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①⓪④


「あなたが学園に行くのをとても楽しみにしていたから、水を差すようなことを言いたくなかったのよ。また困ったら邸にいらっしゃい」


「はい、ありがとうございます!ブレンダお姉様」


「何かあればわたくしが力になるわ。それを忘れないでね、セレニティ」



ブレンダはああ言っていたが、ただの子爵令嬢であるセレニティはそんなことになるわけがないと考えていた。

この時はまだブレンダの言葉が見事に的中することになるとは思いもしなかったのだった。


学園に通い出して三週間が経った頃。

令嬢と昼休みに長めの世間話しをしたことをきっかけに令嬢たちが押し寄せるようにしてやってきたのだ。


「セレニティ様の美しさと凛々しさに話しかけられなくて……!」

「ああ、セレニティ様……なんて素敵なの」

「スティーブン様のような素晴らしい婚約者に愛される秘訣はありますでしょうか!?」


突然、波のように押し寄せる質問やセレニティを褒め称える声で溢れていて困惑していた。


(こ、これは一体どういうことでしょうか……!)


セレニティの前には溢れんばかりの令息や令嬢たちが期待を寄せてこちらを見つめているではないか。

ブレンダの「ね、言ったでしょう?」という声がここまで聞こえてきそうだ。


(皆様、本当にわたくしの様子を窺っていただけだったのね)


その熱量は今まで我慢していた分も含めてすごい勢いである。



「み、みなさま……落ち着いてくださいませ!」



セレニティが話すとその声すら簡単に掻き消されていく。

騒ぎを起こして問題になったらいけないとセレニティは中庭に移動する。

その間も令嬢たちの興奮は冷めないようだ。


「ハーモニー様の跡を継がれて白百合騎士団の団長になったのですよね!?」

「白百合騎士団、憧れますわ!鍛錬は大変だとうかがいましたが」

「この間、パーティーにトリシャ王女殿下を護衛しているセレニティ様を見ましたわ!素敵で密かに憧れておりましたのっ」


授業がはじまるまで令嬢たちの興奮は続いて、セレニティはひたすら相槌を打っていた。

チャイムが鳴り、セレニティは教室に戻って呆然としていた。

何か体から抜け落ちたような気がした。


(これは……一体何が起こっているのでしょう)


セレニティが積み上げてきたものは無駄ではないと思えたのだが、令嬢たちこんな風に思われていたのはさすがに予想外だ。

学園に通い始めてからこんな風に話しかけられるとは思ってもみなかった。


その日を境にセレニティは、大勢の令嬢たちが教室に押し寄せて囲まれるようになる。

色々な令嬢と話ができるのは嬉しいがセレニティが思っている友人関係とは少し違うような気がした。

憧れや羨望、興味などが大半で締め付けるような感覚になる。

対等な関係を望んでいると伝えても一歩距離を置かれてしまうことに寂しさを感じていた。


(ブレンダお姉様の言う通りでしたわ。また相談させていただきましょう)


セレニティはブレンダに手紙を送るとすぐに返事が返ってきた。

すぐにブレンダの元に行くとセレニティに色々な知恵を授けてくれた。

それは幼い頃から公爵令嬢としてスティーブンやハーモニー、トリシャやナイジェルと共に過ごしてきたブレンダだから言える言葉だろう。

セレニティは真剣に話を聞いていた。

ブレンダは「これが慣れてきてしまうと厄介よ」「友人は選んだ方がいいわ」その言葉の意味を理解することになる。


慣れてくるとやはりブレンダの言う通りセレニティへの要求は上がっていく。

大半はいい人たちばかりなのだが、中には友人関係ではなくセレニティを利用しようとする者も現れ始めた。

今までセレニティの人柄や性格を見て害がないか判別していたのだとわかる。


公爵家や王家に取り次いで欲しい、彼らと親しくなりたい、親に言われたから仕方なく……そんなことばかり立て続けに起こり、セレニティも疲労を隠せない。


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