閑話休題 ‐世界について‐
題名通りです。一々キャラクターに説明させるにしては国が多すぎます故、ざっと纏めさせていただきました。
少し、世界の話をしよう。
23年前、聖暦1105年に大規模な国家間戦争が勃発した。その原因は、千年もの間広大なガランロゥ大陸を統べていたが、今は力無き聖エトルシ皇国にあった。この国は、再びその栄光を取り戻すべく弱小国や新興国に急接近し〝神聖連盟〟なる同盟を結成した。
神聖連盟には、ドルチ王国やトルニア公国、リパ公国が参加を即座に表明する。力が無くとも、かつて大陸を支配していた聖エトルシの皇帝に認可されるというのは、弱小国家にとっては大きな大義名分となったのだ。
だが、勿論それを快く思わない国々が、結成に猛反発した。ドルチを支配領域に持ち、トルニアと長年争ってきたゾンターク帝国、リパの元・宗主国たるラインドルフ帝国、聖エトルシと領土問題で揉めていた島国国家ノルウィル王国である。これら3か国は、〝協商連合〟を組み、神聖連盟に対抗しようとした。全く譲ることのない両者の対立は極限にまで達し、正に一触即発の状態であったと言える。
戦争の引き金となったのは、ドルチ王国海軍が、ノルウィルの商船を軍船と誤認し、沈没させたことだった。まずノルウィルがドルチに宣戦布告、そこからはドミノ倒しが如く次々と宣戦布告が行われた。
こうして始まった神聖連盟と協商連合の一連の大戦争は、その期間の長さから〝12年戦争〟と呼ばれた。途中、奇襲を仕掛けた神聖連盟側が優位だったものの、聖エトルシの南に隣接するセルジン帝国が突如として協商連合側に立ち参戦、拮抗状態となり、更に、西にある巨大なニザブル大陸にあるレアル帝国が神聖連盟に加盟したため、戦局は泥沼化した。
全ての国家が疲弊しきった聖暦1117年、レアル帝国がノルウィル王国に休戦協定を提案、ノルウィルは勿論のこと、この戦争に関わった全ての国家は受諾し、誰も何も得るものがないまま、戦争は終結した。
翌年、レアルの首都セレンにて各国の代表者が集い、神聖連盟加盟国の独立を全面的に認めること、戦時中に発見された新大陸ラナハイトは協商連合各国が自由に分割すること等が盛り込まれた条文に署名と封蝋を行った。
こうして、世界は少し変わった。特に、火山の多いラナハイト大陸からは希少な鉱石が大量に採れたため、協商連合の国の人々は喜んだ。それらを運搬すべく、多くの船が海を行き来した。
また、レアル帝国は既に獲得していたボルトリール大陸(ラナハイト大陸とは地続きなのだが、発見された年代と国が異なるため、便宜上2つに区分される)の大勢の先住民を奴隷として輸送し、神聖連盟加盟国に売りさばいていた。
これらの船は、航路上、ある海域を通過する必要がある。そこは、いつも暖かく、島が点在した海で、オーガルドと呼ばれている。本国で馬鹿みたいに働くより、その海で船を襲った方が何千倍も儲かると気付くならず者が増えるのは、ごくごく自然なことだったのだろう。