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②③



「それにジェシーお嬢様は最近、スティーブン様の幼馴染セリカ公爵の御令嬢、ブレンダ様によく贈り物をされているみたいですし、セリカ公爵邸でのお茶会にも出かけていました。スティーブン様に会いたかったのではないでしょうか?」


「あら……そうなの」


「毎回、スティーブン様と話せた日は機嫌がよくて嬉しそうにしているそうです。セレニティお嬢様も旦那様の仕事の都合で何度かスティーブン様にお会いになっていると思いますが記憶にありませんか?」



マリアナの言葉にセレニティは記憶を呼び起こしていた。

しかしセレニティがスティーブンと会話したり、会ったりした記憶はない。


(セレニティが覚えていないだけで、スティーブン様との接点はあったみたいね)


セレニティが眉を顰めていると「セレニティ様はいつもお菓子や別のことに夢中ですからね」と言ってマリアナは笑った。

セレニティは天真爛漫で活発、よく笑うお菓子が大好きな女の子だったようだ。


セレニティは久しぶりの入浴を終えて、マリアナに消毒や傷薬を塗ってもらい包帯を巻き直してもらう。



「いっ……!」


「大丈夫ですか!?申し訳ございませんっ」


「いいのよ。声を出してごめんなさい。わたくしは大丈夫だから、できるだけ綺麗にしてちょうだい」


「かしこまりました」



少しでも清潔にしていたくて、セレニティは自ら進んで包帯を換えるようにしていた。

そのお陰か傷の治りも早く、痛みも引いてきたような気がした。


シャリナ子爵がネルバー公爵に手紙を出した次の日には早馬で返事が返ってきた。

それから承諾の手紙を一日かけて送る。連絡を取るにも一苦労だ。


どうやらドルフ医師と一緒にスティーブンがシャリナ子爵邸にやって来るそうだ。

ドルフ医師はネルバー公爵家の常駐医であることを思い出す。


セレニティはスティーブンとドルフ医師がやってくるまで、指折り数えて待っていた。

主に待っているのはドルフ医師である。


(はぁ……。お父様の言う通り一週間ほどでいらっしゃってくれるけれど長いですわね。早く許可が欲しいのに)


セレニティはうずうずする体を抑えながら過ごしていた。

マリアナが「ドルフ医師から許可が出ないと外に出てはダメです」と頑なだったため、仕方なく屋敷の散策を続けていた。

皆が口を揃えて頭がおかしくなったのでは、と言われるくらいセレニティは階段を往復して、屋敷を回っては喜ぶということを繰り返していた。

食べて動くを繰り返すセレニティを見て、驚くのは無理もない。

それに自分でも驚いている。


そして今日、ドルフ医師とスティーブンがやってくる日を迎えた。

マリアナに髪を整えてもらいながら、セレニティはまるで子供のようにはしゃいでいた。


(ついにこの日が来たわ……!)


そしてワンピースに着替えるために全身鏡の前に立つ。


以前は病や薬の影響であまり食べ物を受けつけなかったからか周囲を心配させてしまうほど体は細く肌は青白かった。

しかし今のセレニティは肉付きもよく健康的に見える。

セレニティは鏡の前でクルリと回った。

そして両手を合わせて期待がこもった息をフーッと吐き出した。



「今日、ドルフ医師に許可をもらえたら、やっと外に行けるのね!」


「お部屋に閉じこもっていた時も私は心配しましたが、元気がありすぎるのも考えものですね。安心しておりますが、違った意味で心配です」


「マリアナは心配性なのよ。怪我の痛みもだいぶ引いてきたような気がするの。ドルフ医師、早く来ないかしら」



今日、朝食の時に牽制を込めて絡まれると思いきやジェシーは足早に自分の部屋に戻っていった。

スティーブンの前に出て着飾るために侍女を連れて気合いを入れているようだった。


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