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こんなところにいるはずがない、モンスター。設置した記憶もない敵。
特にこのグランドカオスドラゴンは、隠しダンジョンのモンスターだ。ここで出て来るなんてありえないし、バランスブレイカーなんてもんじゃない。
こんなのバグだろ!
「あ……」
バグ……なのか?
そんなわけはない。
オレがビルドしていたROMはほとんどのバグ修正をしたマスターROM……
あ。
「あああああああああああああああっ!!」
このバグを修正したROMはまだ焼けていない!
ビルドのボタンを「押す前」に、オレはこの世界に来たはずだ!
まさか!
ここは、ひとつ前のバグが修正される前のビルドなのか!?
だとすれば、まだ取りきれていないバグがある!
この「最初のダンジョン番号の敵出現テーブル」に隣接する「最後のダンジョン番号の敵出現テーブル」を誤って読み込んでしまうバグだ!
発生確率が低すぎて発見が遅れてしまった……あれか!
『バァルルルルルルルル……』
ドラゴンは臨戦態勢……もし攻撃を放たれたら、即座に殺される。オーバーキルなんてもんじゃない。
コイツのレベルは200を超えてるんだ……!
オレたちのレベルはクリアまでレベル制限があって99までしかないのに!
「に、逃げるのじゃ!」
「ダメだ! 逃げれる相手じゃない!」
レベル差で逃げやすさが決まる仕様になっている。200以上も差がある現状、1%の確率すらない。限りなく0に近い数字になっているはずだ。
どうする?
どうする? どうする?
詰んでる。
こんなのゲームオーバー……。
だが、ゲームオーバーになって復帰したとして……それは生き返ったことになるのか?
そもそも、生き返れる保証なんてないんだ。
死ぬわけにはいかない……!
でも、体の震えが止まらない。過呼吸になる。頭が真っ白に――