プロローグ
......久しぶりの投稿。
エタった作品のことは忘れてほしい所存。
ドッ、と旋風が巻き起こる轟音と共に、教室が揺れる。
「ちょ、ちょ待てよなんだよこれ!?」
「キャーー!」
「ちょ待てよちょ待てよ...ちょ待てよ!」
女子のヒステリックな叫びと、ちょ待てよという悲痛な唸りが教室に響く。
日本のとある高校、そのとあるクラスがそのまま異世界に転移したなど......信じるものは、いないだろう。
だが、これだけは確実に言える。
「──やれやれ、僕の命もこれまで、か。やれやれ」
▲▼
風が収まると、そこは異国の風景だった。
「これはこれは勇者様方!ようこそおいでになられました!」
......やれやれ、いったいここはどこなんだ?
“何か”に巻き込まれたことだけは辛うじて察せるが。
「あ、貴方はいったい...」
やれやれ、あれはクラスの学級委員のイイサワ君ではないか。でしゃばるとロクなことにならないと、あれほど言ったのに。
「君達はこの世界を救う勇者として召喚された、勇ある少年少女。これだけでは不満かな?」
金ぴかな服を着た推定王様がイイサワ君に話しかける。
どうして推定かって?だって一番偉そうなんだもん。
「不満って...」
おや、あんまりといっちゃあんまりな説明に、思わず絶句している模様。
因みにイイサワ君はイケメンだ。絶句している顔も、どこか神秘的で腹が立つ。
──そうだ、もう一つついでに説明すると、僕は虐めを受けている。キッカケはなんだか忘れたが、きっと些細なことだったはずだ。
物を隠すことから始まって、日に日にエスカレートしていく。最後はカッターで僕の体に字を書くなんてことしてたな。お陰で僕の体にはタトゥー然とした歪な文字が刻まれている。
因みに、刻まれた文字は『パラジクロロベンゼン』だ。
「おお、そうだ。せっかく召喚に成功したのだから、君達の固有スキルくらいは確認しておこうかな。...持ってこい」
「ハ!」
王様(推定)がそう言うと、背後にいたスーツの男が何か水晶的な水晶を持ってきた。
...この世界にもスーツってあるんだな、やれやれ。
「さあ、勇者様方。その水晶に手を置いて下さい。そして、頭に浮かんだ文字の羅列をそのまま話してください」
どうしてか、逆らえないように感じた。
周りではやれ勇者だとか、やれ天使だとか。
固有スキルってなんだよって思う名称だった。
「固有スキル......『掃除』ですね」
...やれやれ。
「あ、マジ?戦闘スキル以外要らないから、マジで。帰っていいよ。え、帰れない?知らん知らん。いや、確かに良心は痛むよ?痛むけどね、時には非情に成必要があるんだよ。立場的にね?どうしようもないことなんだよ」
そう捲し立てると、
「彼を門の外にまで送ってやってくれ」
皆に助けの視線を寄越すも、寧ろ蔑んだ目で睨まれるだけ。
──やれやれ。やれやれったらやれやれだ。
「やれやれ、君達には失望したよ」
最後の足掻きとして、そんなことを言ってみた。
「...早く連れていってくれますか?」
おっと、まさか学級委員のイイサワ君からの裏切りだ。
そんなこんなで連れていかれました町の外、つまり郊外。
やれやれ、これからどうしようかな。
閲覧いただきありがとうございました。