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猪退治を終えたオレたちは、隣村への報告を済ませ、アッパルプイの村へと戻った。
そして――
「うわあああああああああああああああああああああああああ!!」
……アッパルプイの絶叫が、響き渡っている。
村中から、すすり泣く声が聞こえてくる。
喪服なんて用意するほど裕福ではない村人たちが、黒い布きれを腕に巻いて喪章にして故人へ哀悼の意を示していた。
やはり、アーシェラは亡くなっていた。
……オレたちが出てすぐ、風邪をこじらせて肺炎となり、急死したそうだ。
それを、猪退治から戻って知ったアッパルプイは、宿屋に寝かされたアーシェラの遺体にすがりつくように号泣していた。
その声は、あまりに悲しくて。辛そうで。胸が張り裂けそうだった。
でも、オレはそばから離れなかった。
このイベント……と言っていいのかすら、もうわからないが、この運命を仕組んだのはオレだ。
だから、見届ける義務がある。
アッパルプイのあまりに悲しい泣き声に、例えここがゲームの中だとしても、彼女は生きている……間違いなく生きていると確信した。
「あああああああああああ!」
悲しみを抑えきれず、ほとんど反射的にアッパルプイが抱き着いて来た。
小学生のような身長の彼女が抱き着くと、腹の辺りに頭が来る。
こんな子を、ここまで悲しませて……
でも……考えれば考えるほど……これを変えることはできないし、変えてはいけないことだと思う。
この後、アッパルプイは、アーシュラの遺した手紙を読むことになる。
中に記されているのは、「狭い村でこのまま何百年も見知った人間が亡くなっていく様を見続けるのではあまりに忍びない。もしかしたら、姉妹同然に暮らしてきた私がいるから、家族のエルフを探しに行かないのではないか。これを機会に主人公と旅に出てみては」といった内容であり、だからこそアッパルプイは旅立つ。
『ナイトメア・エターナル・ギフト』は、主人公の物語ではあるが、アッパルプイの物語でもある。
……だから、これは必要なことだ。
だけど……
だからこそ――
「バッドエンドは、間違いだ」