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シスターズアルカディアSideC-妖獣ハイスクール物語-  作者: 藤本零二
第1章~妖狐のプライド~
2/15

第1話「ワールドアイラン」

*


 “異世界転移魔法陣”を使って“ワールドアイラン”のカナン姉とリンちゃんが住んでいた屋敷へとやって来たボク達。

 ボク達が今いるのは玄関前のホールで、玄関を背にして目の前に大きな扉が、そしてその扉の左右に二階へと続く階段があった。



「本当にここがカナン姉さん達の住んでたっていう屋敷、なのか…?」


「イツキの屋敷程ではないけど、かなり立派な屋敷ね…」



 レイヤちゃんとノゾミちゃんの言う通り、かなり立派な屋敷で、掃除も行き届いているようだ。



「埃一つないけど、カナン姉達がこの屋敷を出てからは誰もいないハズだよね?」


「そのハズ、だけど…」



 レイさんも首をかしげる。



「…しっ!そこに誰かいるっ!!」



 ヒカリちゃんが目の前の大きな扉を指差し、ボクらに警戒するよう注意を促したので、ボクらはいつでも相手に対応出来るように戦闘体勢をとった。



「ほう、気配は消していたハズだが、よくぞ私の存在に気付いたな」



 扉を開けて出てきたのは、掃除機を抱えた壮年の男性だった。

 その姿を見て、レイさんとアキホちゃんがほぼ同時に声をあげた。



「あ、“喫茶妖獣メイド”の店長さん!!」


「ろっ、六魔皇のダイダロ様っ!!」



 レイさんは旧知の知り合いに再会したという感じの軽いノリだったのに対し、アキホちゃんは王族に出会った臣下のような態度で、左膝をついて頭を垂れた。



「“喫茶妖獣メイド”の店長さんというと、カナン姉さんやキョウカのことを助けたっていう…」


「六魔皇って、確か魔王ヤミ直属の幹部のことだったかニャ?」



 レイヤちゃんとショウちゃんの言う通り、その壮年の男性の正体は、魔王ヤミの一番の側近であり、この時代に“時空転移”してきたカナン姉を助け、身寄りのなかったキョウカちゃんを預かって育てていた、“喫茶妖獣メイド”の店長、ダイダロさんだった。



「やぁ、レイ君、久し振りだね」


「はい!お久し振りです!」


「それとイリス君、いや今はアキホ君と言ったか、君とは前世で出会って以来だね」


「はっ!覚えていてくれて光栄です、ダイダロ様!」


「そう畏まらなくてよい。

 今の私は魔王軍とは何の関係もない、ただの喫茶店の店長なのだから、顔もあげたまえ」


「は、はい!分かりました!」



 ダイダロさんに言われて顔をあげるアキホちゃん。

 アキホちゃんは“ワールドダークネス”出身の魔人だったから、その時にダイダロさんと何かしら繋がりがあったのだろう。



「というか、アンタは魔人、なんだよな…?

 見た目どころか、魔力すら感じられないんだが…」


「ウチも感じられなかったニャ…」



 ヒカリちゃんとショウちゃんは半分魔人の血が混じってるから、魔力を感じることが出来るらしい。

 いや、それよりも魔人に特有の角と尻尾が生えてない!(翼なんかは出し入れ可能らしいが、角と尻尾はそういうわけにはいかないらしい)



「まぁ、長年生きておるとね、色々と出来るようになるのだよ、魔力を消したりなんかはまだ序の口だよ」


「ダイダロ様は実力だけであれば、魔王ヤミ様をも超えると言われる程の方ですから」


「そ、そんな人が、なんで掃除機なんか持ってこの屋敷に…?」


「いやなに、君達がこの屋敷を再び使うことになるだろうと思い、定期的にこうして掃除をしておったのだよ」


「そ、そんな!ダイダロ様に掃除なんてさせるわけには!

 私が代わります!!」



 そう言いながらアキホちゃんはダイダロさんから掃除機を受け取ろとしたのだが、ダイダロさんはそれをやんわりと断った。



「気にする必要はない。

 さっきも言ったが、今の私はただの喫茶店の店長であり、そしてこれからは君達の保護者のようなものだからね。

 それよりも、君達は“異世界転移魔法陣”を置きにきたのだろう?

 それが終わって時間があるのなら、しばらくこの世界でのんびりするといい。

 特にヒカリ君達は、この世界が今どうなっているのか、知っておくべきだと思うしの」



 そう言ってダイダロさんは、掃除機を持ったまま階段を上がり、二階の部屋の掃除に向かっていった。



「…とは言われたものの、ダイダロさんに掃除を任せて自分達は自由にってのも、なんだか悪い気がするけどニャ~……」


「ショウちゃんの気持ちも分かるけど、ここは店長さんのご厚意に甘えましょう!

 まずは、それぞれの魔法陣を何処かに設置して、それからどうするか決めましょう!」



 レイさんに言われ、とりあえずボク達は玄関ホールの階段下あたりの目立たない場所に魔法陣を設置すると、これからどうするかの話し合いを始めた。



「さて、ヨウイチ達が“ワールドフラワレス”に戻ってくるまではまだ時間があるだろうし、

 ダイダロさんに言われたようにしばらくこの世界でのんびりしようかと思うが、どうする?」



 レイヤちゃんがそう尋ねると、ノゾミちゃんがこう答えた。



「あ、だったら小倉こくらにある祇園ぎおん神社に行くのはどう?」


「あ!それいいんじゃない?」



 ノゾミちゃんの提案にレイさんが乗った。

 だけど、ヒカリちゃん達は何故神社?という顔をしている。



祇園ぎおん神社?

 なんでまた神社なんかに?」


小倉こくら祇園ぎおん神社はね、ボク達やヒカリちゃん達に関係のある場所だからね!」



 ボクがそう答えると、ますます分からないという顔になるヒカリちゃん達。



「ウチらに関係あると言われても、そもそもウチらはこの国の人達にとっては敵国の人間のハズだニャ」



 ボクとヨウ兄、そしてレイヤちゃんとノゾミちゃんは、前世において“第二次妖魔大戦”という戦争において、“妖獣サイド”(俗に東側と言われていた)の兵士として参加した。

 その際に“魔人サイド”(俗に西側と言われていた)の兵士として、ヒカリちゃんとショウちゃんとアキホちゃんがボク達の前に立ちはだかった。


 戦争は最終的に東側の勝利で終わり、その際に活躍したボク達四人は英雄と称されて、それなりにもてはやされた。

 一方で、ヒカリちゃん達は西側のA級戦犯として、その首が東側に差し出された。


 東側の人間は、こぞってヒカリちゃん達を批難したが、それに対してヨウ兄が意義を唱えたのだ。



『彼女達だって戦争の犠牲者だ。

 彼女達は、自身や家族のために戦い、生き残るために人を殺した。

 俺達だって同じように、自分や家族のために戦い、生き残るために人を殺した。

 そこに何の違いがある?

 ただ戦争に勝ったか負けたかの違いしかない。

 彼女達が戦争犯罪という罪で裁かれるのなら、俺達も同じように戦争犯罪という罪で裁かれるべきだ!』



 英雄であるヨウ兄の一言で、ヒカリちゃん達への批難は無くなった。

 むしろ、彼女達をスコープゴートにした西側の本当に悪い人達、つまりは戦争を引き起こした“半魔人ハーフ”の人達や、さらにその裏で暗躍していた、この世界を支配下に置こうと企んでいた魔王軍(と彼らは名乗っていた)の連中の存在が暴き出されたことで、ボク達の最後の戦い“人魔大戦”が始まることになったのだが、それはまた別の話だ。



「……で、ヒカリちゃん達は“第二次妖魔大戦”における戦争被害者として、まつられることになったんだよ」


「そのまつられた場所が、小倉こくらにある祇園ぎおん神社、というわけ」


「てことは何か?

 アタイらのまつられた場所に今から行くってのか!?」


「な、なんだか複雑な気持ちだニャ…」



 まぁ、自分達のお墓にお参りに行くような感じだもんね。



「まぁ、とりあえず行ってみない?

 きっとビックリすると思うよ!

 特にレイヤちゃん達はね!」


「え、オレ達が?」


「私達が驚くようなことなんて無かったと思うけど…?」


「えー、何があるの、レイさん!?」

 

「ま、それは行ってみてからのお楽しみ、ってね♪」



 それ以上聞いてもレイさんは何も答えてくれなかったので、何はともあれ祇園ぎおん神社へ向かうことにした。




*


 祇園ぎおん神社は、小倉こくら城の側にある神社で、“ワールドアクア”では八坂やさか神社と呼ばれているらしい。


 “ワールドアクア”には神社の前には大型商業施設である“リバーウォーク北九州”が建っているらしいが、この世界には存在していない。

 その代わりに、ちょっとした博物館的な建物が建っている。



 ボク達はレイヤちゃんの『テレポート』で、その建物の近くにまでやって来た。

 その建物自体は“人魔大戦”後に建てられたもので、ボク達もその建設には少したずさわったのだが、建物入口にはボク達の知らない建造物が建っていた。



「なっ…!?こ、これは…!?」


「ちょっ!?なっ、なんでこんな物が…っ!?」


「おぉおおおおっ!!カッコいいいいいっ!!」



 レイヤちゃんとノゾミちゃんはその建造物を見てなぜか恥ずかしがっていたが、ボクはそれを見て興奮を隠せなかった!

 何故ならその建造物の正体は、



「……兄たんと、アキラ姉たん達、の、銅像?」



 そう!

 アカリちゃんの言った通り、そこには高さ4、5メートルくらいの、ヨウ(サウ)兄とボク(サキ)レイヤ(ツキヨ)ちゃんとノゾミ(イザヨイ)ちゃんの銅像(勿論前世の姿なので、今のボク達とは見た目が異なるけど)が建てられていたのだ!!


 この建物は、“第二次妖魔大戦”の真実を後世に伝えるために建設された資料館なのだ。



「こんな銅像いつの間に作られたんだ?」


「この像は結構最近になって作られたものね。

 四人の活躍はマンガにアニメ、ドラマや映画化と、様々な視点や解釈がされてメディアミックス化されてるから、その勢いで像も建てられたって感じね」



 レイヤちゃんの疑問にレイさんが捕捉も加えて説明してくれた。



「そ、そんなことになってたの!?」


「ボク達の活躍がマンガやアニメに!?見たい見たいっ!!」


「ボクも、気になり、ます…!」



 あまり目立ちたがらない性格のノゾミちゃんはかなり恥ずかしそうにしてたけど、ボクとしては自分がどんな風に描かれてるのか気になって仕方なかった!



「ま、英雄さん達も大変だわな」


「羨ましい限りだニャ~♪」


「全くですね!」



 からかい半分でそんなことを言うヒカリちゃん達だったが、



「あら、三人の銅像もあるわよ?」


「「「えっ!?」」」



 というレイさんの一言に三人同時に驚いた顔を見せた。




*


 資料館の中へ入ると、その中央にもボク達の銅像(ただしこちらはほぼ等身大)があり、向かい合うようにして、ヒカリちゃん達三人の銅像が建っていた。



「ま、マジであるじゃねぇか…っ!」


「ニャ~…、これまた何というかニャ~…」


「ああっ!姉さん達の銅像っ!!スゴいっ!カッコよくてとてもカワイらしいです!!買えるなら買い取りたいっ!!」



 照れたような恥ずかしいような表情のヒカリちゃんとショウちゃんに対して、アキホちゃんは二人の姉の勇姿に興奮しっ放しだった。



「あの銅像も、オレ達の生きてた時代には無かったよな?」


「ええ、あれも皆の死後に作られたハズよ」


「というか、私達の時代より広くなってない?」


「そうらしいわね。

 入口から入ってすぐのこちらのコーナーは主に史実を伝えるための資料なんかが置かれていて、

 皆の死後に増築されたあっち側のスペースは、皆の伝記とか、一部フィクションを交えたりした作品群の紹介コーナーと、グッズなんかの売店コーナーとなってるわ」


「ぐ、グッズコーナー!?」


「そんなものまであるの!?」


「おおっ!!」


「今すぐ行きましょう!!」


「あっ、おい!お前ら!?」



 ボクとアキホちゃんは早速増築されたというスペースへと向かった。


 スペースの右半分がグッズコーナーで、左半分が伝記などの紹介コーナーとなっているようで、ボク達はまず左側の伝記紹介コーナーの方に行った。



「おおっ…、スゴい、こんなにたくさんの本が出てるんだ…!」


「マンガや子供向けの絵本、それにライトノベルなんかも出てるんだ…」



 史実に忠実に書かれた伝記本は勿論、子供向けに分かりやすくディフォルメされた歴史書や絵本といったノンフィクション物が4分の1くらいで、もう4分の1が一部作者の想像などを交えた限りなく事実に近いフィクション作品で、残りの半分はボク達が主役の創作物だった。



「これ、私達が現代に転生して、“人魔大戦”を生き残った魔人達の暗躍を阻止すべく戦うって話みたいよ?

 こんなのよく思い付くわね…」



 遅れてやって来たノゾミちゃんが創作物の中の一つを手に取って呆れたような感心したような感想を口にした。



「こっちのはオレ達が異世界転生して無双するって話らしいぞ?」


「もうそれ、ある意味ノンフィクションね…」


「こっちのは、転生したアタイ達が世界を救うために宇宙からの侵略者と戦うってストーリーらしい…」


「こうして見るとウチらが主役の本も結構あるんだニャ~」


「ヒカリ姉さんとショウ姉さんが主役の作品は全て買いますっ!!」



 アキホちゃん、ヒカリちゃん達のこと好き過ぎるでしょ…

 ちなみに、この紹介コーナーで紹介されている本はグッズコーナーで買えるらしい。


 と、ボクの肩をとんとんと叩かれたので振り向くと、そこにはアカリちゃんが一冊の本を持って立っていた。



「この本、アキラ姉たんが、主役…?」


「え?あ!本当だ!

 これボクが主人公のストーリーだって!

 …ん?あ、いや、ちょっと待って、よく見たら違った。

 ……えーっと、何々?

 ボクとヨウ兄の子供が現代を舞台に大活躍……って、ボクとヨウ兄の子供ぉっ!?」


「「何ぃっ!?」」


「何ですって!?」


「ニャんだと!?」



 レイヤちゃんとヒカリちゃん、そしてノゾミちゃんとショウちゃんが同時に反応した。



「ヨウイチとアキラの子供ってどういうことだよ!?」


「い、いや、ボクに言われても!?」


「あー、その手の作品も結構多いよ~♪」



 何でもないことのようにレイさんがそんなことを言った。



「勿論、ヨウイチ君とアキラちゃんとの子供だけじゃないよ?

 中にはヨウイチ君とレイヤちゃんとの子供だったり、ヨウイチ君とヒカリちゃんの子供が出てくる話とかも人気なんだよね~」


「お、オレとヨウイチの…っ!?」


「あ、アタイとヨウイチの…っ!?」


「え、わ、私とヨウイチの子供の話とかはないの!?」


「ノゾミちゃんの子供が出てくる話はいくつかあるけど、そのどれも相手はレイヤちゃんね」


「オレとノゾミの子供っ!?」


「そ、それはそれでありだけど…、何かちょっと複雑…」


「ウチは!?ウチとヨウイチちゃんとの子供の話は無いのかニャ!?」


「ショウちゃんの子供の場合も、相手はヒカリちゃんね」


「アタイとショウの子供っ!?」


「ノゾミちゃんに同感だニャ…」


「ヒカリ姉さんとショウ姉さんの子供…っ!!

 そんなの絶対カワイイに決まってるじゃない!!」


「ちなみに、異色作としてアキホちゃんとヨウイチ君が結ばれて~、っていう話もあるにはあるよ?」


「「「なんでアキホ(私)(ちゃん)とヨウイチ(ちゃん)のはあるのよ(ニャ)!?」」」



 ノゾミちゃんとショウちゃんとアキホちゃんの声がキレイにハモった。

 ただし前二人とアキホちゃんとで微妙にニュアンスが異なるが。



「ボク、この本、気に入った!」


「お、じゃあボクが買ってあげるよ!」


「やった!ありがと、アキラ姉たん!」



 アカリちゃんだけはマイペースに楽しんでいるようだった。



 それからグッズコーナーに行き、先程見て気になった本や、ボク達の絵が掛かれたキーホルダーやタペストリー、アクリルスタンド、ぬいぐるみなどなど色んなグッズを買いまくった、主にアキホちゃんが、しかもお金が全然足りなくて()()()()()()()()()()()()(ちなみに、この世界“ワールドアイラン”のお金は、以前ヨウ兄達が“喫茶妖獣メイド”で働いてた時に稼いだお金があって、ボク達はそこからお小遣いとしていくらか貰っている)。



「姉さん達のグッズがたくさんで幸せ~…♪」


「あ、アキホちゃん…?

 ちょっと買い過ぎじゃないかニャ?」


「レイさん、すまねぇ…

 借りた金は絶対にアタイらが働いて返すから…!」


「ああ、気にしなくていいのよ?

 もう皆は私にとって家族みたいなものだし、それにこのくらいは大した額じゃないから♪」


「え、いや、大した額じゃ無いって、オレがレシート見たとき桁が6つくらいはあった気がしたんだが!?」


「あははは、このくらいなら私のお小遣いでなんとでもなるわ」



 レイさん、実はお金持ちなの!?

 元々は刑事さんだったって話は聞いてたけど、刑事ってそんなに儲かるのかな?

 あるいは実家が実はお金持ち?

 その辺を深く聞いてもいいのか迷っていると、アカリちゃんがズバリそのことを尋ねた。



「レイ姉たんは、お金持ち?」


「んー、まぁ、私というより私の実家がね。

 まぁ、私は跡取りじゃ無いから、成人してからは自由にさせてもらってはいるけど、毎月生活費だけはきっちり振り込んでくれててね。

 だからお金の心配はしなくていいわよ?」



 何とも頼もしい言葉だけど、そうなるとますますレイさんの実家がどういう所なのか気になるけど、その辺のことはその内また話してくれるだろう。



 それから一通りのグッズをそろえて満足したボク達は、資料館を出て、その裏にある祇園ぎおん神社へと向かうのだった。




*


 祇園ぎおん神社は元々は四百年を超える歴史を持つごく一般的な神社だったけど、“第二次妖魔大戦”の時に戦勝祈願やら何やかんやあったことで、戦後はボク達“四英雄”を祀る神社として、そして戦争で亡くなった全ての人々と、ヒカリ(イーディス)ちゃん達“悲劇の三英雄”を祀る神社とされるようになった。



 そして、神社の入口にもまたボク達の銅像があったのだが、これまでと違うのは、ボク(サキ)が“妖犬ようけん”化した姿で、ノゾミ(イザヨイ)ちゃんが“妖狐ようこ”化した姿となっていて、その上にヨウ(サウ)兄とレイヤ(ツキヨ)ちゃんが乗っている像となっていて、狛犬のごとく左右に別れて建っていた。



「オレ達は狛犬代わりか…?」


「まぁでも、こっちの姿(“妖狐”)なら、まだマシかも…?」



 資料館の方の自身の像は恥ずかしがっていたノゾミちゃんだが、“妖狐ようこ”化した方の像に関しては満更でもないようだ。

 ボク的にはどっちもカッコよく作ってくれてるから満足だけどね!



「でも、“妖狐ようこ”化してるってことは、素っ裸ってことニャ?

 ノゾミちゃんは露出癖があるのかニャ?」


「んな…っ!?ちちちちっ、違っ…!?そういう意味や無いっちゃん!!」


「本当かニャ~?

 ヒカリちゃんに調教されてた時は、」


「わあー!!わあー!!こげんとこでそんな話せんでっ!!」


「ニャははは~♪」



 顔を真っ赤にしながらノゾミちゃんが、逃げるショウちゃんを追いかけ回していた。

 なんだかんだ色々あったボク達だけど、こうしてじゃれあえるようになって本当に良かった!



「この、大きな犬が、アキラ姉たん、なの?」



 と、ボクの隣にいたアカリちゃんが聞いてきた。



「うん、そうだよ!」


「スゴい、カッコいい…!」


「へへー、そうでしょ、そうでしょ!」


「ボクも、変身出来る、かな?」


「アカリちゃんが?」


「うん」


「んー、どうなんだろ?

 少なくとも、ボクの“妖犬ようけん”としての遺伝子が組み込まれてるから、出来そうな気はするけど…」


「アキラ姉たんと、一緒に、変身、したい…!」


「んー、残念ながら今のボクじゃ完全な『“妖犬ようけん”化』は無理なんだよね」


「え、なんで…?」


「今のボクの身体の一部は生体金属で作られてるからね。

 生体金属は“バイオヴァリアブルメタル”みたいに伸長したり、変化させたり出来ないんだよね」


「そう、なんだ…」



 しょんぼりした様子のアカリちゃんの頭を撫でてあげると、とろけたような表情に変わって、頭をボクの肩に乗せて甘えてきた。

 あー、この妹がカワイ過ぎる!!

 こんなんシスコンになるなってのが無理だよっ!!



 それから本殿の方へ入っていくと、これまたボクらの時代には無かった装飾が色々となされていた。

 お賽銭箱とガラガラ(後で聞いたところ、あれの名前は本坪鈴ほんつぼすずと言うらしい)の後ろに畳敷きの大広間が広がっていて、一番奥に御神体が祀られているのは大体何処の神社でも同じだと思うけど、その左右の壁にボクらの絵が描かれていたのだ。

 右側にヒカリ(イーディス)ちゃん達、左側にボク達が描かれているのは、向かって正面が南向きになっているから右側が西側、左側が東側となるからなのだろう。


 それらの絵を見てテンションの上がるボクとアカリちゃんとアキホちゃんに対して、レイヤちゃんとノゾミちゃんとヒカリちゃんとショウちゃんは顔を赤らめながら、なるべく絵を見ないようにお参りをしていた。



「ま、まさか、こんな大袈裟なことになってるなんて…」


「これ、すごく恥ずかしいんだけど…」


「だ、だよな…」


「ニャ~…、なんだか居心地が悪いニャ…」


「えー?なんで?

 ボク達のことこんなに思ってくれてる人達がいるってことでしょ?

 それってとってもいいことだし、嬉しいじゃん!」


「いや、それはそうなんだが、そういう問題じゃないというか…」


「本当、アキラはポジティブで羨ましいわ…」


「ああ、やっぱり姉さん達は絵になっても美しいです…!

 私の女神様達…!やっぱりあんな奴(ヨウイチ)に私の女神様達を渡すわけにはいかないわ…っ!!」


「アキホはアキホで何か変なテンションになってるし…」


「ウチらの育て方間違えたかニャ~…」



 とまぁ、そんなこんなで、ボク達は神社でお参りを済ませた後、おみくじを引いたり(ボクとアカリちゃんは大吉だった!他の皆は教えてくれなかったけど、何故か顔を真っ赤にしていた。レイさんにはおみくじの内容読んだ?って聞かれたけど何のことだろ?マチビト?町の人がどうかしたの?)、絵馬を書いたり(アキホちゃんが何やら不穏なことを書いてたけど見なかったことにした!)と、一通り神社を楽しんだ後、屋敷へと帰ることにした。




*


 屋敷へ帰って来た時には、すでにダイダロさんの姿は無く、屋敷の中は来た時以上にピカピカになっていた。


 “ワールドフラワレス”に帰る時間は特に決めていなかったので、レイさんが「久し振りに元同僚に挨拶してくる」と言うので、レイさんが帰ってくるまではもうしばらくこの屋敷に留まることにした。



 ボク達は玄関から入ってすぐ左側にある屋敷一階の応接室らしき部屋に入ってゆっくりしていた。

 応接室には部屋の中心に古くて高そうな木のテーブルがあり、その左右には四人がけのふっかふかの長ソファが置いてあり、壁には暖炉とかお洒落なマントルピースとかの装飾がされていて、ちょっとしたお金持ち気分が味わえる。



 そんな部屋で、ボク達はふっかふかの長ソファに向かい合って座り(下座からアカリちゃん、ボク、ノゾミちゃん、レイヤちゃん、向かい側はヒカリちゃんを中心に下座にアキホちゃん、上座にショウちゃんという並び)、他愛の無い雑談をしていた。

 


「…そう言えば、色々あってすっかり忘れてたけど、ウチらヒカリちゃんと再契約してニャかったニャ?」


「「「あ!」」」



 ボクとノゾミちゃんとヒカリちゃんの声がキレイにハモった。


 そう言えば、サンによってヒカリちゃんの両腕が切断された時に、ショウちゃんとの“相棒パートナー”契約と、ボクとノゾミちゃんとの“隷獣”契約が解除されて、そのままだったことを思い出した。

 ちなみに、レイヤちゃんとノゾミちゃんの“相棒パートナー”契約はすでに交わされていて、ボクとヨウ兄との“相棒パートナー”契約はまだだ。

 ヨウ兄が帰ってきたら忘れないように契約してもらおう!



「そういやそうだったな…

 まぁ、とりあえずショウとの“相棒パートナー”契約は再度結ぶとして、ノゾミ達とは、」


「わっ、私は構わないわよ!?

 べっ、別に迷惑じゃないしっ、そ、それに、レイヤ以外との繋がりがあれば、いざという時には便利だしっ!?」



 ノゾミちゃんが顔を赤くしながら、何やら言い訳じみたことを言ってるけど、要するに、



「ヒカリちゃんに調教されたい、って素直に言えばいいのにニャ~♪」


「ちっ、ちちちっ、違うしっ!?

 私はそういう意味で“隷獣”契約して欲しいわけやないしっ!?」



 恥ずかしがるノゾミちゃんカワイ過ぎか!



「はいはいっ!!私は前世の時みたいにショウ姉さんの“奴隷”に…、(いや、待てよ…、“奴隷”だといざという時……、)やっぱり“隷獣”になりたいですっ!!

 それと、ヒカリ姉さんの“使い魔”にもなりたいですっ!!」



 一方でアキホちゃんは、本当に欲望に素直だな~



「アキホは一旦落ち着けっ!

 あと、途中小声で何か言ってたのが気になるが、今はとりあえずスルーだ!

 というか、レイヤはいいのか?

 その、アタイがノゾミと“隷獣”契約しても」


「まぁ、無理矢理とかじゃなくて、本人が望むならいいんじゃないか?

 経緯はどうあれ、二人がそれだけ仲良くなったというなら文句は無いし、ノゾミも言った通り、戦略的にもオレとノゾミ、ヒカリとノゾミの二つの繋がりがあることで出来ることが増えるだろうし」


「そ、そうか…、レイヤがそう言うなら……

 それからアキラはどうする?」


「ボク?

 そうだねー、難しいことは分からないけど、ボク的にも出来ればヒカリちゃんと再契約したいかな?」


「ん…、分かった、じゃあアキラとも再契約で。

 後はアキホとアカリ、だけど…、って、アカリは寝てるのか?」



 ふとボクの隣を見れば、アカリちゃんはカワイイ寝息を立てて眠っていた。



「まぁ、アカリちゃんは身体は大人でも中身は生まれたばかりの赤ちゃんみたいな感じだしね」



 アカリちゃんのコアの元となったジラスは、幼体だったらしく、その精神年齢は人間換算で五歳前後らしい。



「そっか、ならアカリの件は後回しで、アキホだけど…、」


「はいっ!!」



 めちゃくちゃ期待した瞳をヒカリちゃんに向けるアキホちゃん。

 アキホちゃんは前世においては“ワールドダークネス”出身の純粋な魔人だった。

 そしてアキホ(イリス)ちゃんの父親である魔人が、“ワールドアイラン”から無理矢理拐って“隷獣”とした“妖猫ようびょう”の女性、その二人の間に出来た子供がショウ(イシス)ちゃんだ。


 それから色々あって、アキホ(イリス)ちゃんはショウ(イシス)ちゃんの“奴隷”となった。

 最初は敵対していたアキホ(イリス)ちゃんとショウ(イシス)ちゃん達だったが、そこからも色々あって、



「私の身体は姉さん達のモノですっ!!

 なので好きにしてください、お願いしますっ!!」



 …こうなった、みたい。



「だってよ、ショウ」


「ニャ~…、確かに前世の時はアキホちゃんを“奴隷”にしてたけど、

 あれはアキホちゃんがウチらを本気で殺しに来てたからで、逆らえなくするためにやむを得なく“奴隷”契約してただけなんだニャ。

 だから、意味もなく“奴隷”契約をするのはお断りニャ」


「はい!なので“隷獣”契約をお願いしますっ!!

 “奴隷”契約だと、一方的な召喚しか出来ませんが、“隷獣”契約なら、お互いにお互いを召喚出来て、お互いのピンチに助け合える分、“奴隷”契約よりは意味があると思います!

 姉さんと同じ“妖猫ようびょう”のハーフとなった今なら、“隷獣”も可能なハズです!」


「…本音は?」


「ヨウイチが姉さん達とエッチしようとした時、『“主人マスター”召喚』で姉さん達をすぐに助け出せます!!

 ………あ」


「却下だな」


「却下だニャ」


「あぁあ゛あああ゛っ!!嘘嘘嘘っ、嘘ですっ、嘘ですっ!!

 そんなことしませんから、お願いしますっ!私と契約を、契約をおおおおっ!!」



 美少女が長ソファから飛び降りて必死に土下座する姿をアカリちゃんに見られなくて良かった。

 さすがに子供の教育に悪すぎるからね。



「…まぁ、ヨウイチとのエッ……、あー、云々は置いといてだ、とりあえずショウとアキホの“隷獣”契約に関しては、まぁ、ありなんじゃないかと思う」


「ニャニャニャっ!?それだとウチはヨウイチちゃんとエッチ出来なくなっちゃうニャ!?」


「…そこは自分で何とかしてくれ。

 というか、そもそもショウはいつからヨウイチのこと好きだったんだ!?

 アタイの前で一度もそんな素振り見せなかったよな!?」


「え、それ今更聞くの!?」


「そういや、オレも気になってたんだ、それ!」


「ボクもボクも!」



 ヒカリ(イーディス)ちゃんが戦場でヨウ(サウ)兄に告白まがいのことを言われたことで一目惚れした、って話は聞いたけど、ショウ(イシス)ちゃんとヨウ(サウ)兄とは、そんなに接点は無かったハズ(ショウ(イシス)ちゃんの相手は主にボク(サキ)が担当してたからね)。



「さ、さぁ~、いつからかニャ~?」


「誤魔化すなよっ!!」


「まぁまぁ、恋は突然にって言うしニャ~?

 それより、今はアキホちゃんのことニャ」


「ああ、そうだった!

 ショウとは“隷獣”契約をしたいってのは分かったが、なんでアタイとは“使い魔”契約をしたいんだ?」



 むぅ、話がアキホちゃんの件に戻ってしまった。

 結局、二人の馴れ初め(?)は分からず終いとなってしまった。

 …まぁ、その内話してくれることもあるかな?



「確かに今のアキホは魔獣“ガモス”との合成獣キメラだから、“使い魔”契約は可能だと思うけど、

 “使い魔”契約だと、“使い魔”側からは“主人マスター”を呼び出せなかったハズだが?

 (…まぁ、呼び出せないなら呼び出せないで、ヨウイチとの……を邪魔されなくていいんだが…、ってアタイは何を考えてるんだっ!!)」


「そこは、他の姉妹との差別化です!

 ヒカリ姉さんの“隷獣”枠はすでにノゾミちゃんとアキラちゃんで埋まってるので、それなら私はヒカリ姉さんの“使い魔”としてヒカリ姉さんのオンリーワンになりたいんですっ!!」


「な、なんだそりゃ…」


「いや~、愛されてるな、ヒカリは?」


「ちくしょう、他人事だからってニヤニヤすんな、レイヤっ!!」



 アキホちゃんにとっては、ヨウ兄とヒカリちゃんのエッチを邪魔するより、ヒカリちゃんのオンリーワンになることの方が優先度高いということなのかな?



「(…まぁ、“使い魔”側から“主人マスター”側を召喚出来ないというのは、通常“使い魔”が知能の低い魔獣だからで、“主人マスター”からの命令以外の魔術を行使出来なくなるのが理由なんだよね。

 だから、ある程度知能のある魔獣だったり、私のような魔獣との合成獣キメラの場合はその限りではないんだけど、この事実はあまり知られていないんだよね~、ふふふふ…)」


「ん?アキホちゃん何か言った?」


「え!?ううん、何でもないよ!?」



 何やら企んでそうな顔をしていたアキホちゃんだけど、ボクの気のせいだったかな?



「ま、まぁ…、思惑はどうあれ、契約結んでいれば、今後何かあった時の保険にはなるか」


「そういうことです、姉さんっ!!」


「だー、もう、アキホはいちいち近いっての!

 …じゃあ、まずはショウとの“相棒パートナー”契約から結んどくか」


「りょーかいニャ♪」



 ショウちゃんはそう言うと、ヒカリちゃんの方へ顔を向け、目を閉じて唇を突き出した。


 “相棒パートナー”契約は、霊能力者の霊力と妖獣の妖力を、お互いの体内に取り込み、絆を結ぶことで完了する。

 その際に、霊力で出来た首輪型の“相棒輪パートナーリング”が妖獣の首に、妖力で出来た指輪型の“相棒輪パートナーリング”が霊能力者の指に巻かれる。

 契約を行うにはいくつかの方法があるが、一番手っ取り早いのがキスをすることだ。



「えっ、こ、ここでするのか!?」


「他に何処でするのニャ?」


「い、いや、だって、ここ、皆、見てるし…っ!」


「ニャにを今更恥ずかしがってるのニャ!

 フォルスちゃんだった時には、堂々とゼクスティーナ(ノゾミ)ちゃんとキスしてたニャ!」


「うぐっ…!?い、いや、だってあん時のアタイは色々おかしかったからっ!

 今思えば、アタイメチャクチャ恥ずかしいことしてたなって思うんだから…っ!!」



 顔から湯気が出そうな程、顔が真っ赤になってるヒカリちゃん。

 フォルスだった時のヒカリちゃんからは全く想像出来ない程のうぶさだ。

 これがギャップ萌えという奴か!

 カワイ過ぎるぞヒカリちゃん!!



「あれだな、大人になって子供の頃の黒歴史を思い出して恥ずかしがってる感じのやつだ」


「まさにそれだね!」


「本当のヒカリって意外に乙女なのね♪」


「だけど、夜は狼になるのは昔から変わらないニャ♪」


「私もショウ姉さんも、前世でたっぷり調教されましたから♪」


「うぁあああああっ!!うるさいうるさいうるさい!!それ以上言うなっ!!」



 これ以上ヒカリちゃんをからかうと本当に顔から湯気が出そうだったので、そこは空気を読んだボク達。

 そして、改めてヒカリちゃんとショウちゃんの再契約のキスとなった。



「じゃ、じゃあ、いくぞ…」


「うん、改めてよろしくニャ、ヒカリちゃん」



 ヒカリちゃんとショウちゃんが向かい合い、お互いの腕を相手の腰に回して抱き合い、それから二人は顔を近づけると、唇と唇を重ねた。



「…んっ♪」


「ん…、んんっ♪」



 唇を通じて互いの霊力と妖力が交じり合い、絆が結ばれ、その証である“相棒輪パートナーリング”がショウちゃんの首とヒカリちゃんの左手の薬指に巻かれた。

 指輪の巻かれる指はランダムらしい。



「…ぷはっ、契約完了ニャ♪」


「…ん、ああ、これからもよろしくな、ショウ!」


「もちろんだニャ!」



 ヒカリちゃんとショウちゃんはそう言うと再度軽い口付けを交わした。

 二人の絆は、“相棒パートナー”同士というだけでなく、本当の姉妹としても、そして恋人同士としても深く繋がっているんだろうな。

 羨ましいっ!


 ボクも、ヨウ兄や、アカリちゃん、他の姉妹ともあんな風に仲良くなれるかな…?

 そんな風に思っていると、隣で寝ていたアカリちゃんに左腕をきゅっと優しく握られた。

 ふとアカリちゃんを見ると、アカリちゃんは眠ったままで、恐らくは寝惚けたまま、無意識にボクの腕を握ったんだろう。

 そんなアカリちゃんがいとおしくてカワイくて、その頭を優しく右手で撫でてあげた。



「ん…、姉、たん……、大好き…♪」



 寝言でそんなことを言うアカリちゃん!

 ボクも大好きだよ、アカリちゃん!!



「ヒカリ姉さんとショウ姉さんの絆の指輪が左手の薬指に…っ!

 やっぱり真にヒカリ姉さんの相手に相応しいのはショウ姉さんで、ヨウイチなんかでは断じて無いということの証…っ!!」



 一方で、姉妹百合ガチ勢(アキホちゃん)が興奮のあまり鼻血を垂らしてるけど、いちいち相手にしてたらキリがないのでひとまず無視しよう。


 アレはアレで個性があって、まぁ、カワイイとは思うけど、アカリちゃんにはああはなって欲しくないかな……



「あー、コホン…、じゃ、じゃあ、次は私との再契約、いいかしら?」


「あ、ああ!そうだな、じゃあ次はノゾミとの“隷獣”契約を!」



 そう言いながら、ノゾミちゃんとヒカリちゃんがソファから立ち上がり、お誕生日席側のスペースへと移動した。

 そこで二人は向き合い、お互いの腕を相手の腰に回して抱き合うと、二人はゆっくりと顔を近づけ、そして唇と唇を重ねた。


 “隷獣”契約は、魔力を持った魔人が、妖獣や亜人の魂を、無理矢理自らの魔力で縛り、支配する契約だ(相手が魔人や人の場合は“奴隷”契約となる)。

 支配の証として、“隷獣”の首に魔力で作られた“隷属輪リング”が巻かれ、“主人マスター”の指に“主人輪マスターリング”が巻かれる。


 契約の方法は、特殊な魔法陣を用いて行うのが基本だが、失敗のリスク(対象者に逃げられたりなど)もあるため、一番確実な方法として、口付けによって相手の体内に直接魔力を送り込むやり方がある。

 ヒカリ(フォルス)ちゃんがノゾミ(ゼクスティーナ)ちゃんを“隷獣”とした時もそうだし、ボクから望んでヒカリ(フォルス)ちゃんの“隷獣”となった時もそうだった。


 ちなみに、“隷獣”契約や“奴隷”契約は基本的には“主人マスター”側から行うものなのだが、ボクがやったみたいに、“主人マスター”となる相手から魔力を吸出して自ら“隷獣”となるパターンもある。

 とはいえ、自ら望んで“隷獣”や“奴隷”となるパターンは、滅多に無いことだとは思うけどね。



「ん…っ♪」


「んん…っ、んぁ…っ♪」



 ヒカリちゃんの魔力がノゾミちゃんの身体に流れ込み、その魂を支配していく。

 そして、契約完了の証として、ノゾミちゃんの首に巻かれたレイヤちゃんとの“相棒輪パートナーリング”に円錐型のスタッズが生えて、“相棒輪パートナーリング”と“隷属輪リング”の両方の特徴を備えた新たな首輪へと変化した。

 同時に、ヒカリちゃんの右手の中指には“主人輪マスターリング”が巻かれた。



「ん…、はぁ、はぁ、これで、私は…、」


「ああ、再契約完了だ、ノゾミ。

 …今度は、ちゃんとお前のこと愛して(イジメて)やるからな」


「うん、私のこと、もっと可愛がって(調教して)ね、ご主人様♪」



 そうして二人は再度軽く口付けを交わした。


 ヒカリちゃんって、普段はちょっぴりヘタレなくせに、いざ本番となるとスイッチが入る感じなのかな?


 そしてノゾミちゃんも、普段は堅物というか、真面目な印象なのに、その本性はちょっぴりMな感じ?

 元々そういう性癖を持っていたのか、ヒカリ(フォルス)ちゃんに開発されたのかは分からないけど、まぁ、お互いに愛があって幸せならいいよね!



「はぁ、はぁ…、わ、私も早くヒカリ姉さんに可愛がって(イジメて)貰いたい…っ!!」



 頬を染めながら股間に手を当てて、18禁な感じの行為を始めちゃったアキホちゃんはもう本当にどうしようもないな…

 だけど、そんなアキホちゃんが少しカワイイと思えてしまうボクもどうしようもない病気シスコンなんだろう。



「じゃあ、次はアキラと、だな」


「あ、うん!よろしくね!」



 ヒカリちゃんに呼ばれたボクは、アカリちゃんを起こさないよう、そっとソファに寝かせながらゆっくりと立ち上がり、ノゾミちゃんと入れ替わる形でヒカリちゃんの前に立った。


 ヒカリちゃんの両腕がボクの腰に回されたので、ボクも両腕をヒカリちゃんの腰に回し、抱き合った。

 間近で見るヒカリちゃんの顔を見ていると、クローンだから当然なのだが、ボクとそっくりで、つまりはヨウ兄の面影もあって、自然とドキドキしてくる。

 あれ?そう言えば、この身体はマコト姉とモトカ姉のDNAを元に作られたクローンであって、現世のヨウ兄とは直接の血の繋がりはない。

 なのに、現世のヨウ兄とそっくりというのはどういうことなんだろう?

 どころか、他の姉妹の子達も、転生して別の身体になってるハズなのに、皆何処かヨウ兄と似ている…

 血の繋がりがないのに、ここまで顔がそっくりというのは、奇跡的な確率だと思うけど、ひょっとしたらそれも魔王ヤミの力によるものなのか、それとも、



「…アキラ?大丈夫か?契約、してもいいか?」


「…へ?あ、うん、ごめん!ちょっと考え事してた!」



 おっと、今は余計なこと考えてる場合じゃなかった!

 今はヒカリちゃんとの契約に集中しよう。



「じゃあ、いくぞ…」


「うん、いいよ…♪」



 ボクが目を閉じると、ヒカリちゃんの唇が優しくボクの唇に触れる感触があった。



「…んっ♪」


「んっ…、んぁ…っ♪」



 次の瞬間、ボクの中にヒカリちゃんの魔力が流れ込んできた。

 前回の能動的に魔力を取り込んだ時と違い、今回は受動的に、ヒカリちゃんの魔力を受け入れる感じは、なんというか、凄く、気持ちいい…っ!

 ボクの全てがヒカリちゃんのモノで満たされていく…

 あ、ダメだ…、こんなの…っ、イッちゃいそう……っ!!



「ふぅっ…♪ん、んん…っ、あ、あぁ…っん!!」



 軽い絶頂を覚えたと同時、ボクの首にはヒカリちゃんの魔力で作られた円錐型のスタッズ付の首輪“隷属輪リング”が巻かれたのが分かった。

 それと、その時はボクの腰に回されてて分からなかったけど、ヒカリちゃんの右手の人差し指にはボクとの“隷獣”契約の証である“主人輪マスターリング”が巻かれていた。



「…ん、はぁ、はぁ…、これ、思ってた以上にヤバいね……」


「ああ、そう、かもな。

 アタイの魔力で、そこまで感じてくれてるってことは、それだけお互いの想いが通じてる、ってことでもあるからな…」



 そうか、想いの強さによって契約時の感じ方も変わるんだ…



「なんだか、ヒカリちゃんと一回エッチしたような感覚だよ…」


「うでしょ、ま、まぁ、そういうこと、なのかもな?」


「じゃあ、ヒカリちゃんも感じてくれてたんだ?」


「ま、まぁ…、な……」


「あはは、照れてるヒカリちゃん、最高にカワイイね!」


「ばっ…、からかうなっ、」



 チュッ♪



 と、そこで今度はボクの方からヒカリちゃんの唇に口付けをした。



「ふふ、これからは、ボクのこともきちんと可愛がってね♪」


「うっ…、あ、アキラが相手だと可愛がられるのはアタイの方になりそうなんだが……」



 ヒカリちゃんをからかうのは面白いな~♪

 Sなヒカリちゃんもカワイイけど、Mなヒカリちゃんもきっとカワイイだろうな、とそんな風に思うボクなのでした♪



「あぁあああっ!!

 アキラちゃんに可愛がられる(イジメられる)ヒカリ姉さん…っ!!

 イイっ!!そんなヒカリ姉さんも最高に素敵っ!!

 ああ、ヒカリ姉さんもショウ姉さんもノゾミちゃんもヒカリちゃんも、姉妹皆大好きっ!!

 この身体に転生出来て良かった!!やっぱり姉妹百合しか勝たん!!」



 アキホちゃん、あまり18禁過ぎると色々ひっかかってマズいのでその辺にして!



 その後、ヒカリちゃんがアキホちゃんを“使い魔”にして(その様子は残念ながらカットせざるを得ませんでした)、一通りやるべきことは終わったということで、元同僚への挨拶回りが終わったレイさんと共に、一旦“ワールドフラワレス”のイツキちゃんの屋敷へ戻ることにした。

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