①①⑥
和やかな雰囲気の中、エリーはすでに泣きそうになっている。
それがわかっているから国王も王妃にはあえてエリーには話題を振らないように気遣っているようだ。
恐らく今、国王か王妃がエリーに直接話しかけてしまえば間違いなく失神してしまうだろう。
「そういえばこの間、トリシャお姉様とハーモニー様から手紙が届いたのですが、お二人が思い詰めていないか心配しておられましたわ」
「ネルバー公爵夫人とも話していたのだけれど、わたくしたちにはあまり連絡もこないから心配で心配で……!」
「よければトリシャとどんなやりとりをしているのか教えてくれないか?」
「はい、喜んで。内緒のお話がたくさんあるので言えないことも多いですが陛下たちが心配されるようなことはありませんわ」
「まぁ……!あの子たちったら」
「ハハッ!さすがセレニティだな」
動じることなく二人と話すセレニティを見て、エリーが痛むお腹を押さえながら色んな意味でドン引きしているとも知らずにセレニティは楽しい時間を過ごしたのだった。
セレニティはお茶を終えて、顔色の悪いエリーを馬車まで送り届けていた。
肩を借りながらエリーは「セレニティ隊長、どれだけ度胸があるんですか……!」と目に涙を溜めながら訴えかけている。
セレニティは首を傾げながらも緊張しすぎでフラフラとした足取りで歩くエリーを支えながら足を進めていた。
「国王陛下と王妃陛下の前であんなに堂々とお話できるなんて意味がわかりませんっ」
「そうかしら?」
「普通だったら私みたいになりますよ!?私、半分くらい記憶ないです」
「トリシャお姉様やナイジェル殿下とも関わる機会が多かったから、たまたまよ」
「それがそもそもおかしいんですよ……」
エリーは唇を尖らせながらそう言った。
マリアナに声を掛けて男爵領に帰るエリーを送るために門へと向かう。
今回、パトリシアの件で国王と王妃からは十分過ぎるほどの褒美をもらったため、エリーにそのことを報告すると先ほどのげっそりとした表情とは真逆で目を輝かせている。
エリーは大切そうにお金が入った袋を抱きしめて家族の話を始めた。
男爵家は貧乏でエリーは「これで兄弟たちに美味しいものを食べさせてあげられます!」と嬉しそうに笑っている。
「エリーは本当に家族思いなのね」
「いえ……!皆にはお腹いっぱい食べて欲しいんです」
セレニティはいつも家族のために動いているエリーを心から尊敬するのと同時に応援していた。
マリアナはセレニティの背後から大きな箱を持ってくる。
セレニティは箱の蓋を手に取ってエリーに見せるように開ける。
中には瓶に入った色とりどりの砂糖菓子がたくさん入っている。
「セレニティ隊長、これは?」
「砂糖菓子なんだけど、日持ちするでしょう?皆様で食べてね」
「こ、こんなにたくさんいいんですか!?」
「もちろんよ」
「……わぁ!綺麗」
「忙しくて王都まで遠いのに、この仕事を手伝ってくれて本当にありがとう。エリーが協力してくれて助かったわ」
セレニティがそう言うと、エリーは箱を見つめながらハラハラと涙を流している。
セレニティはポケットからハンカチを取り出してエリーの涙を優しく拭った。
「……っぐす、私は何もしていませんっ、セレニティ様の方がずっとずっと、大変だったのにぃ!」
「そんなことないわ。エリーが来てくれなかったらこの仕事をやりとげることは不可能だったもの。家のことも大変なのに……感謝しているわ」
「ゼレニ゛ディざばぁ!」
「あらあら、エリーったら本当に泣き虫ね」
エリーの涙は止まらずにハンカチはいつの間にかびしょびしょになってしまう。
セレニティに抱きつきながら大号泣するエリーを御者と共に馬車の中へと乗せた後に砂糖菓子の入った箱を渡す。




