一章 始業式と転校生 1
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ジリリリ!ジリリリ!ジリリリ!
「んん……夢か……」
目覚まし時計が起床時刻を伝える。
耳に入っているがまだ眠い。
春の陽気はどうしてこんなにも眠気を誘うのだろう。ついつい二度寝にうつつを抜かしたくなってしまう。
それにさっきまで見ていた夢。一体あれは何だったのだろう。現実味にかける夢ではある。
特にあの空色の髪の少女。まったく見覚えがない。あんな色の髪、見たら覚えているはずだが……
それにしても眠い。本気で二度寝してやろうか?
「いや、起きないとな」
ここで眠気に負けるわけにはいかない。今日は始業式。二年進級の初陣ともいえる重要な日なのだ。
勢いよくベッドから跳ね起きてリビングへ向かう。
「お、和弥おはよう」
両親とは別に久しく見ていない姿があった。
「お前いつからうちの家族になったんだ」
泉谷遥花、幼馴染で小さいころからよく遊んでいたが高校に進学してからはお互い慣れるのに精一杯だったからか交流は途絶えていた。
そして彼女がさっきの夢のショートヘアの少女その人であって、少し不思議なものを感じた。遥花が俺に告白?ありえない話だ。
それはさておき、久しく会ってなかった幼馴染が両親と朝食をとっている。ということは、久しぶりに関係が復活ということか。
「ほんと久しぶりね、高校二年に進級したんだし、頑張りなさいよ」
母さんが遥花に楽しそうに声をかける。
「うちの馬鹿も頼むぞ!」
父さんが笑いながら言う。
「いや俺そんなに成績悪くないんだけど」
「任せてください。和弥のこと、ちゃんと世話するので!」
弁解の余地などなかった。
まぁにぎやかな朝食も長らくなかったので、それに免じて許すとしよう。
朝食を済ませ、身支度をして家を出る。
「行ってきます」