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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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82/167

えげつない…

 N`Carsのエースがリラックスモードに入って、相方が試合を観ているという中、山形スタイリーズのエースピッチャー・横山は6回の表も無得点に抑える。グラウンド整備で間が空いたとはいえ勝ちモードが近づくに連れて緊張してしまうものだが、それが微塵にも取れない。6回の裏はその横山にも打順が廻る。バッティングが良いとはいえピッチャーで、6対1という点差でどうするのか…、関川を筆頭に、N`Carsのメンバーが徐々に考え始めた矢先だった。


キィ―ン!


「お、おい、大きいぞ!」

「こっち来るぞっ!」


 先頭の笹原が初球を右中間に放つ。かなり大きい当たりに今日チーム3本目か!? という雰囲気が。


トン…!


「あっ、手前か」

「ワンバウンドか」

 しかし打球は1m手前の外野芝生で弾み、外野フェンスでクッション。外野からボールが返されるが笹原は2塁へ。

『先頭笹原、ツーベースヒットで出ました!! 今日も打った笹原、ノーアウト2塁。またまた追加点のチャンスを迎えました山形スタイリーズ』

『7番 キャッチャー 庄司』

―これ5点差あるけど…、下位打線で次ピッチャー、どうする…? 2回は横山がヒット、これを送って青木がホームランだったけどこの時は3点差だったから…、え!?

 この場面(シチュエーション)でどうするか、同じキャッチャーである相澤が推測していたが、その構えに驚いた。


 何とバットを横にして構えている。庄司は打席に入ると同時に、ヒッティングからバントの持ち方に変えていた。

―庄司にも打力あるのにここで送るか…。

―6回で5点差付けて尚これか…。

 相澤の隣で観ていた戸川も、同じく驚いていた。2人は庄司がとった構え、いや、山形スタイリーズの得点に対する姿勢に、えげつない…、という気持ちで観ていた。


コン。


 庄司は1球でバントを決めて、笹原が3塁へ。

『送りバント成功、1アウトランナー3塁。チャンスを拡げて次がピッチャーの横山ですが…、』

―どうするんだろうここ…?

―でも横山はバッティング良いからなぁ…。


『8番 ピッチャー 横山』

『あっ、横山そのまま打席に行きます』

―そのまま打席行った?

―てことは打たせて交代か? 7点目入ったらさすがにそれも考えそうなもんだが…。

『新庄ゴールデンスターズとしては何としても5点差のままで攻撃を抑えて、7回表の攻撃に備えたい場面』

『そうですね。ピンチを切り抜けて、次の攻撃に備える為にも、必ず無失点に抑えなければならない重要な場面』

―でも3塁側(向こう)のブルペン誰もいないよ?

―あれ? じゃあ最後まで横山で行かすのか?

 7点目が入るかより、相澤と戸川は、次の7回表の投手起用について推測していた。


キィン!


『サード正面、ランナーを見遣って…、これは動けない。1塁へ』


「アウト!」

『横山サードゴロに倒れて2アウト。ランナー動けず、2アウト3塁と変わります』

『そうですね。今のように点を与えず、アウトを積み重ねていくことです』

『9番 セカンド 谷沢』

 サードが打球を捕った際に目で牽制したので3塁ランナーの笹原は動けず、3塁釘付けに。しかしこの谷沢が繋ぐと次は今日一発を打っている青木である。

『新庄ゴールデンスターズは何としてもこの谷沢を抑えなければなりません』

『ヒットやエラーは勿論、四球(フォアボール)で繋がれても駄目ですからね…。2アウト目は取りましたが依然同じ状況ですので気を引き締めていきたいですね』

―これ抑えるか繋ぐかやな…。それだけで状況変わるで。

―谷沢に四球(フォアボール)で繋がれても塁1つ空いてるから青木を敬遠…、あ、駄目か。次の羽藤も青木と似たようなタイプのバッターだからできないか…。

 先程から試合に集中して観ていた関川と、青木と同じく下位から作ったチャンスで廻って来ることの多い萩原がどっちになるか、どういう策を取るか予想していた。


ガキィ!


『打ち上げた、打球はショートの後方! 回り込んで両手を大きく広げる…、』


パン。


―打ち上げたか…。

―打って繋ごうとしたか…。

「キャーッチ!」

『掴んで3アウト、ランナー3塁に残塁。谷沢ショートフライに倒れてこの回無得点』

 萩原と関川は答えを見るなり、その結果を踏まえつつそれぞれ思った。

―何も初球から打つ必要無いのに…。

―いや、甘々のストライクボールやったで。これならアイツらは絶対に狙う筈や。積極的に打つ姿勢、好球必打。ウチかてそやろ?

―あ、そうだったな…。

 自分たちのスタンスに重ねて関川に説得されて、萩原は納得した。6回の裏は得点こそ入らなかったが点差がついても尚得点を狙おうとする山形スタイリーズのえげつない姿勢を見せられた攻撃だった。

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