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ぽぎゅっ、といい仕事な外注のSEが鳴り、スライマルはあっさり真っ二つに引き裂けた。
まるでプリンに縦に切り込みを入れたかのように、そのまま自重で左右に潰れていく。
あとに残ったのは、2枚の金貨。
2ゴルドルに経験値8。それがこのプライマル。
ポコポポーン! とファンファーレが鳴り、体を下から上に光の環が通り抜ける。
レベルアップだ。
一応、設定的に、魔物と戦うと戦の神から祝福を受けられるというのがあり、それがレベルアップだという解釈だ。戦の神は設定画すらおこしてない、完全に裏設定だけの存在だが。
そんなことより――
「大丈夫だったか?」
「……え?」
しりもちをついたアッパルプイに手を差し伸べる。
……そこで思い出した。
主人公が、ヒロイン・アッパルプイに手を伸ばすこのシーンは、このゲームのメインビジュアルと同じだ。
オレは主人公が、某宇宙戦争映画のようにネギを掲げている絵を推したんだが、チームとマネージャーの大反対で断念したんだった。
などとくだらないことを考えている間に、アッパルプイはオレの手をとって立ち上がった。
「す、すまぬ。助かったぞ」
……こう言ってはなんだが。
大ファンの声優さんの声で、感謝されると、こう……来るものがあるな。
「ところで、そのネギはなんじゃ……?」
「え、ええと……何らかの魔法武器かな……?」
「そ、そんなものが……? いや、しかし、わしの術が効かぬスライマルを簡単に倒したし……」
悩んでいるアッパルプイも可愛い。公私混同でこのデザインに決定判を押した自分を褒めたい。
ともあれ、これがオレとアッパルプイの出会いだった。
正確には、モニター越し以外で、だが。