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①⓪③



「いってきますわ!」



セレニティは皆に見送られるようにして馬車に乗り込んだ。

入学式は歓迎パーティーと同時に終えている。

貴族が集まる学園らしい催しといえるだろう。


セレニティは馬車から降りて立派な門をくぐって教室へと向かう。

学園に入学する前に受けたテストでクラスは学力順にわかれている。

ちなみに不正をすると後々大変な目に遭うそうだ。

すぐに授業についてこられなくなり、クラスを下げられてしまう。

掲示板に名前を貼られてしまうため、大恥をかくことになる。

その後の学園での生活は肩身の狭いものになるため、不正を働く者はいないそうだ。


それからここでは今まで出席してきたパーティーやお茶会とも違い爵位や身分でわけることはない。

新しく交友関係を広げたり婚約者を見つけたりと忙しくなる人もいれば、のんびりと過ごす人もいる。

水面下では様々な思惑が交差することになるはずだ。


教室の前で深呼吸をしてからセレニティは口角を上げて一歩前に進む。



「皆様、ごきげんよう」


「セレニティ様、ごきげんよう」


「ごきげんよう!セレニティ様」



何人か顔見知りの令嬢たちを挨拶を交わしてセレニティは自分の席についた。

カバンを置いてから、そっと机を撫でる。

周りは楽しそうな話し声で溢れていた。



「今日はとびきり美味しいお茶を取り寄せたのよ!」


「まぁ、楽しみだわ!今度はうちにも来て。珍しいお菓子を取り寄せたのよ」


「近々、伺うわ」



もう周りには数人の令嬢たちが仲良さげに集まってグループになっている姿。

セレニティは学園の雰囲気に馴染むために周囲を観察してその日を終えた。

しかし次の日もまた次の日も、普通に話はできるものの輪の中に入ることはできないまま時間だけが過ぎていく。


(ソ、ソフィー様にアドバイスをもらった時も焦らずにゆっくりと、そう言っていたではありませんか……!)


そう思っているものの想像とは違い現実はセレニティが思うよりもずっと厳しいようだ。

積極的に話しかけたとしても、会話が弾んだとしてもなぜか距離を感じていた。

観察するような様子を見ているような視線は感じるが、近づくと逃げられてしまう。

ブレンダやハーモニー、トリシャとの関係とは程遠いような気がした。


(も、もしかしてわたくし嫌われているのでは!?)


そう思うのも無理はない。

セレニティが想像していた学園の生活とはかけ離れていた。

一週間、また一週間と過ぎていき、さすがに落ち込んできたセレニティはブレンダに相談してみることにしたのだが……



「あら、いいじゃない。その方がいいと思うわ」


「えっ!?えっと、あの……どういうことでしょうか」


「そのままの意味よ」



予想外のブレンダの言葉に驚きを隠せないセレニティが問いかけてみても、ブレンダは表情ひとつ変えることはなく紅茶のカップを持ち上げた。



「セレニティがそうなっている理由はなんとなく、わたくしと違うとは思うけれど……そうねぇ、トリシャお姉様と同じような理由じゃないのかしら」


「トリシャお姉様と?」


「もう少しよく周囲の様子を見てみてご覧なさい?そうすればわかるから」



ブレンダはそう言って優雅に紅茶を飲み込んだ。

セレニティは頭を抱えて悩んでいた。

皆はセレニティに冷たくはないし話してはくれるのだが距離がある。

それに王女であるトリシャと同じということが更にセレニティを混乱させた。

そしてブレンダ音を立てずにカップをソーサーに置いた後にセレニティを見て口を開く。



「セレニティ、友人は選んだ方がいいわ」


「え……?」


「今は様子見しているだけ。あなたと仲良くなれるとわかった瞬間、人が押し寄せてくるわよ?」


「わたくしはただの子爵令嬢ですわ。そんなことないと思いますけど……」


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