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「ハァハァハァ……」
自分の意志とは無関係に、肩で息をしてしまう。ネギを杖代わりに、やっと立っている。無敵だったので体のダメージはないが、あまりに高いHPの敵と戦い続けたことで、体力と精神がごっそり削られていた。
だが、おかげで、グランドカオスドラゴンを倒す事ができた。その巨体が、まるで某格闘ゲームのステージにある大仏のように横たわっている。
そしてずっと頭の上でファンファーレが鳴り響いていた。
ゲーム最序盤で隠しダンジョンの敵を倒すなんてことをしてしまったために、レベルがガンガン上がっているのだ。おそらく20くらいまで上がったと思う。バランスなんてもうあったもんじゃない。
無敵バグは敵に先制されたら無敵化する前に倒されるから万能じゃないが、このレベルならゲーム後半まで苦労しないだろう。
アッパルプイはというと、放心したようにへたり込んでいた。
最初は魔法攻撃などもしていたが、途中からMPも尽き、呆然とオレとドラゴンの戦いを見つめていたが、流石に戦いが長すぎた。
全身の力が抜けきったような、そんな様子だ。
そんな彼女が、引き攣った表情で、オレを見る。
「お、おぬし……まさか……伝説の勇者……なのか……? その冗談みたいな剣が、本当にエイジングセイバー……なのか?」
「……勇者かどうかは知らないが、剣は本物の聖剣だよ」
「は、ふは……ふぇっふぇっふぇっ……こんなこと……あるんか……よりによってネギって……ふぇっふぇっふぇっふぇっ!」
大笑いするアッパルプイ。
その可愛すぎるボイスと、あまりに不釣り合いなおばあちゃんな笑い方に、オレも思わず笑った。
と――
『ブルルルルル!!』
突如、茂みを突き破って、巨大な猪が現れた。
「あ、忘れてた」
「あ、忘れとった」
オレとアッパルプイの声がハモる。
それはともかく、今さら暴れ猪なんかが相手になるわけなかった。