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③①


(あの匂いを嗅いで顔色ひとつ変えないなんて……!スティーブン様は只者じゃないわ。わたくしもまだまだですわね)


誠実で聞き上手なことに加えて、顔がいいとなればジェシーが執着するのも頷ける。

きっと女性の扱いも多少は慣れているのだろう。

それと落ち着いているからか、年の割には随分と大人びて見えた。


(もっと無理矢理迫ってくるのかと警戒したけれど、とてもいい人でしたわね)


そんなことを考えていると、スティーブンが窓から身を乗り出しているセレニティに気づいたのか目があった。

こちらに小さく手を振ったのを見てセレニティも笑みを浮かべながらスティーブンに手を振った。


(スティーブン様とはいい友人になれそうね。今度、お礼をしたいわ)


そしてスティーブンが帰り、家族で夕食を食べている時のことだった。

ジェシーはスティーブンの話ばかりしていて終始ご機嫌であった。

もうセレニティの前で好意を隠すこともない。

セレニティはジェシーの恋に浮かれる様子を観察しながら話を聞いていた。



「今日、スティーブン様にたくさん褒めていただいたのよ!きっとわたしのことが好きに違いないわ」



どうやらスティーブンにドレスや髪型を褒められたのが余程嬉しかったらしい。


(恋をすると本気か社交辞令かの判別がつかなくなってしまうのかしら……恐ろしい現象ね)


ジェシーはセレニティに対して勝ち誇ったような笑みを浮かべて自慢げである。

それがセレニティを牽制するためであるとわかっていたが、どうでもいいと思っていた。

何故ならばセレニティはドルフ医師の外出許可が出たため、ご機嫌だったからだ。


そして娘二人とは違って落ち込んでいるのはシャリナ子爵達の方であった。


どうやら二人はスティーブンとの縁談が成立すると思い込んでいたようで、スティーブンから「セレニティ嬢の意思を汲んで話はなかったことにしてくれ。これからもサポートは続けていく」と、直接言われたらしい。

それには下心があった二人はびっくり仰天。

スティーブン相手に「怪我をさせた責任を取って欲しい」と言うこともできずに、そのまま彼を送り出すことしかできなかったことを悔いているようだ。


「やはりセレニティに、ちゃんと言っておけばこんなことには……」

「様子がおかしいと思っていたのよ」

「まさかこんなことを言い出すなんて信じられない!」

「どうしてこうなってしまったの?チャンスだったのに」


食事も進まない様子を見るに、かなりショックは大きかったようだ。

思い通りにならなかったことに不満があるのか、チクチクと責められるような視線を感じていたがセレニティからしてみれば、ざまぁみろである。


スティーブンは『セレニティが恋をしたいから』『一旦、保留で』『嫁ぎ先が見つからなければ貰い受ける』等の詳しいやりとりは二人には言っていないようだ。


(どうしてかしら……?もしかしてわたくしに選択の自由を与えるため、なんてことはないわよね?でもネルバー公爵を継ぐにあたって、そんなことが許されるのかしら)


ここからは物語にない展開になっていくことが予想できる。

それにどうしてここまでセレニティを気遣ってくれるのか……彼は答えてくれなかった。


一方、原作と違いセレニティとスティーブンの婚約が成立しなかったからか、ジェシーもセレニティに対して怒りもないようで、むしろ見下して馬鹿にしているように見える。

スティーブンはジェシーの裏の顔すら見破っていそうだな、と思いつつセレニティは食事を終えて、マリアナと共に部屋に戻った。


今日は早めに休むと告げて、セレニティは幸福感に包まれながら眠りについた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] スティーブンが諦めてて驚いた! 元の話で怪我をした娘を公爵家に売る両親も横恋慕する姉も酷いが、一番おぞましいのが怪我の責任を取るを言い訳にして、前から好きだったからセレニティを手に入れたい…
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