行間 天上のお茶会 I
「そ、それは真か!?」
暗闇の中、中央のモニターだけが唯一の光となり、円卓を照らしている部屋で。
中世の貴族のような、深紅の豪華なドレスを着た金髪の女性が、一人立ち上がってそう叫んだ。
彼女の周りには、どこかの学校の制服や普通のパーカーなど個性もバラバラな衣装の女性や男性、少年少女たちが円卓を囲んでいたが、
皆立ち上がりすらしないものの、深紅のドレスの女性と同じようにその顔には動揺が広がっていた。
「......落ち着け、リア」
その中で、円卓の上座にあたる席に座っているゴスロリ衣装の小さな少女だけが一人、
表情も声色も一切変えない落ち着き払った様子で、深紅のドレスの女性に着席を促す。
見た目は明らかに深紅のドレスの女性の方が、10歳以上も上に見えるが、
その歳不相応な落ち着きや迫力は、見た目ではない何かが彼女の方が上なのだとハッキリと周りに誇示していた。
「ぬぅ......済まぬ」
事実、深紅のドレスの女性も、自分よりうんと年下の年端もいかない少女に偉そうに言われているのに、
嫌な顔一つもせずに非礼を詫びて、静かに着席した。
誰も何も言わない。
その光景を不思議に思う者は、誰一人としてこの場にはいない。
「......どうするのぉ? 早く何とかしないとマズイんじゃなぁい⁇」
自身の体型の良さを誇示するかのような、タイトな黒のミニドレスに身を包んだ黒髪の女性が、
その見た目に違わない甘ったるい声で問いかけながら、ゴスロリ少女の方を見る。
「............当然、回収を優先だ。
詳細が分かり次第、接触方法を考える」
よいな? とゴスロリ少女が円卓の面々を見る。
その眼光は有無を言わせるものではなく、その問いかけが形式だけのことだと皆分かっている。
誰も何も言わない。
言える人間は、誰一人としてこの場にはいない。
ゴスロリ少女は、少し遠くを見る。
その瞳に浮かぶのは、旧い記憶。
......ただの......昔のこと。
でも。
もう戻らない、――――大切な記憶。