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①①⑤


それが誰かまでは教えてもらえなかったが、マリアナがセレニティと恋人との間で揺れ動いていることも理解していた。



「マリアナが幸せじゃないと……だ、め」


「私は……っ、……なので、大丈夫ですよ」


「ほ……んと?」


「えぇ、ですがセレニティ様……の言葉で決心い……ました」


「……?う、ん」



いまいち何を言っているか聞き取れなかったけれど、マリアナが優しい表情で笑った気がした。

セレニティもなんだか嬉しい気持ちのまま眠りについた。



* * *



それからパトリシアの悪阻が落ち着くまで一カ月かかった。

その間、セレニティはパトリシアとベレットの文通を手伝いながらエリーと協力して護衛を行っていた。


匂いは不快に感じる程度で吐き戻さなくなり、夜中の護衛を変わってもらえるようになった。

セレニティはやっと肩の力が抜けたような気持ちだった。


三ヶ月間もの間、何事もなくパトリシアを護衛できたのは白百合騎士団としての大きな功績となるだろう。

セレニティはそのことに達成感を感じていた。

パトリシアもベレットと会えるようになり、少しずつではあるが食べ物を受け入れられるようになる。

随分と痩せ細ってしまったが少しずつ食べる量は増えていく。


まだまだ胃もたれや気持ち悪さが残っているとパトリシアは語ったが、やっと前向きになってくれたことにセレニティは安堵していた。


大役を終えたセレニティとエリーはお礼を直接言わせて欲しいと国王と王妃に呼び出されていた。

王家の中庭はいつ見ても素晴らしく、まるで絵画を見ているようだと思った。

豪華なお茶菓子、いい香りがする紅茶を飲みながら話をしていた。

セレニティは緊張しすぎてガチガチなエリーをフォローしつつ、やり遂げられた嬉しさで胸がいっぱいだった。



「セレニティ、エリー、この度はご苦労だった」


「恐れ入ります」


「あ、ありがたきっ、お言葉でしゅ!」


「エリー、大丈夫だから落ち着いて」


「ここは公の場ではないわ。リラックスしてちょうだい」


「こ、このような場に、不慣れなものでっ!申し訳ございましぇん!」



エリーはそう言ってテーブルにぶつかりそうなほどに頭を下げている。


セレニティは二年前のネルバー公爵の件やトリシャのことで国王と王妃とは何度も顔を合わせている。

よくこうして話をしていたので特に緊張することはない。


男爵令嬢のエリーはパーティーの経験もほとんどないためか慌てており顔色が悪い。

新しいドレスを買うお金もなく、母親のお下がりのドレスを着て最低限のパーティーやお茶会に参加していたそうだ。

ガチガチなエリーをフォローするようにセレニティが積極的に受け答えしていた。

国王も王妃も多忙ながらもパトリシアの体調が心配だったらしく、今回の件は何もできない分、もどかしい思いをしていたようだ。



「セレニティはパトリシアを精神的に支えてくれたそうだな」


「ベレットもパトリシアのそばに行けずに戸惑っていたところを手紙を届けてくれたのよね」


「はい。パトリシア様も喜んでくださいましたわ」


「うむ、素晴らしい」


「白百合騎士団も少ない中、負担を掛けてしまったわね。本当にありがとう」



セレニティは二人の言葉に「恐れ入ります」と小さく頭を下げる。



「セレニティは明日からは学園に戻ると聞いた」


「はい。三カ月間もお休みしておりましたから」


「何か困ったことがあったらわたくしたちに言ってちょうだい。力になるわ」


「国王陛下、王妃陛下、ありがとうございます」


「セレニティもハーモニーの跡を継いで、すっかり立派な隊長になったな。ボロボロになって書簡を届けにきてくれた頃が懐かしい」


「トリシャがブレンダと同じように妹のように可愛がっていたんですもの!」


「ハーモニー様にはたくさん鍛えてもらいましたし、トリシャ王女殿下にはとても可愛がっていただきましたから」


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