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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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山形スタイリーズの実力

 その裏、山形スタイリーズはランナー2人を置いて、先制のチャンスを迎える。


『4番 サード 武田。サード 武田』

『さあ先制のチャンスに4番の武田を迎えます。今大会まだホームランはありませんがチーム随一のパワーヒッターです』


―あれが武田か…。

―笹原も大きかったけど武田は人一倍大きいな…。上背もでかい、筋肉も…特に腕っ節がでかい。


 皆が武田に注目していた時、昼食を買いに行っていたマネージャーの井手が戻って来た。

「ただいま」

「お帰りなさーい」

「おい皆、真奈美ちゃんが昼食買って来てくれたぞー」

「皆にお握り1個とお茶1本ずつ渡るように買って来たから」

と言って、井手が買って来たコンビニの袋を開けた瞬間だった。


キィ―ン!!


「えっ!?」

「うわー大きい…」

「あー行ったぁ…」

「…アーハハハwww」


 あまりの豪快な金属音と大きな打球に、新庄ゴールデンスターズのレフトは只々見上げ、N`Cars含む観客は失笑するしかなかった。


ト…ン…!


『入った―――っ!! 大会第11号、3ランホームラ――ン!! 先制のバットは山形スタイリーズの主砲・4番の武田からでした! 3点先制!!』


 歓喜の中を、レフトスタンドの上段まで飛ばした山形スタイリーズの背番号5がダイヤモンドを廻る。今日で3連投のエースピッチャーに、主砲から先制の3点のプレゼントが入った。


『レフトの上段まで届く特大のホームランでした』

『凄いバッティングでしたね。いや、元々体は大きいんですが物凄いパワーを見せて貰いましたね』


「…えーとそれで何だっけ」

 武田のホームランに皆見とれていたが、永田が我に返ったのを筆頭に他のメンバーも次々と我に返った。

「お握り1個とお茶1本ずつ。その前にこれね」

と言って井手はコンビニの袋からウェットティッシュを取り出した。これも同じコンビニで買って来た物だ。

「皆手ぇ拭いてからね」

と指示した永田は、集団の1番後方に下がった。メンバー全員が済ませてから自分も熟す様だ。

 N`Carsのメンバーは全員ウェットティッシュで手を拭いてから、お握り1個とお茶1本ずつを貰って各自昼食にありついた。

 全員がお握り1個とお茶1本ずつを貰って、永田も手を拭こうとした時だった。


キィ―ン!


「えっ!?」

「また行ったか!?」


 今度は6番・笹原がセンターへ大きな当たり。新庄ゴールデンスターズのセンターがフェンスまで追っていくが…、グラウンドの方向を向いて足が止まる。


パン。


『3アウトチェンジ、最後はセンターフライに終わりました。しかしあれだけの大きな当たりを見せた笹原でした』


 センターフェンスまで120mある羽前球場。そのセンターフェンスのもう1、2mと無い場所まで飛ぶ大飛球だった。


 笹原の大飛球に皆手が止まっていたが、永田は再び我に返って手を拭いた。そして、残りのお握り1個とお茶1本を貰って、自らも昼食にありついた。同じタイミングで、1回裏のスコアボードには3が灯った。


―うわ、大丈夫かな…。初回から山形スタイリーズさんに凄いもん見せつけられたよ…。凄いスイングの連続に3連投って聞いてた割には安定したエースピッチャーの立ち上がり…。こりゃ代表決定戦だけど新庄ゴールデンスターズさん苦しいぞ…。


 永田は初回3対0という数字とその攻防の様子を見て、ワンサイドゲームの懸念を見せていた。実際、2回表のエースピッチャー・横山のピッチングは、武田に3点の援護を貰ったこともあってか、ここも安定したピッチングで無得点に抑えた。


 新庄ゴールデンスターズとしては強打の山形スタイリーズが相手である以上、これ以上点はやりたくない。しかし2回裏は、その横山に廻って来る。


『8番 ピッチャー 横山。ピッチャー 横山』

『1アウトで打席には横山。今大会初戦となった2回戦でバックスクリーンへのホームランが1本、続く3回戦でも最初の打席で先制の2点タイムリーを打っています』


―バッティング良いじゃん…。これが8番にいるってどうなってんだこれ…。

―立ち振舞いからええオーラしてるな。ええバッターやで。


 携帯ラジオにイヤホンを繋いで聴いている都筑と関川がそれぞれ横山に対して内心でこう思ったのを筆頭に、他のメンバーも横山のバッティングの巧さに注目し始めた。


カキ―ン!


『バッティングも良い横山、センター前ヒットー!!』


等とやってたら、速攻でチャンスメイクをした横山。1アウト1塁とチャンスを作る。

『今日も打ちました横山。これで3試合連続ヒットです』


 その横山を2塁へ送って、2アウト2塁と追加点のチャンスで早くも山形スタイリーズは打順2巡目を迎える。


『1番 レフト 青木』

『さあこちらも好調、俊足巧打の1番青木。前の試合でもタイムリーを打つ等巧いバッティングに注目が行きがちですが長打力もあるバッターです』


―小柄に見えるけど第1打席を見る限りスイングは良さそう。

―これが1番に居るって結構厄介やぞ…。俊足巧打で長打力有り、東根チェリーズの佐藤 錦やそれこそさっき戦った鶴岡クレーンズの羽黒 兼人にそっくりな雰囲気やな…。


 本職が外野手と内野手の違いはあるが、今バッターボックスに立っている青木は、都筑の言う通り小柄に見えるが、関川の言う通り雰囲気はN`Carsが嘗て戦った東根チェリーズの佐藤 錦や鶴岡クレーンズの羽黒 兼人と似ていた。


 青木にも、そんな雰囲気があった―、等と見ていたら、


キィ―ン!!


 左バッターから放たれた鋭いスイングの打球が、こちらに飛んできた。


『右中間へ大きな当たり――、センターライト追っていく―――っ!!』


 新庄ゴールデンスターズのセンターとライトがこちらに走って来る。しかし、


―え…? どうせ右中間のフェン直じゃないの…?


と、1人ペットボトルのお茶を呑気に飲んでいる人が。そこへ、


ドスッ。

「あぐっ…」


右中間のフェンスを越えた打球が、ダイレクトで直撃した。


『入った―――っ!! 今度は1番青木に大会第12号の2ランホームラ――ン!! 1回の武田に続き青木も打ちました!! 山形スタイリーズ、序盤からの一発攻勢で2回裏で早くも5対0!!』


 青木がホームインして、ホームプレートの後ろで待っていたネクストバッターの羽藤とハイタッチしようとした時、その羽藤がライトスタンドを見ていた。


「どうしたの?」

「いや…、さっきお前がホームラン飛ばした先で…、人に当たったらしくて…」

途中指を指しながら、羽藤が青木に説明する。

「うわマジかよ…大丈夫か…」

「でもオレ見えちゃったのよね…、背番号が9だってことに…」

「えっ…」


 ライトスタンドでは、打球を受けて蹲っていた人が、ゆっくりと起き上がっていた。打球を受けたのは他でもない、N`Carsの永田だった。


「大丈夫?」

「あーうん…いてて」

「どこに受けたん?」

「…鳩尾」

「あーこれはアカンヤツや」


 都筑と関川が永田に声を掛けたが、どうやら大丈夫そうだった。


「どうやら起きれたみたいで良かった」

「うん…。でも申し訳無いことしたな」

「だな…、でも仕方無い。早くベンチに戻ったほうが良いよ」


 青木と羽藤もそれを見るが、青木はどこか申し訳無さそうにしていた。羽藤に説得されて、青木はベンチに戻った。


 青木の1発はあったがその後は抑えて2回の裏終了。代表決定戦ながら既に2本のホームランで5対0という、山形スタイリーズの実力を存分に見せつけられた序盤だった。




 さて、打球を受けた永田ですが、本人は大丈夫でした。しかしながら昼食について、お握りはその前に完食していたものの、お茶は打球を受けた際にペットボトルから半分以上が零れて、外野席に植えられている芝への水分になりましたとさ。


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