようとしても、周囲の視線が気になり一歩が踏み出せない。

誰が何を思い、セレニティにどんな言葉をかけて、好奇の視線に晒されると思うと耐えられなくなり吐き戻すようになってしまう。

スティーブンも本当はセレニティをどう思ったのかはわからない。


屋敷でも孤立し始めていたセレニティにマリアナしか味方はおらず、かけられた言葉も辛辣なものばかりだった。

ジェシーがセレニティを追い立てていると気づいていた。

両親もそんなセレニティの気持ちを理解することはなく次第に苛立ちを見せるようになっていった。


「どうしてこんな簡単なことができないんだ!ただ行くだけだろう!?」

「傷のことなどもう忘れてしまいなさい!これ以上迷惑を掛けないで」

「アンタなんか消えちゃえばいいのに……」


ジェシーは相変わらずセレニティへの攻撃をやめようとしない。

見て見ぬふりの両親は近頃、ジェシーを説得するように話はしているようだが聞く耳を持たないようだ。


夜中に目を覚ましたセレニティは言い争う声が聞こえてそこに足を進めた。

耳を澄ますとジェシーと両親が話す姿があった。

セレニティは壁に隠れるようにして話を聞いていた。



「セレニティではなく、わたくしがネルバー公爵家に嫁ぐと言ったらいいじゃない!ネルバー公爵夫人はセレニティを嫌ってるのよっ!?セレニティがスティーブンから離れること、本当はネルバー公爵夫人もそれを望んでいるはずよ」


「ジェシー、落ち着きなさいっ!」


「セレニティは修道院に行きたいって言っているんでしょう!?あんな引きこもり、消えてしまえばいいのよっ!」



ジェシーの声にセレニティは息を止めた。

あんなにも優しかった姉はもう悪魔のように見えた。

信じられない気持ちと、どこか諦めにも似た気持ちが襲う。


(ジェシーお姉様は、わたくしが邪魔なのね)


その言葉にズンと体が重くなったような気がした。 



「しかし三年経つがスティーブン様が首を縦に振らないんだ。我々もジェシーを勧めているが〝責任を取る〟の一点張りで……」


「セレニティがネルバー公爵家に嫁いだってうまくいくはずない!うちが恥をかくだけよっ」


「うむ……」


「お願いよ!今すぐにあの子を消して……っ!お父様やお母様もセレニティがお荷物だって言っていたでしょう!?ずっとずっとスティーブン様に憧れていたのに、あんな傷で彼の関心を引き続けるなんてずるいわ!」


「ジェシー、セレニティは……」


「セレニティは卑怯者よ!昔からわたくしの後を追って目障りだと思ってた。ニコニコしているだけでもてはやされていたバチが当たったのよ……さっさと修道院に行ってしまえばいいのにっ」



両親は暴言を吐き続けるジェシーを叱ることはなかった。

「大丈夫よ」「側にいるから」

そう言っていた両親の裏の顔を知ったセレニティは更にどん底に落ちたような気がした。


(わたくしのことなんてどうでもいいんだわ……欲しいのはネルバー公爵家との繋がりだけ。わたくしの気持ちなんて、みんなどうでもいいの)


そう思った瞬間、セレニティはこれからどうすればいいのかわからなくなってしまった。

家族の誰にも心を開けずに居場所がないこの状況は辛かった。


スティーブンは婚約者同伴のパーティーでもセレニティが同席することはない。

いつも一人の彼を周囲は憐んでいたそうだ。

そこにはジェシーの策略もあったのだろう。

ジェシーがセレニティの悪い噂を流していることをマリアナから聞いても、味方がいないセレニティにはどうすることもできなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 今はそういうことではない、という認識がかなり広まっていますが、二十年くらい前までは両親のような言い方をする人が大半だったんですよねぇ…。 今はそういう言い方はけして誉められるべきことではない…
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