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①①④



セレニティは目をこすりながら、本当にスティーブンが書いたものなのかを確認していた。

やはりスティーブンの字であることに間違いはないようだ。

暫く呆然としていたセレニティだが、ハッとして赤くなった頬を押さえる。


(スティーブン様がこんなメッセージを残してくださるなんて珍しいわ)


口数があまり多くない彼だが、こうしてカードでストレートに気持ちを伝えてくれたことに感動していた。

セレニティはカップケーキを手に取り、その場でパクリとかぶりついた。

口いっぱいに広がる甘さと大好きなチョコレートの香り。

セレニティはもう一口、また一口とカップケーキを頬張っていく。


スティーブンの優しさが身に染みる。

離れていてもセレニティのことを考えてくれると思うと嬉しくてたまらない。


セレニティは鏡でスティーブンがプレゼントしてくれたネックレスを見つめていた。

彼の瞳の色と同じ宝石が輝いている。

プレゼントしてもらった日から毎日身につけていた。

あの日、スティーブンがくれたネックレスは実はお守り代わりだ。


(わたくしもスティーブン様に早く会いたいですわ)


セレニティはネックレスとカードに触れながらスティーブンのことを思っていた。

そしてカップケーキをもう一つ食べようとした時だった。


扉が開きセレニティの様子を見にきたマリアナは、食事よりもカップケーキを頬張る姿を見て、いつものようにお説教をされてしまう。

どうやら食事もろくにとらずに忙しくしていたセレニティをとても心配してくれたようだ。

なんだかマリアナに怒られることすら懐かしい。

夜中にもかかわらず、セレニティが起きたことに気づいて気遣ってくれて、こうして動いてくれるマリアナには感謝しかない。



「体を温めて綺麗にしましょうか。そのあとは栄養バランスのとれた食事をしてからカップケーキを召し上がってください」


「でもマリアナ、今日はもう遅いわ。休んだ方が…… 」


「関係ありません!私はセレニティ様のお世話をするためにここにいるんです」



こうしてセレニティを支えてくれるマリアナの優しさに深く感謝していた。


(いつまでもマリアナに心配ばかりかけていられないわ。わたくしがもっとしっかりしなくては……!マリアナには幸せになってほしいもの)


マリアナはもうすぐ二十七歳になる。

この年齢になっていけば選択肢はどんどん狭まってしまうのに、セレニティのそばにずっといてくれる。

セレニティはマリアナに将来のことをよく話すのだが、マリアナは決まってこう言った。

『セレニティお嬢様の暴走を止められるのは私だけですから』

それでもマリアナには自分の幸せを考えて欲しい。


マリアナに促されるまま体を綺麗にしたセレニティは温まってから湯船を出た。

その間にシーツを変えて着替えや体を拭うための大きな布を持っているマリアナの素早い動きにはいつ見ても感動してしまう。

髪を拭いて香油で整えてからブラッシングをしている間もセレニティは眠気と戦いながらうとうとしていた。

セレニティは軽食を食べて紅茶を飲みながらマリアナと少しだけ談笑した後にベッドに横になる。



「ゆっくり休んでくださいませ」



そう言ったマリアナの手を引き止めるように握ったセレニティは眠気と戦いながらも唇を開く。



「前も話したと思うけれど、わたくしはマリアナには幸せになって欲しいの」


「セレニティお嬢様、私のことはいいですから」


「だってね、マリアナが幸せじゃないと……わたくしも幸せになれないもの」


「……セレニティお嬢様」



マリアナが掴むセレニティの手が少し強まったような気がした。

もっとたくさん伝えたいことがあるはずなのに、眠気に襲われて言葉が出てこない。

セレニティはマリアナを想い続けてくれている恋人がいるのも知っていた。


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