1話
朝、目が覚めて、仕度をして仕事に行く。
残業代の出ない会社で、日付が変わる時間まで業務をし、終電で帰る。
週に1回ある休みは、ほぼ丸1日寝る。
趣味という趣味もなく、恋人もいない。
仕送りや奨学金など諸々の支払いで、自由に使えるお金はそんなにない。
不満は、まあ、あったが自身が選んだ道。それほどではなかった。
不安はあった。このまま人生が終わっていくのか、とね。
世界の大半の人間の一人・・・それが私だった。
だけど、その日から違った。
だって、目が覚めたら・・・
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『どこだよ、ここ?』
いつも通り、終電で家に帰り寝る用意をして、寝たはず。
いつも通り、朝の目覚ましアラームで目が覚めるはずだった。
いつも通り、仕度をして都心にある仕事場へ行くはずだった。
けたたましいアラーム音で目が覚めるのではなく、休日の自然と目が覚める日常のように目が覚めた私の目の前に広がっていたのは、いつもの私の部屋ではなかった。
『ベッドで寝てたはずなのにね?』
よくあるテンプレのように、知らない天井が見えるとか、知らない誰かの顔が見えるとか、そういう状況じゃなかった。
『薄暗いってか、私の家の中にこんな場所はないぞ?』
電気がついていないから暗いわけではない。自身の部屋には窓があるため、起きたのが夜中でなければ朝日なり夕日なり、太陽の光が部屋の中へ入ってくるため明るいはずだった。
しかし、ここには窓はなく微かに扉と見えるものがあるだけで、殺風景というか辛気臭いイメージしか持てない部屋だった。
『とりあえず現状の確認しないと』
随分と『軽い』身体を動かして何もない部屋から出てみることにした。