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俺は飛び跳ねる遥花が周りの邪魔になっていたので急いで回収し、その場を後にする。
ただ俺も嬉しいので、あまり怒り過ぎないようにする。
「さっきのはバカ騒ぎとは違うのか?」
代わりに茶化すように指摘することにした。
当の本人は嬉しそうでまだ笑顔のままだ。
しかし、指摘すると頬を膨らませて、抗議を始める。
「違う!さっきのは嬉しすぎて体が勝手に動いただけ!」
理屈が通っているようで通っていない言い訳に半ば呆れながらも、強く否定しすぎるとせっかく取り戻した友好関係がふいになってしまうかもしれないという思いから、特に深く言い寄ることはしなかった。
「まぁいいや。教室行こう」
遥花を促しながら二年生の教室に向かう。
俺や遥花の通う志井高校はこの辺では割と大きく、多くの生徒が通う私立校だ。
校則もあまり厳しいものではなく、髪を染める生徒が普通にいるし、指定の制服があるが、着こなしは自由だ。
生徒に厳しくない点も人気の理由だろうか。二年生だけで百五十人は居たはずだ。しかし以前は更に多かったようで、空クラスが一つあった。
「で?俺達は何組なんだ?」
遙花が飛び跳ねるのを見て同クラスだと知った俺はクラス表をいっさい見ていない。だから遙花に訊くほか無い。
これで別クラスなのに飛び跳ねていたとかだったらどうしようか。
もう一度見に行かなければならない上に、遙花に馬鹿にされそうだ。
『一緒だから嬉しくて飛び跳ねたと思ってたの?自意識過剰だねww』なんて言われようものならトラウマになりかねない。
その時は仕方ない。自業自得と割り切って考えよう。
「私達はA組だよ。席が近くだといいね!」
よかった。自意識過剰じゃなかった。
そして席は近い。
分かり切ったことだ。席順は五十音順で決めてたはずだし、遙花の名字は『いずみや』俺は『いはら』なので当然近い。それどころか隣の可能性だってある。
今日は朝から随分と遙花との仲が深まっている気がする。一年生の頃の分の清算だろうか。
内心うれしさ半分期待半分で胸が躍っている。
「和弥、顔に嬉しさが滲み出てるよ?」
「マジか、どんな顔だよそれ」
まさか顔に出ているとは、変な顔だったら他の人に見られていないだろうか。
「こう、口元が緩んでて笑顔になってた」
あまり変な顔ではなかったようで一安心だ。
そうしてる内に教室に着く。時間的に遅刻からは大きく余裕があったが、既に多くの人が教室の中に居た。