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「……え?」
おばあちゃんの言葉に、オレは思わず凍り付いていた。
その様子に、彼女は一瞬、驚いていたが、すぐに手を叩いた。
「ああ、アッパルプイがあんなに若いのに、こんなおばあちゃんが昔からの親友だなんて言ったら驚くわよね。アッパルプイはちょっと特別だから……」
違う。
そうじゃない。
いや、アッパルプイが特別なのはその通りだ。
この人間の村で唯一のエルフ。人間の十倍は生きる種族で、赤子の頃にこの村にやってきたアッパルプイとアーシュラが親友でも全くおかしくない。
そもそも、そう設定を作ったのはオレだ。
二人とも70歳の幼馴染だ。
……それは設定どおりだ。
問題は……彼女がアーシュラだということ。
……ああ。
なんてことだ。
そんな……そんな……
「ど、どうしたの? 顔が真っ青よ?」
「い、いえ……少し旅の疲れが出ただけです……」
「あら、それはいけないわ。私も最近カゼ気味だけど、やっぱり寝ないとダメね。だから、あなたも早く寝た方がいいわ。部屋はもう準備できているから、横になるといいわよ」
「は、はい……」
オレはもうアーシュラの顔を直視できなかった。
教えられた部屋に入り、簡素なベッドに倒れ込む。手入れはされているが、現代人からみてあまりに質素すぎる素材の数々はどうしても安宿の印象を与える。
だがそんなことはどうでもいい。
薄い布団に頭からくるまり、目を閉じる。
アーシュラ。
アッパルプイの無二の親友。
彼女は、ほどなく死ぬ。