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①②③



「ご要望であれば一語一句、内容を伝えますが。このように誤解されたまま仕事に影響しては本末転倒ですよ?公子」



クリーク伯爵はスティーブンに向けて言っているようだ。

すぐに「心配無用だ」と、言ったスティーブンは冷たい表情のまま。

クリーク伯爵は「なら構いません」と言って眼鏡を上げた。



「セレニティ嬢、あなたとはまたゆっくりと話をしてみたい」


「え……?」



クリーク伯爵はそう言って扉に向かって歩き出す。



「セレニティ嬢も大変ですね。ゆっくりと体を休めてください……失礼します」


「はい……ありがとうございます」



クリーク伯爵は意味深な言葉を残して去っていく。

セレニティはクリーク伯爵が何をしたかったのか結局、よくわからなかった。


(お見舞いに、きてくださったのよね……?)


髪についた糸を取ってくれたクリーク伯爵だったがスティーブンの様子を見る限り、婚約者以外の男性に触れさせるのはよくなかったのかもしれない。

一応、誤解ないようにとセレニティが説明しようとした時だった。



「あの、スティーブン様……わたくしは」


「セレニティを誰にも渡したくない」


「……!?」



スティーブンの言葉にセレニティは目を見開いた。



「スティーブン、様?」



スティーブンはハッとした様子でセレニティを見つめた後に顔を伏せてしまった。


(わたくしはスティーブン様と婚約関係にあるはず……誰にも渡したくないとは、どういう意味なのでしょうか)


スティーブンが言った言葉の意味がわからずにキョトンとしていた。

そんな時、スティーブンの低い声が耳に届いた。



「セレニティ、クリーク伯爵とはどのような関係だろうか?」


「クリーク伯爵と、ですか?」


「俺がナイジェルの公務につく前は関わりがないと思っていたが……その、どこで知り合ったのだろうか」



セレニティはスティーブンに嫉妬されているとはまったく思わずに、どう説明すればいいか考えていた。

クリーク伯爵とどのような関係かと問われても、そこまで深い関係にないため首を捻る。

そもそも内容はあまり覚えていないが三日前に会話したことが一番の深く関わった出来事ではないだろうか。


マリアナからフルーツの盛り合わせが届いた。

セレニティはパトリシアのことやベレットとの手紙のやりとりの一件についてスティーブンに話していく。

新人騎士に絡まれた後にクリーク伯爵との関わりが増えたこと。

その間も二人の手紙を届けるたびに顔を合わせていたが、挨拶を交わす程度。

親しく喋る間柄でもないことを説明していく。



「そんなことが……」


「はい。ですからパトリシア様とベレット殿下を往復しているうちに挨拶を交わす仲になりましたわ」


「…………」


「スティーブン様?」


「……そうか。申し訳ない」



スティーブンは額を押さえて首を横に振る。

珍しく歯切れの悪いスティーブンに不思議に思っていた。



「なぜスティーブン様が謝るのですか?」


「セレニティを疑っているわけではないんだ。だが自分の心の狭さが嫌になる」


「えっと……」


「俺ばかり気持ちが大きくなっているような気がするんだ」


「???」



いまいちスティーブンとの話が噛み合わない。

セレニティが聞き返そうとするもののどう切り返せばいいかわからない。


(わたくしは何かスティーブン様を不安にさせるようなことをしてしまったのかしら)


こんな時、知識はたくさんあるはずなのに自分のことになると途端にわからなくなってしまう。


それ以上にあと一歩ですれ違っている二人を見て、マリアナがヤキモキしているとも知らずにセレニティは目の前にある色とりどりのフルーツを見つめていた。


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