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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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試合観戦 ~新庄ゴールデンスターズ 対 山形スタイリーズ~ 試合開始

 羽前球場の外野席は、全面緑一面の芝生に覆われている。その芝生に覆われた緩やかな傾斜の席に、N`Carsのメンバーは着き次第座った。事前の打ち合わせ通りライト方向に座ったので…、


「あれ? N`Carsの連中じゃない?」

「そうだね」


3塁側ベンチの山形スタイリーズのメンバーからは、確り見えていた。真っ先に気付いたのはトップバッターを打つ青木で、その隣で話しかけたのが2番の羽藤だ。


 グラウンドでは、係員によるグラウンド整備が行われている。大勢の観客と、これから第3試合を控える新庄ゴールデンスターズと山形スタイリーズのメンバーがそれぞれ観客席や各塁側のベンチで待機している中、係員が持つグラウンド整備用のトンボとブラシで丁寧に均される。トンボやブラシがグラウンドを均した直後、微風もあって砂煙が一瞬巻き上げられるが、それもすぐに落ち着いた。


 次に、グラウンドが固くなり過ぎない様、全体に水を撒く。そのままだと怪我の元となるので、こうしてグラウンドをある程度柔らかくしてプレーし易いようにする。


 外野席の前方に座っていた永田は、体を伸ばすついでに目線を右に遣って、バックスクリーンに書かれてある両チームのスターティングメンバーを見る。両チームとも、スターティングメンバーは初戦だった2回戦から変えていない。第2試合の終了後に声を掛けてくれた平山や笹原、そこに居合わせた横山、そして直接会いはしなかったが先程N`Carsがライトスタンドにいることに気付いた青木、羽藤の5人も、皆スタメンである。


 もう1度体を伸ばしながら今度は左の後方まで目線を向けたが…、


「あれ?」

片山と関川がストレッチをしているのが視界に入ったが、それよりも1人いないのだ。


「監督、真奈美ちゃんは?」

「昼飯買いさ行かせた。最初昼飯は帰ってから各自で摂らせるつもりでいたがら、連絡してねがったんだわ…。試合時間が伸びた辺りがら考え始めて、万が一負けでも何らかの形で移動中に摂らせようか、って思ってて、で勝ったがら、試合を観るついでに、昼飯も取ってしまいましょう、って決めたわけ」

「あー成る程…」

「で、おめ昨日言ってだ通りの行動にこの後なるけど、大丈夫か?」




昨夜 永田の家




 家でゆっくりしていた永田の携帯電話が鳴る。ガラパゴス携帯電話を開いて画面を見ると、徳山監督からだった。


「はい?」

『永田が? 徳山だけんどよ』

「はい。お疲れ様です」

『明日の日程なんだけんど…、勝って閉会式出ることさなったら、おめだけ別行動になるぞ』

「別行動ですか?」

『ああ。代表決定戦4試合終わった後に閉会式あんだけんどよ、主将(キャプテン)だけが出ることになってんのよ。おらだつ第2試合で、閉会式が第4試合の後だがら、そこまで他の皆を待たせるのも申し訳ねぇな、って思うわけ』

「ああ…、はい」

『そこで帰りだけおめ別行動なるけど、大丈夫か?』

「あ、はい。帰りは自分で何とかするんで」

『そうか。夜中に悪がっだな』

「いえ。こちらこそ態々夜中にありがとうございました」


 そう言うと、永田は電話を切って、ガラパゴス携帯電話を折り畳んだ。そして、明日の移動費を賄えるだけのお金を持って行くことにした。




再び山形県N町 羽前球場




「はい、大丈夫です。貴重品も持って来たので…」

「だば良い」


 その間にグラウンドでは水を撒き終えて、ライン引きが行われていた。ラインカーを押した係員が、ライトスタンドのすぐ近くまで来ている。


「もう終わるじゃん」

「ラジオ聴く?」

「ストレッチ終わってへんから先聴いといてや」


 都筑が尋ねたがストレッチ中の関川にこう返されたので都筑は1人、関川が持って来た携帯ラジオに自分が持って来たイヤホンを挿してラジオを聴き始めた。関川が片山とのストレッチを終えた後、スムーズに聴けるように予め動かしておいたのだ。勿論自分のも持って来ているが、それは関川がストレッチを終え次第、自分のイヤホンをそっちに挿す。


『グラウンド整備が終わって、係員が引き揚げます。それと同時に、今度は第3試合を務める4氏審判がグラウンドに登場しました。両チームの選手は既にベンチ前に整列しています』


 綺麗にされたグラウンドに、新庄ゴールデンスターズと山形スタイリーズのメンバー、合計36人が向かい合うように両チームのベンチ前に整列する。更に4氏審判も、通用口の前に整列する。


「行きましょう」

「っしゃあ行くぜ!!」

「おー!!」


 審判の掛け声とともに、両チームの選手も大きな声を響かせて一斉にダッシュする。ホームプレートの前に集まるようにして並んだ合計40人が決められた方向を向かい合う。


「これから代表決定戦第3試合を始めます…、礼!」

「お願いします!!」


 両チームの間に入るように並んだ4氏審判のうち、球審の号令で両チームの選手が脱帽の上相手選手と4氏審判に挨拶・一礼する。


 先攻の新庄ゴールデンスターズは先頭打者と2番バッター、1・3塁のベースコーチ以外の選手は1塁ベンチ前で円陣を組む。後攻の山形スタイリーズのうち、守備に就く9人はそれぞれのポジションにダッシュして、残りのメンバーのうち外野のキャッチボールに付き合う1人を除いたメンバーは、3塁ベンチ前で声出しと内外野のボール回しに使ったボールの回収を務める。


 ライトを守る笹原が、フェンス越しにN`Carsのメンバーのすぐ近くまで来た。


「結構でかいね笹原…」

「うん…上背も確りあって、筋肉も上半身、下半身ともに締まってる」

―凄いなぁピンで見てもこれなのに…、皆これと同じ位強いオーラを纏っているってどんだけ強いんだこのチームは…。


 萩原と小宮山の会話を聞いた永田は、内心でそう思った。それでいて親切なんだからなあ…、と、先程同じメンバーの平山とともに自分に声を掛けてくれた時のことを思い出した。


 試合開始を告げるオートマチックサイレンが鳴る。山形スタイリーズの先発マウンドはエースピッチャーの横山。今日で3連投目ということで、連投による疲れも心配されたが、立ち上がり、1回表の新庄ゴールデンスターズの攻撃を危なげなく3者凡退で抑えた。


「終わったで。健」

 イヤホンを外すジェスチャーを見せながら、ストレッチを終えた関川が都筑の元に寄った。それを見て都筑はイヤホンを外して、自分が持って来た携帯ラジオに付け替える。関川も自分のイヤホンを携帯ラジオに挿して、2人とも音量を調節して、ラジオを聴き始めた。


 グラウンドでは山形スタイリーズのメンバーと入れ替わるように新庄ゴールデンスターズのスターティングメンバーが守備に就く。その間にバックスクリーンの1回表のスコアボードには0が灯った。


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