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505号室の男の日常。

作者: 七瀬







私の隣の部屋の505号室の男性ひとの日常が面白いので

ここで話していきたいと思います。

この男性ひとは? 朝4時に起きて必ずゴミを捨てに行くのです。

隣の玄関のドアがゆっくりと【ギーィ】と音が鳴ります。

周りは皆、寝ている時間なので静まり返っているはずです。

靴を履く音やゴミを持って階段を降りる音まではっきりと聞こえていました。

以前、たまたまこの男性ひとと朝出くわす事がありました。

私は朝から出張で旅行カバンを持って家を出たところでした。



『・・・あぁ、お、おはようございます。』

『おはよう。』



一応、挨拶したら返事は返ってきます。

でも? 普段から不愛想な人であまり笑わない印象が私にはありました。

この男性ひとは、90歳を過ぎている父親と二人暮らしで。

この男性ひともかなり歳を取っています。

外見からして、60歳ぐらいでしょうか。

洗濯していないようなクシャクシャの上下ジャージ姿でズボンは大きな

穴が右足のすねの部分に空いていました。

今まで、女性ひとと一度も付き合った事がない感じに見えます。

勝手な私の思い込みですが...。

仕事にも行っていないようでした。

今流行りの、【9060問題】なのでしょう。

男性ひとは、毎日ふらふら朝、昼、晩と何処かに一人で出かけて行きます。

朝はゴミを捨ててそのままフラフラと散歩して家に帰って。

お昼は、パチンコや競馬に行くみたいです。

晩は、晩ごはんを買いに行って夜中遅くにまた一人で公園のベンチに座って

安い缶ビールを飲みながら一人で何か考え事でもしている感じでした。

勿論! 私も他の住人もこの男性ひとを不思議に思って見ていました。

毎日、やる事もなく同じ格好で外をフラフラしていたからです。

仕事にいつから行っていないのでしょうか?

この男性ひとのお父さんは、週に2回デイサービスで家を空けます。

その時、この男性ひとは一緒に居ません。

パチンコか? 競馬に行っているのでしょう。

デイサービスの人も慣れた感じでこの男性ひとの父親を車に乗せて

連れて行きます。

ただ、父親が戻ってくる時には必ずこの男性ひとが迎えに来ていました。

この男性ひとの毎日の日常はいつも一緒でした。

パチンコや競馬、お酒などで使うお金はみな父親の年金なのでしょう。

この男性ひとは、既に10年以上この生活をしているからです。

預金は底をついているはずです。

以前働いていた職場で何かあったのか? それからは家に引き籠って

一度も働きに行っていないのです。

働く気があっても、“人間関係がうまくいかない”人なのでしょう。

みんな、苦労するところですが、、、。

この男性ひとは、それで仕事をしないのです。

隣の部屋なので、この男性ひとと父親が仕事の事で喧嘩になって

いる声が何度かありました。




『お前は、いつになったら? 仕事に行くんだ!』

『親父に関係ないだろう!』

『関係あるだろうが、俺の年金の金で何とかお前も生活ができてんだぞ!』

『そんなの知るかよ!』

『お前もいい歳になったんだから? 好きな女性ひととかいないのか?』

『仕事もしてないこんなオッサンに、女性ひとが興味持ってくれるはず

がないだろうが!』

『じゃあ、働けばいいじゃないか! 最初は清掃係でもいいだろう。』

『60過ぎのおっさんが、どこで雇ってくれんだよ!』

『やる気さえあれば、どこでも雇ってくれるよ。』

『親父は、何にもオレの事分かってないんだよ!』

『お前も、“もっと現実を見ろ!”』

『・・・そ、そんなの分かってるよ、』

『分かってるなら、昼間っから毎日、パチンコや競馬に行くにはやめろ!』

『家に居たら? ストレスが溜まるだろうが!』

『じゃあ、働いて自分の金で行くんだな!』

『それは! 絶対に無理だ!』

『そうやって、直ぐにお前は諦める!』

『もういいだろう、“この話は!”』

『・・・・・・』







この男性ひとの父親も、この男性ひとの事を心配しているのです。

自分が亡くなったら? 息子はこの先どうなるのだろうと、、、?

この男性ひとも、その事はよく分かってるし、確かにあの歳で

仕事を見つけるのは難しいと思います。





・・・それでも、最近少しこの男性ひとの毎日の日常が変わりました。

パチンコや競馬に行くのをやめて、職業安定所に行くようになったのです。

この男性ひとも、本当は仕事がしたいのかもしれません。

親に迷惑をかけない方法をこの男性ひとなりに考えているのでしょう。



最後までお読みいただきありがとうございます。

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