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①⑦


マリアナは心配そうにこちらを見ている。

マリアナをこれ以上心配させないためにも、これからセレニティとして生きていくためにも、自分の意思を示そうと口を開いた。



「わたくし、もう傷のことは気にしないことにするわ」


「なっ……!?」


「これからは前向きに生きていくと決めたのよ」


「セレニティお嬢様、あんなに傷のことを気にしていたのに……無理はしていませんか?」



ジェシーとは全然違うように聞こえるのはマリアナはセレニティを本気で気遣ってくれているからだろう。



「えぇ、大丈夫よ。ありがとう、マリアナ」


「かしこまりました。私はセレニティお嬢様を信じます」



セレニティの表情を見て本心から言っているのだとわかったのか、マリアナは安心したように微笑んでいる。

セレニティはにっこりと笑みを浮かべながらお願いするように手を合わせた。



「だからね、マリアナ」


「はい」


「今日はお外に行ってもいい?」



しかしマリアナから帰ってきたのは予想外の言葉だった。



「ダメです」


「え……!?」


「昨日、ドルフ医師に暫くは安静にと言われたではありませんか!聞いていなかったのですか?」


「で、でも少しくらいなら……」


「悪化したら大変です!お怪我がよくなってからじゃないと許可できませんわ」



マリアナの圧にセレニティはしょんぼりと肩を落とした。


折角、健康な体になったのだ。

何もしないなんて我慢できそうになかった。

セレニティは顔を上げてマリアナに提案するように言った。



「わかったわ。なら今から屋敷の中を見て回ってもいいかしら!?」


「や、屋敷の中ですか!?」



何故、屋敷を……?と言いたげなマリアナの表情。

セレニティは負けじと期待を込めた視線を向けていた。

今度はマリアナがセレニティの圧に屈したらしい。

「少しだけですからね」と屋敷の中を歩き回る許可をくれた。


セレニティはマリアナから何度も何度も注意を受けながら、着替えていると扉をノックする音。

セレニティの両親が揃って部屋の中に入ってくる。



「セ、セレニティ!?」


「ごきげんよう。お父様、お母様」


「着替えて何をしているの!?どこかに行くつもり!?」


「まだ外に行かない方がいいとマリアナに言われたので、屋敷を散策しようかと思いましたの」


「屋敷を……散策?」


「そのためだけに着替えているのか?」


「えぇ、そうですわ!寝間着も動きやすくて素敵ですけれども、気分転換に着替えたいと思いまして」



そう言ったセレニティは包帯や傷を気にすることなく以前と変わらずにおしゃれをするために、お気に入りのワンピースに袖を通していた。

その姿を見たセレニティの両親は驚きからか、また動かなくなってしまった。

セレニティの準備を終えた頃に慌てた様子で問いかける。



「セ、セレニティ……顔の傷は?」


「少々痛みますが、我慢できないほどではありませんわ」


「そうじゃないわ!傷は気にならないの?だってあんなに……っ」


「えぇ、もういいのです」


「どういう、ことだ……?」



セレニティの言葉に昨日と同じような反応をしている両親にどいてと言わんばかりに見つめていた。

呆然としていた父はハッとして、セレニティを引き止めるように手を伸ばした。



「き、今日はセレニティに知らせがあるんだ!」


「なんでしょうか?」


「きっと驚くぞ!」


「そのお話はマリアナと屋敷を散策してからでもいいでしょうか?」


「いや、今がいい!何より早く返事をしなければならないからな」


「どういった用件でしょう」


「スティーブン様から謝罪に伺いたいと言ってくださっていて……!」



父の顔にはネルバー公爵との縁ができると嬉しそうにしているのと同時に欲が滲んでいる。

こんな風に喜ばれてはセレニティも悲しいことだろう。


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