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……そう来るか。
いや、考えてみれば当然かもしれない。オレだってエクスカリバーがネギの形だとか言われたら信じないだろう。
イベントを積み重ねて初めて伝わるんだ。
「それが真実だと言うならそうじゃな……今、隣村を困らせておるモンスターの退治をしてみせてくれんか?」
……今度はそう来たか。
もしかして、本来のルートに収束する……ということか?
……もう少し、情報が欲しい。やはり、今のところは、流れに乗っておこう。
「……わかった」
「ふむ。意外じゃな。冗談には冗談を、と思ったんじゃが……しかし、引き受けるというなら、わしも責任を持って同行せねばな。……じゃが」
と、窓の方を向くアッパルプイ。窓と言っても、木のフタを枝で押さえているシンプルなもので、ガラス窓ではない。
その窓から、オレンジ色の光が漏れていた。
「今日はもう遅い。今日の礼がてら、宿の親父に話はつけておく。もう今日は宿で休むといいじゃろう」
……次の目的地は宿か……。
……なんだろう。この気持ち。
全部流れが決められている気持ち悪さは……。
ゲームとしては、スムーズな誘導のはずだ。
次にどこに行けばいいとかわからなくならない、むしろ親切な設計だと思う。
だけど、全部敷かれたレールにのって動かされる息苦しさのようなものがある。
オレは、一個の人間として主人公の性格を、行動をちゃんとデザインできていたんだろうか? それとも、ありがちなテンプレをただ、なぞってただけなのか……?
喉の奥に物が詰まったような気持ち悪さを残したまま、オレは宿に向かった。
村の入り口にある宿では、おばあちゃんが迎えてくれた。白髪だが丁寧に梳かれていて、それを後ろでまとめた姿は、品の良い印象だった。
少し咳き込みがちなのと、顔の血色が悪いのが気にかかったが、この田舎の村で栄養状況もそういいとは思えないし、普通のことなのだろう。
「ケホッ……話は聞いているわ。アッパルプイを助けてくれたんですってね」
「え、ええ、まあ……」
「ありがとうね。私はアーシュラ。アッパルプイとは昔からの親友なの」