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②⑨


セレニティは包帯を巻き終わったのを確認して喜びを露わにするように腕を伸ばした。

今すぐベッドを飛び跳ねたい気分だったが、そこは耐えていた。

そして無理がない散歩程度なら外に出てもいいとドルフ医師に言われたセレニティは今すぐに外に行きたいと思っていた。


それから静かに紅茶を飲みながら世間話をしつつ、チラチラと窓の外に視線を向けていた。

するとそれに気づいたスティーブンがセレニティに言葉をかける。



「どうしてそんなに外に行きたいんだ?」


「あっ……申し訳ありません」


「いや、いいんだよ。塞ぎ込んで部屋から出てこなくなったと聞いて心配していたんだ……あんな目にあって当然だろうが」


「ご心配お掛けしました。でもわたくしは屋敷の廊下を歩き、階段上り下りを終えて、次は自分の足で外に行くことを楽しみにしていたのですわ!」


「自分の足で……?もしかして足を怪我していたのか?」


「いいえ、違います!ずっとずっと自分の意思で色々な場所に行くことに憧れていたんですわ!それがもうすぐ叶うなんて……はぁ、夢のようです」


「…………?」


「???」



スティーブンとドルフ医師がセレニティの言葉が理解できずに首を捻っている。

セレニティは両手で赤くなった頬を押さえながら外への憧れを語っていた。



「マリアナにダメと言われなければ、もっと早く外を走り回れたのでしょうけど、ですが我慢した分、喜びもひとしおでしょう?はぁ……陽の下にずっといてもいいというのはどんな感覚なのでしょうか!空を見上げたり、気持ちよさそうな芝生に寝転んでみるのは?ふふっ、想像するだけで楽しいですわ!」


「……そ、そうか」


「スティーブン様はいつも外で何をするのですか?」


「外で……?剣術の稽古やトレーニングが一番多いだろうか」


「剣……!スティーブン様は近衛騎士として働いてらっしゃいますものね」


「ああ」



ネルバー公爵家は代々、王族を守る騎士となる。

公爵は代々、王国騎士団の騎士団長を務めるのが慣わしである。

スティーブンもこの国の第二王子ナイジェルの近衛騎士として幼い頃から働いていると、小説の知識から得たものだ。



「セレニティ嬢は外に出て何がしたいんだ?」



スティーブンの質問にセレニティは瞳を輝かせた。

マリアナは背後で溜息を吐いている。

しかしここ一週間で外で何をしたいかを考えていたセレニティは勢いよく口を開いた。



「──わたくしですか!?わたくしは、まずっ、まずですね!庭中を絶対に走り回ってから、芝生に寝転んでお昼寝をしてみたいです!それからお外でお菓子やお紅茶を飲みながら、のんびりまったりするのも素敵ですし、ずっと憧れておりましたの!ゆくゆくはなんでもいいのでスポーツや畑仕事なども体験できたらいいなと思っていまして、皆様の役に立つようなことができればもっと嬉しいですわ!」



スティーブンに外に出たら何がしたいかを熱弁しているセレニティにドルフ医師は「ま、また一週間後に参りますね」と言って先に去っていった。

スティーブンはセレニティの話を聞きながら不思議そうにしていたが、馬鹿にすることなく嬉しそうに最後まで楽しそうに聞いてくれた。

そして二杯目の紅茶を飲み終えて「そろそろ行くよ」と言ったスティーブンを見て、セレニティは口元を押さえた。



「わたくしが話してばかりになってしまいました!スティーブン様、申し訳ありません……!」


「いや、構わない。むしろ元気そうで安心した」


「ご心配をおかけいたしましたわ」


「引き続きドルフ医師に診てもらってくれ。俺はセレニティ嬢のために尽くすつもりだ。何かあれば言ってくれ」


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