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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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投球の行方

再び山形県H郡N町 羽前球場




 グラウンド整備も終わって、酒田ブルティモアズの選手たちが一斉に6回の表の守備に就く。サークル状に均されたピッチャーズマウンドに荒瀬が上がる。


「一応落ち着いて来たみたいだけど、グラウンド整備を挟んでいるからなあ…」

「あーどうだろ…、それはわかんないね…。徐々に掴みつつあるペースを離さなければそうだと見て良いけど」

「始まってすぐを狙われてまた悪い方に戻っちゃう可能性もあるのか…」


 4回から同じモーションで投球(ピッチング)練習を続けている荒瀬を見ながら、情野、平山、永田の3人が、6回の投球(ピッチング)の行方をどちらかと言うと心配していた。だがその心配をよそに、4回からコントロール重視で打たせて取る配球に変えていた荒瀬は、6回の表の村山キーストーンズの攻撃を早くも2アウトに打ち取る。


「あれ、ちょっと落ち着いた?」

「かもな…。アウト取るテンポが速い」

―そうかなあ…。あまりテンポ速過ぎても駄目なんだけどなあ…。投げ急ぎの元になるから。テンポは今のままで打たせて取る投球が出来れば大丈夫だと思うが。


 永田と情野が荒瀬の投球が落ち着いたと見る中、平山は1人、内心で警戒を続けていた。


ガキッ!


 そんな中、打ち損じた当たりがフェア地域へ飛ぶ。


3塁前へ飛んだ弱く低い打球。サードの広野に、キャッチャーの飛島、そしてピッチャーの荒瀬がライン際へ飛んだこの打球を見遣るが…、


「フェア!」

打球は切れずにライン上に止まった。内野安打で打者走者(バッターランナー)は1塁へ。サードの広野がすぐにボールを拾って目で牽制したので1塁でストップしたが、村山キーストーンズにとっては久々のランナーだ。


「あぁっ内野安打」

「うーん…、でも久々じゃね? ランナー置いたの」

「いつだっけ? …4回以来だっけか」




4回の表 村山キーストーンズの攻撃




 苦投が続いていた酒田ブルティモアズのエースピッチャー・荒瀬。この回からモーションと配球を変えてきたが、その変えたての初球を痛烈に弾き返される。ピッチャー返しのセンターへ抜けかけた打球にセカンドの上田がダイビングキャッチを挑むが、そのグローブを弾かれてしまう。ショートの遊佐がセカンドベース後方へ飛んだこの打球をカバーしたが投げられず、内野安打となった。


しかし荒瀬は、これ以降6回の表の2アウト目まで、8人連続でアウトにしていた。




6回の表 村山キーストーンズの攻撃




 そんな中、この回久々のランナーを2アウトから内野安打で1塁に置く。


「うーん…、こっから大崩れしないかな?」

「いや、自分の投球(ピッチング)が悪いわけじゃなくて相手の実力が自分の実力を上回ってのランナーだからね。しかも当たり自体は打ち取っている。ヒットなら相手が上だったから仕方無い、そう割り切れるバッテリーだよ」


 情野と平山の言う通り、4回以来の久々のランナーを背負った荒瀬。だが内野安打という記録と、平山が言う様に制球難が原因では無く打たれて背負った走者(ランナー)である。永田は走者(ランナー)を背負ったことを起点にまた失点を重ねるのではないかと心配していたが、平山は走者(ランナー)を背負った経緯を説明した上で、この状況なら耐えられると酒田バッテリーをメンタル面を中心に信頼していた。


パシィ!


「ストライーク!」

「本当だ…。落ち着いた投球をしてる」

「うん。投球(ピッチング)もそうだけど、何より表情に心の落ち着きが見える。自分でも何であんなに乱れているのかわからなかったんじゃないかな…、序盤の()()は」

「自分でやってることが、自分でもわからなかった…、ってか」


 依然荒瀬はコントロール重視の投球だったが、セットポジションから放たれたストライク投球(ピッチング)を見て、永田、平山、情野の3人は3人なりに徐々に荒瀬の特にメンタル面を信頼して来ていた。情野がそう言った後でペットボトルのキャップを開けてお茶を少し口に含んだ時、


キィン!


金属音が響く。


―おっ…、ああ…、大丈夫か…。


しかしバックに守られて3アウトチェンジ。一旦飲み終えたお茶のペットボトルのキャップを締めるその奥には、攻守交代で3塁側ベンチへ引き揚げる荒瀬ほか酒田ブルティモアズの選手たちが情野の視野に入っていた。


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