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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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69/137

均衡破った!

『これから延長11回に入りますが、今大会延長戦は2度目。前回は2回戦の最上ノーストップズ 対 南陽サウスポジティブズの試合で、延長10回3対1で最上ノーストップズが勝利したというゲームでした。11イニング以上の試合というのは…、ですから今大会史上最長ということになりました』

『試合前はN`Carsの守備が悪いこともあって鶴岡クレーンズ有利と見られていたんですが…、蓋を開けてみれば平吹・片山両投手の好投でがっぷり4つの好ゲームになってますね。ただこういう試合だと試合が重くなりますから、そうなると一旦動き出すとそれに合わせてもう一方も動き出す、つまり点が入るとその直後に点が入り易くなって、結果点の取り合いになるかもしれません』


「随分長い付き合いになってしまったな。ただウチは良い打順、向こうも良い打順だ。さすがに4巡もすればお互いの球に慣れて来ている筈だ。ということは向こうはバッティングのチームだからそろそろ本気で打ってサヨナラを狙いに行く筈だ。向こうに点を取られる前に、こっちが先に取れるだけ点を取ってしまえ。良いな!?」

「はい!」

「櫛引」

「はーい。…上位陣は絶対に塁に出るから、下位も続けよ。皆で…、勝ち越すぞ!!」

「おー!!」

―兼人と亘が出たらオレも続く。皆で続いて繋いで、大きく勝利を引き寄せるんだ。


「またデカいヤマが来てもうたな」

「なんぼ来たかて勝つまで辛抱するで」

「よっしゃその意気や。多分ベストボール連発のリードになるけど、皆で立ち向かって倒して行こや」

「うん」

―開次があれやったら皆も前向きに行ける。


『11回の表、鶴岡クレーンズの攻撃は―1番 ショート 羽黒』

「プレイ!」

『お互い1番から始まるこの回。今日ホームランを打っている羽黒を起点に勝ち越せるか鶴岡クレーンズ』


キィン!


『初球から行って、三遊間、抜けた―っ!』

「やった―――っ!!」

「兼人ナイスバッティング!!」

「良し続くぞ!」

『先頭羽黒出ました! チームとしては2回以来の3本目のヒット、ノーアウトランナー1塁!』

―狙って来た…。タイミングもばっちりやった上に、スイングも確りとストレートの打ち方やった。

―愈々か鶴岡(オタク)の皆さん…。本気で来るタイミングはここや思ってたからなオレも浩介も。

『さあ久々のヒットでチャンスを作りました鶴岡クレーンズ!』

『2番 センター 藤島』

『さあ今日ノーヒットの藤島ですが1回戦では逆転3ラン本塁打を打つなどこの大会好調。好打者が続くだけにバッテリーも気を抜けません』

『そろそろ1本が欲しいタイミングですからね…。藤島選手が打つことで、この試合のムードも変わって来ますよ』

―今日は4の0やねんけどスペックは羽黒や平吹と同レベル…。1回に羽黒に打たれた時はホームランやったから開次も開き直れたけど、今回はヒットやからなぁ…。

―なーに、そのほうがええやろ。ランナー居ったほうがホンマもんの投手(ピッチャー)いうもんが試されるわけで、何より皆のレベルが向上するで。皆もランナー居った時の守備が出来るから。

―よっしゃ…。開次、全球厳しいコース行くで。

―OK。


『バントの構えはありません』

バシィ!


「ストライーク!」

『まずは真ん中低めギリギリに入れて来ました』

―うわ…、随分厳しいな…。

―ランナー1塁であれだけ厳しいリード…。まあそうか、オレが還って来ちゃあ拙いもんな。


バシィ!


「ストライクツー!」

『スライダー、アウトローいっぱいに入れて来ました!』

『あれだけギリギリのところに入れられるんですねえ…。100球近く投げて尚このコントロールとは大したものです』

―外野を越えれば兼人も還って来れる。その為にはこういう時こそストレートをコンパクトに逆方向へ…、ん?

『今渡邊さんから100球近いというお話がありましたが片山投手次が96球目。100球も近いという状況です』

―外野越えなくても良いのか…。ライトの肩そんなに強くないから、ライトへ打てば1・3塁で繋げるか…。だったらアウトコースは逆方向へ、真ん中からインコースは右方向へ、但し何れもコンパクトに振って。

『1塁ランナーは俊足の羽黒。長打が出れば勝ち越しも期待できますがバッテリーは追い込んでいるという状況』


キィ―ン!


『サードの頭上、フェアだ! 長打コースだーっ!』

「よっしゃ―っ!」

「兼人3つだ! コーチャー招き入れろ!」

「俊和3つや! 涼中継ラインに入れ!」

『俊足羽黒は3塁へ!』

「涼ノーカットだ!」

『良いボールが還ってくるが…、』


「セーフ!」

「セカンドだっ!」

『タッチは出来ない! そしてバッターランナー藤島も2塁へ―っ!』


「セーフ!」

『オールセーフ、ツーベースヒット!! 藤島今日初ヒットはツーベースヒット、鶴岡クレーンズこの試合初めての連打でノーアウト2塁3塁と一打勝ち越しのチャンス!』

「兼人、亘、ナイスバッティング!!」

「ナイスラン!!」

「さあここ一気に決めるぞ!」

「櫛引続けよ!」

『藤島選手が打ったことでムードががらりと変わりましたね。鶴岡クレーンズはこのムードそのままに勝ち越せるか、反対にN`Carsは耐えられるかが鍵です』

『3番 レフト 櫛引』

『内野ゴロでも1点、俊足2人ですから1ヒットでも十分2人生還は有り得ます』

「タイム!」

『N`Cars、タイムです。背番号14番の戸川が…、再びマウンドに向かいます。守備のタイムです』


「監督が、ここは勝負だって」

「満塁でもホーム取れる2人やからな」

「歩かせても意味無いちぅこっちゃろな」

「で、内野陣は全員ボールファースト。その後の状況判断は浩介を中心に頼む」

「ああ」

「で、外野は…、定位置なんだけど2人目警戒で」

「どゆこと?」

「頭抜かれるの嫌なんやろ。越されば2人還って来てまう上に何よりあの櫛引も外野浅めの守備で片付くバッターと違うで」

「開次の言う通り」

―あ、そゆこと。オレデカいだけのポンコツだからさぁ…。

「兎に角それで行こう」

「OK。良し皆、このピンチ凌ぐで!!」

「おー!!」

「開次、投球は全部3塁側プレートから」

「OK」


『戸川が戻ります。内野陣も守備位置に戻って、少し遅れて関川も戻りました。延長に入ると1イニングに1度、攻撃・守備それぞれのタイムを使うことが出来ます。N`Carsは延長8回にも守備のタイムを使いましたが試合が次のイニング、つまり延長9回以降に入りましたのでそこで新たにもう1度ずつタイムを使う権利を得ることが出来ました。次に守備のタイムが使えるのは延長12回以降となります』


「守備のタイム1回!」

「はい1回」

『バッターは 櫛引』

「11回表、ノーアウト2・3塁。プレイ!」

『今日ノーヒットですが一打勝ち越しの場面で今大会好調の櫛引』

『内外野は何れも前には来ていませんね…、少なくとも1点は覚悟という判断でしょう』


ドォン!


「ストライーク!」

―うわ、凄いクロスファイア…。ストレートでもここまで喰い込ませられるんだ。


―2球目…。打っ…、!!


バシィ!


「ストライクツー!」

―え、入ってたのか…。

『初球、2球目ともインコースへ、それもストレートとスライダーでバッターの膝元に喰い込むようなボールを2球続けました。2球目のスライダーに至っては思わず避けた櫛引』

―そうか…。あのバッテリー3塁側から投げてるから、元々クロスファイアで左バッターには自分の体に向かってくるように見えるのにそこにスライダーで更に喰い込ませたからな…。櫛引が避けるのもわかる。

―うんうん。

―兼人は何に納得してるんだ? 亘も頷いてるけど…。まあ良いや、オレの仕事はこの2人を還すこと。それに集中だ。

―ストレートとスライダーはこの試合でも結構多投しとるからな。次はカーブ…、と言いたいとこやけど縦カーブじゃクロスファイア効かへんもんな…。となると()()か…。

()()な。

―これも3塁側からやぞ。

―わかっとるがな。言うて全部3塁側から投げえ言うたんはそっちやん。

『追い込んで3球目ですが…、キャッチャーもう1度インコース』


―カーブ。引き付けて…、!?


パァン!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振! インコースから大きく内側に喰い込む緩い球に掠らず!』

「よっしゃ!」

「ナイスボール!!」

「1アウトやで皆!」

「おー!!」

―…今の球、オレがずっと待ってた…、あの球か…!? 横のカーブ。

―横のカーブだったね。しかしあそこから投げてあれだけ曲がるなんて…。

―ここまで曲がらせたか…。捕った位置から見たらもうマウンド半分以上見えへんで。

『最後は横のカーブですね…、しかしあれだけ喰い込ませられるって…』

『凄いカーブでしたね。横のカーブ自体は前の試合の最上ノーストップズ戦でも投げていますがその時は3番満沢、4番東法田と何れも右バッターに対しての投球でした。ですから左バッターへの投球は初めてになりますが…』

『このピンチの場面でこのボールを投げられるんですから凄いですよね。連打で押せ押せのムードが鶴岡クレーンズに行きましたが、今の三振で今度はそのムードがN`Carsに行きましたね』

『しかしそのムードが再び戻るかもしれません。次はパワーヒッターです』

『4番 キャッチャー 温海』

―配球変えへんぞ。同じく3塁側からや。

―さっき投げたあの球を狙うんだったら…、

「1球待て! 温…、」


ガッ!


『あっとこれは外角のストレートに差し込まれて…、』


パッ。


「キャーッチ!」

『セカンド梶原への小フライ。速い球1球で打ち取りましたN`Carsバッテリー、ノーアウト2塁3塁から2アウト2塁3塁にこぎつけました』

―あの球はどう見ても決め球。まず投球頻度が少ない、そしてここ1番に追い込んだ後に投げている。今も櫛引に対して追い込んでから投げた。そして投球頻度の少ないそのボールを投げて目線をそっちに注目させた後に、次のバッターを早いカウントで打ち取る配球だったから、狙うなら追い込んでからで、それまでは違う球を狙いなよ…。何やってんだ温海は…。

『5番 ピッチャー 平吹』

―ごめんな良裕…。うちの4番が攻守に役立てなくて。

―良いよ兼人が謝らなくても。寧ろあの良いピッチャーを打てるチャンスがもう1回廻って来ただけでも嬉しいよ。

良裕(アイツ)本当ポジティブだな…。

―さあ来い言う顔してるな。ホンマにええピッチャーを打ちたい言う気持ちなんやろなきっと。さてと…、あーもうこれはクロスファイアアカンわ。足開いて待っとる。策取られたな。

―え、策変えるん? アウトコースからでも別にええのにオレは…。

―いや、足開いて待っとるからクロスファイアして来たボールを間違い無くカモにするで。元々そない小細工したかて効かんバッターやからな。開次…、いっそプレートは真ん中を踏めや。

―真ん中て…、まさか…、真ん中ストレートか?

―そやで。

―そうか…、何やっても効かへんかったらいっそウィニングショットで攻めたほうがええか。それこそ勝利への突破口なんやろな…。

『2アウト2塁3塁、今日は内野安打1本だけですがバッティングも良い平吹を迎えます』


―行くで平吹!!

―来い片山!


―ええバッターはオレがカモにしたる!!

―良いピッチャーを打って…、勝つ!!


カキ―ン!


『初球攻撃、ピッチャー返し、センター前―――っ!!』

「抜けた―――っ!!」

「コーチャー廻せっ!!」

「瞬バックホームや!!」

『1人ホームイン、2人目も3塁を廻った!!』

「スライディングで突っ込め亘!!」

「浩介捕れ――っ!!」

『萩原バックホーム、良いボールが還って来た―――っ!!』


バシィ!

ズザアッ!

『タッチプレーどうだっ!?』


「アウトー!」

『間一髪アウトー! 3点目は成らず!』

「ああ…、でもナイスラン!」

「あと1歩だったな…」

「良裕ナイスバッティング!!」

『しかしエース平吹自らのタイムリーヒットで勝ち越しに成功しました鶴岡クレーンズ!』

「瞬ナイスボール!!」

「ええボールやったで!」

「浩介ナイスキャッチ!!」

『その一方でN`Carsのセンター・萩原の素晴らしいバックホームがありました!』

『お互いが攻守で良いプレーを見せた、良い場面でしたねえ』

『お互い見事な攻防を見せた延長11回の表でした。しかしこの回鶴岡クレーンズがエース平吹のセンター前へのタイムリーヒットで勝ち越しに成功。N`Carsのセンター・萩原のバックホームによって3点目とはなりませんでしたがそれでも2対1、鶴岡クレーンズが1点を勝ち越しました。延長戦にまで縺れた代表決定戦第2試合も愈々決着が付くか、これから延長11回の裏を迎えます』


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