暗転
それは、突然だった――――。
「……!!?」
え、とすら口にする間もないくらい鮮やかに、
本当に突然、私の視界は暗転した。
最初に訪れたのは呆然。
だって、状況が全く飲み込めなくて、何が起きたのかすらわからなかったから。
――――でも私の体がふわり、と宙に浮いた瞬間。
本能的に私は声を上げて、ジタバタと暴れていた。
「やめ……っ……離して…‼︎ 誰か……誰かーーっ‼︎‼︎」
無我夢中で手足を動かし、肩や腰を捻り、とにかく出せる限りの大声で叫んだ。
でも、ここは人通りもほとんどない。
住宅も近くになく、あるのは開いてるのかすら怪しい寂れたお店ばかり。
……当然、誰も来てくれる筈もなかった。
体の方も、複数人から掴まれているみたいで、
どれだけ全力で暴れてみても、全く振り払えない……‼︎‼︎
肩や腕、腰を掴まれて、
私はズル…ズル……と体を引き摺られていった。
――――と、その時。
少し遠くの方でエンジン音みたいなものが聞こえた気がした。
(え、もしかして……車⁉︎)
まずい。
このまま車に乗せられたら、もう逃げることは難しくなる。
私は、最後の力を振り絞って、
なんとなく目の前に気配を感じる腕か何かに思いっきり噛み付いた…‼︎
「ぐぅ…あぁ……っ‼︎⁉︎」
僅かに男の呻き声のようなものが聞こえ、肩を掴む手が少しだけ緩んだが、
その代わりに腕や腰を掴む力が強くなり、逃げることは出来なかった。
(やっぱり……一人だけ何とかしても、他の人たちが
……)
どうしようどうしよう、と私が考えを巡らせているうちに、腕を噛まれた男は周りの人たちとボソボソ、と何かを小声で会話し始めた。
何を……と私が彼らの会話に意識を向けた瞬間、
背中にチクッとした感触がし、急に私の体から全ての力が抜けて、頭がぐわんぐわんと揺さぶられているかと思うほどの眠気が襲ってきた。
(す、すいみ……ん……やく……? だ……め……眠っちゃ……逃げられな……く…………)
――――私の意識は、そこで途切れた。