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③⑦


『この件』というのはセレニティが怪我をした時のことだろうか。

申し訳なさそうにしているスティーブンになんて言葉をかければいいかわからなかった。

そして物語でスティーブンがセレニティに執着していた理由が、少しだけわかったような気がした。


(スティーブン様はセレニティの無邪気な笑顔を取り戻したかっただけなのかしら……)


物語の結末を考えると、なんだが胸が苦しくなった。



「今日は訓練があるからこの辺で失礼させてもらう」


「訓練……?」


「姉上が帰ってくるんだ。手合わせするぞ、と言われている」


「マリアナ、お願い」


「かしこまりました」



マリアナは頭を下げるとスティーブンが出ることを御者に伝えに行っていた。


ネルバー公爵家は代々王家を守ってきた騎士の家系である。

先程のスティーブンの話にも出てきたが、彼は第二王子のナイジェルと幼馴染のように仲がいい。

スティーブンの姉ハーモニーと王女のトリシャも、同じような関係のようだ。

つまり姉同士、弟同士で仲がよく深い付き合いだという。


そして物語でネルバー公爵家に起こる大きな変化といえば、スティーブンの父親のネルバー公爵が国王の警護中に亡くなってしまうことだろうか。

それがスティーブンが十八、セレニティが十五の時であった。

セレニティはそこであることを思いつく。


(もしかして、今からネルバー公爵を救えるのではないかしら?)


そうすればネルバー公爵家の運命も変わるかもしれない。

何より死のタイミングを知っていながら見殺しにするのは気分が悪い。

それに加えてスティーブンが騎士の家系ということを改めて思い出したセレニティはあるものに興味深々であった。



「スティーブン様」


「なんだ?」


「──是非、わたくしも鍛えていただきたいですわ!」


「え……?」


「ずっと騎士のように誰かを守る強い存在に憧れていたんです!それに体も強くなってお得ばかりですわよね!?」


「いや……だが、君は子爵家の令嬢で」


「スティーブン様のお姉様、ハーモニー様は騎士として様々な国を飛び回っていますよね?強くて美しくて令嬢達からも憧れの的だとお聞きしましたわ!」


「皆もそう言うが、姉上はセレニティ嬢が思っているような人では……。実際、令嬢達の中でも姉上に憧れて騎士団に入るものもいなくはないが、すぐにやめてしまう」


「見学させていただきたいのです!」



ハーモニー・ネルバーは令嬢としてではなく、女騎士として第一線で活躍している勇ましい女性である。

ハーモニーが作った白百合騎士団は女性しか所属していない。

スティーブンより二つ年上で、社交界では変わり者としても有名でもあった。

しかしセレニティが期待を込めた視線を送り続けていると……。



「……わかった。話してみよう」


「本当ですか!?スティーブン様、ありがとうございます」


「君は変わっているな……つい数ヶ月前までは歩くだけでもいいと言っていたのに今度は体を鍛えたいなどと」


「もう階段を登り降りするのも、外を走り回るのも飽きてしまったのですわ」


「マリアナから聞いた。数ヶ月も庭を駆け回っていてすっかり変人扱いされていると……体力が有り余っているからどうにかならないかと相談を受けたんだが、今回のことは丁度いいかもしれないな」


「スティーブン様にマリアナがそんなことを!?」


「ああ、マリアナには言わないでくれ。セレニティ嬢を一番に考えているのが伝わってくる。心配なのだろう」


「はい、わかりました」



マリアナがスティーブンに相談していることを初めて知ったセレニティは驚いていた。

スティーブンはマリアナの話を聞いても以前と変わらずにセレニティに接してくれている。


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