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①⓪⑤


学園にはトリシャもハーモニーもブレンダもスティーブンもナイジェルもいない。

トリシャやハーモニーも隣国にいる。

ブレンダやスティーブンやナイジェルが学園に介入できるはずもない。

セレニティを守るものは白百合騎士団の名前とスティーブンの婚約者という肩書きくらいだろうか。

まだシャリナ子爵の令嬢であることには変わらない。

セレニティが思ったよりも反応が普通だったことで飽きた人が半分、利用しようとする人が半分といったところか。


セレニティがトリシャやハーモニーにも学園のことを相談するが、やはりブレンダと同じような反応が返ってきた。

ブレンダにも『成長しても同じメンバーでいることが多いのはこういうことよ』と言われてセレニティは納得せざるを得ない。


セレニティはふと小説の中ではセレニティと親友だったキャサリン・ビルードのことを思い出していた。

セレニティは顔に傷を負ってからはシャリナ子爵邸にこもりきりだったため学園に通うまで友人はいなかった。

しかしそれは元平民だったキャサリンも同じだ。


どこか通ずる部分があったキャサリンとセレニティはすぐに意気投合したはずだ。

キャサリンは男勝りな性格とハッキリした口調で話す快活な少女だ。

ブルーブラックの髪に青い瞳は吊り目で気が強そうではあるが、それは彼女の育ってきた環境にも関係あるのだろう。

セレニティと家族のことについて話していたキャサリン。

キャサリンとセレニティは小説の中ではとても仲のいい友人だった。


(そういえば学園に入学してからキャサリン様を見かけないですわ。クラスが違うからかしら……)


セレニティは以前、キャサリンと同じクラスだった。

しかし今は一番成績のいいクラスにいる。

そのせいかキャサリンを見かけたことはない。

もしかしたらいつも前向きで裏表がないキャサリンとなら仲良くなれるのではないか。

そう思ったセレニティはすぐに行動に移そうと決める。


(もしかしたらキャサリン様と小説のように仲良くなれるかもしれないもの!けれど接点もなかったのに声を掛けたら不審に思われるわよね。様子を見にいきましょう)


キャサリンのクラスにセレニティが様子を見ようと訪れた時だった。



「セレニティ様、どうかされましたか?」


「セレニティ様だわ!」



セレニティの周りにはいつの間にか人集りができていた。

様子を見にきたつもりだったが、何も用がないと嘘をつくことができずに正直に問いかける。



「キャサリン様はいらっしゃるのかしら?」



セレニティがそう言うと、周りにいた令嬢たちからスッと表情が消える。

キャサリンの名前が出た途端、明らかに嫌悪感が滲み出ている。

しかしビルード侯爵の隠し子として肩身の狭い思いをしているのかもしれないと思い直す。


(もしかして小説と同じように義母様と娘たちに虐げられて苦しい思いをされているのかしら……)


ある令嬢が冷たい表情で指差す先にいた人物を見て目を見開いた。

ブラックブルーの髪はストレートではなく、フワフワに巻いてあり、吊り目でキツい印象があった目元は化粧で垂れ目で色っぽくなっている。

そしてもっと驚きなのがキャサリンの周りにいる令息たちの数だ。


(あの方がキャサリン様……?随分とイメージが違うわ)


男勝りで快活そうな雰囲気は消えて、柔らかい笑みを浮かべるキャサリンは美しく、貴族の令嬢そのものに見える。


キャサリンはセレニティに気づいたのか僅かに目を見開いた後にこちらを鋭く睨みつけた。

それが気のせいかと思うくらい、再び優しい笑みを浮かべると令息たちに声を掛けてこちらにやってくる。


そしてセレニティの前に立ち止まる。



「ちょっとよろしいかしら?」



セレニティはキャサリンの提案に頷いた。


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