他の追随を許さない(失笑)
ハーレム(一人)なんですけどどうしましょうか。
「...で、ライア様?これからどこに向かおうというのですか?」
「そうだなぁ──取り敢えず、この国から出る?」
彼女は、ふぅ、と一息つくと、
「馬鹿ですか、馬鹿なのですかライア様は。この国、広さだけなら他の追随を許さないと言われてますからね?とてもとても、徒歩で国境越えなんて現実的ではありませんよ」
「しらんがな」
この国どころか世界に来たのも数時間前だよ、悪かったな。
「でもでも、私は──ライア様の向かう先に必ず着いていきますよっ!だって......いえ、なんでもないです」
「そうか」
それにしてはやけに顔が紅いけどな。
「それでは、行き先は私が決めてもいいですか?」
「構わないが...大丈夫か?その、お姫様なんだろ?」
「むぅ、失礼な。私もといお姫様は英才教育なんです!どこの国も、どこの世界だって共通ですことよっ!」
語尾に特徴付けだすと収集つかなくなるから勘弁してほしい。切実な願いだ。
「隣町で構いませんか?」
「追手はいないのか?」
「──それでは行きましょー!」
聞いちゃいねぇな。
やれやれ、しょうがない。なるようになれ、だ。
「待て、そんなに急ぐとまた転ぶぞ」
「失敬な!何度も同じ失敗は────キャッ!」
ほれ、言わんこっちゃない。
「大丈夫か」
そう言い、彼女の華奢な体を支える。
「ふぇぇえ!!」
何故か涙目でうるうるしている彼女を尻目に先頭に躍り出る。
「ほら、置いていくぞ」
道なんて知らないが。
「待ってくださぃぃ!」
ただ、こんな関係、いいな、って思ったんだ。
▲▼
「ところでライア様。先ほど自己紹介で勇者(笑)と言っていましたがどういった意味でしょうか」
思わず遠い目をしてしまう。
ああ、説明めんどくせぇ......
「僕は一切分からないんだが、どうやら魔王的なものがいるらしいな。テンプレだし、多分それで間違いないだろう」
「てんぷれ、ですか...何言ってるか分かりません」
「聞き流して問題ないぞ。で、スキルを調査されて追い出された。どうやら僕のスキルは戦闘向きでは無いらしくてね」
「──なに考えてるやがるのですかあのハゲ親父は」
「ん、何か言ったか?」
「何も言ってないです。それで、この世界の話はどの程度聞いておられるので?」
この世界の話、ね。
「何も」
「...それは、『何も聞いていない』と云うことで間違いございませんか?」
「ああ」
すると彼女は頭を抱えて、うぅ~、と呻き始めた。きっと何か重大なミスでもしたのだろう、僕が。
「わかりました。ええ、わかりましたよっ!やればいいんでしょうやれば!」
急に叫ぶな。耳がキーンってなったよ。
「ライア様、覚悟してくださいね!?」
「──まぁ、お手柔らかにな」
かくして、長い道のりを歩み始めた。
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