はじめてのまほう!
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「そういえばこの森、エルフの森と言われて立ち入り禁止区域なんてすよね~」
「何故それを早く言わなかった」
するとシフォンは何故か嬉しそうにはにかむ。
「ライア様なら...或いはあの御方も......」
皆まで言わず、曖昧にぼやいた後、シフォンは歩みを早める。
「さ、行きますよ、ライア様!」
「──はぁ、やれやれ。待て、そこ、危ないぞ」
「キャッ!?」
目の前に石があるのに、森のほの暗さ故か気付かずに躓いてしまう彼女。
僕はそっと背中に回り込んで抱えてやった。
「あぅ......その、ありがと、う、ございますぅぅう...」
「ああ、森は暗い。気を付けろよ」
どうしてシフォンは耳まで赤くなっているのだろうか。茹で蛸のようで面白いちゃあ面白いが。
「その、では改めて行きますね」
「出来れば、日が落ちるまでには敵を撒きたいところだな」
▲▼
暫く無言が続いた。なんか知らんけど、シフォンは僕の方を見ては、「はぅ...」とか言ってる。謎だ。
「あ、あのっ!」
「うん、どうした?」
「どうかしたの~?」
─────アレ?
「ラ、ライア様...」
「ああ、謎の声が入ったな。だがまあ、一般人ではないだろう。...この世界での一般人の定義なんぞ知らないがな」
少しの間その場に留まり、キョロキョロしてみると、突然、辺りが目映く光り、視界を奪った。
光が静まり、目を開くと、
「やっほ~、元気してる?ホクは元気だよ!」
「聞いてない」
「......チッ」
「おい、今舌打ちしたか?」
「まっさか~!」
と、まぁなんとも白々しい演技と共に表れた人型のナニカ。耳がとんがっているため、人間ではないことが予想される。
「あ、貴方様は......!」
「おっと、そこのレディ。何かご用かな?」
「僕のときと対応が百八十度違うな」
今度は舌打ちなしだ。ちょっと残念。
中性的な顔立ちが特徴な耳長のナニカは、シフォンの手の甲にキスをしていた。
お前は......いや、言うまい。
「いや、あの。貴方様はエルフの村長ですよね?こんな場所でいったい...」
「おや?散歩していたときに偶々出くわしただけだよ。ボクの庭、でね」
...あぁ、そういうことか。
なんだ、この耳長...もといエルフの村長は不法侵入を訴えているのか。
いつの時代も、そういうのには厳しいらしい。
「すまなかった。そういえば、ここはエルフの森だったな」
「なんだい、男。ボクは君の話なんか興味ない。女の子を置いて、さっさと失せな」
「なっ!?な、何を言ってるのですか!?」
すると、何やら魔方陣を空中に刻み始めたが──
「それの数倍は殴る方が早いな」
「──チッ!」
中性的な顔面の頬に容赦なく殴つけようとしたものの、咄嗟にかわされてしまう。そして、彼女の魔方陣も、丁度刻み終えたらしい。
「『生命は万物に有らず、ただ、其処に在り続ける事のみ赦された惰弱な存在。為らば、我が命を吹き込もう!永遠の生命を! 【傀儡の芽吹き】』」
「......ぁ」
「ひぃぃぃ!!ライア様、助けて!」
森中の...といっても、目に見える範囲で木々が蠢き始める。
それは徐々に徐々に動きを早めていき──
「やっべ、囲まれた」
「ニンゲンよ、嗚呼、愚かなニンゲンよ。恨むのならその身の運のなさを恨むのだな。コイツらは我が傀儡にして我が眷属。そこいらのニンゲンと同じと見ると──痛い目を、見ることになるよ?」
そうか、高尚なエルフ様にとって、俺みたいな奴はちっぽけな存在でしかないと。
つまり、いてもいなくても。死のうが生きようが問題ないが、取りあえず殺しておくかレベルの存在だと。
「...ふん、今日は調子が悪い。中身が歪だ」
そんな呟きが聞こえたかと思うと、
『敵対反応を間近で確認。スキル:掃除を実行致します』
無機質な、されど頼もしい声が脳内に響いた。
...今回は長ったらしい詠唱をしましたが、もしかしたら今後なくなるかもしれません。主に、作者が面倒という理由で。
閲覧頂きありがとうございました。