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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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66/136

わかっていて尚…

「向こうも好打順だったがうちも好打順だ。ランナー1人出ろ。それを足掛かりにサヨナラさすっぞ。良いな!?」

「はい!」

「良ーし…、サヨナラにするで!!」

「おー!!」

「涼、永田、和義、3人のうちの誰でもええから塁に出えや!」

「おー!」

―っし…、やってやっか…。

「任しとけっ!」


『こちら9回の裏のマウンドにも平吹が上がります…。8回まで65球、11個の三振を奪って来た平吹ですが渡邊さん、まだまだ行けそうな気がしますねえ?』

『はい。球数が少ないとは言え4連投目ですが余裕のある雰囲気です』

「この回上位だからな」

「覚悟の上さ。どっちにしろ9回か10回の何れかで最後のヤマと対戦するだろうから…」

―アイツらか。

―うん。

『9回の裏、N`Carsの攻撃は―2番 ショート 小宮山』

『さあ今日四球(フォアボール)はありますが未だヒットの無い小宮山から』

「プレイ!」

―安全パイそうに見えるが出せばサヨナラのランナーだ。安パイこそ確実に抑える―良裕が言った言葉の意味が漸くわかる気がする。

―温海のヤツ真剣なリードだな…、ストレート?

―速い球で抑える。低めに、斎か兼人に打たせる。

―わかった。


キィン!

ドシィ!


「キャーッチ!」

『初球から行っ…、たんですが…、サード斎の正面。小宮山サードライナーに倒れて1アウト』

『鋭い当たりでしたね。今日はまだ1四球(フォアボール)のみで結果は出ていませんが今大会この前の打席まで通算9打数5安打と当たっているだけのことはあります』

「1アウト1アウトー!」

「良裕こっからな」

『3番 ライト 永田』

『ただこのチームで最も深刻なのがこの人…。キャプテンでありながら通算12打数ノーヒットと良いところがありません』

―ノーヒットであっても表のウチの攻撃で無得点だった以上、出せばサヨナラのランナーというのが続く。良裕にはしんどいだろうがこの回はパーフェクトで締めるぞ。


バシィ!


「ストライーク!」

『初球から振って来ます』

『姿勢は良いんですけどねえ…、どうしてか結果が付いて来ないですね』


ドシィ!


「ストライクツー!」

『ストレートを2球続けて空振りで2ストライク』

『何れも140km/h台後半のボールですね…こちらも球威は全く変わっていません』

―ストレートに対しては良いスイングしているんだけどなあ。

永田(コイツ)はストレートで十分。寧ろ次がストレートじゃ通じないからまずここは3球全てストレートで行く。良裕、次も。

―うん。


バシィ!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振!』

―バット短く持って尚駄目か…。当たってフェアグラウンドに飛べば何とかなると期待したのに。

『バットを短く持って挑みましたが掠らず。これで永田は通算13打数ノーヒット、一方マウンド上の平吹はこの試合12個目の三振を奪いました』

「やー、申し訳ない」

「いや…、まだ和義が居る」

『4番 ファースト 三池』

『2アウトで今大会2本塁打(ホーマー)の三池。通算でも12打数4安打ですがここ2試合当たっていません』

『スライダーに三振という打席が続いてましたもんね…、ただ先程はストレートを捉えてあわやホームランかという大きなレフトフライでした』

―というバッターだ。ストレートには合うけどスライダーには合わない。良裕、3つスライダーで行くぞ。2球目以降はサイン出さない、()()1本で行く。

―うん。


パァン!


「ストライーク!」

『スライダーから入って来ました』

『やはり合ってない球種から入って来ましたね…ストレートは一発長打の恐れがありますからスライダー中心の配球で来ると思いますよ』


バシィ!

「ストライクツー!」

―形は何でもええ…。和義が出たら…、このチャンス取ったる。オレと開次で平吹(アイツ)をぶっ叩いて締めや。

『この回で70球を超えました平吹投手。現在71球です。三池に対してはスライダー2球で追い込んで2ストライク』

『N`Cars打線が積極的に振っているのもありますがこちらも球数少なく来ていますね』

『ここもテンポ良く追い込んで3球目』


バスッ。


『ああっ!?』

「ストライクスリー! ノーキャッチ!」

『ああっと、バッターは振っているがキャッチャーボールを捕れない!』

「走れ和義―っ! 1塁や!!」

『ボールはバックネットへ、温海が追う間に三池は1塁へ!』

「セーフ!」

『今拾ったが投げられない! 三振ナットアウト、所謂振り逃げで三池塁に出ました!』

『3球で決めに行ったスライダーだったんですが…、十分に捕球(キャッチング)出来ませんでしたね』

『記録は打者三池に三振、投手平吹に奪三振が1個ずつ、またキャッチャーの温海が捕れる筈のボールを逸らしてしまったことによる振り逃げですので温海にパスボールが1個それぞれ為されます』

『…勿体無いですね…、捕れる範疇のボールだっただけに…』

『5番 キャッチャー 関川』

「ねえ、自分で要求しといて逸らすは無いんじゃない?」

「悪い」

「良いから兼人。この後締めるから」

「うん」

―コイツサヨナラのランナー出てんのに良く落ち着いていられるな。

―そうか兼人からもサイン見れるのか…、てか見えるのか。いつもオレらのやり取り見てるもんな。後ろ向いてるから気付かなかった…。だからああ話したのね。

『さあN`Cars、5回以来のランナーはサヨナラのランナーです。このチャンスを活かせるか』

『その5回はランナー2塁まで進めたチャンスを得点に結び付けましたからね…、況して勝負強い関川選手ですから期待したい場面ですよ』

『一方の鶴岡クレーンズ、こちらも味方のミスで許してしまったランナー。どう切り抜けるか』

『平吹投手の前に得点圏にランナーが行ったのが5回の1イニングだけですので、得点圏にランナーを進めること自体が難しい投手(ピッチャー)だと思います。そうなるとミス1つで簡単に崩れるような投手(ピッチャー)ではないと思います』


ドォン!


「ストライーク!」

「!?」

『初球ストレートを空振り。しかし今のはこれまで以上にボールが伸びているんじゃないですか、渡邊さん?』

『そう…ですね…、148km/hと出てますがそれ以上にボールが伸びているように見えました…』

―良裕のヤツ随分思い切ったボール投げて来るな…、思い切って攻めたほうが良いってか。

―変化球でちょこまかと逃げたって順応される。それなら最初からウィニングショットで勝負してこそ勝利への近道だ。

―へえ…、随分ええボールやな…。それならこっちもフルスイングで応えるか。逃げる意図0やったからこの打席、このバッテリーは3球全てウィニングショット(ストレート)や。


ドォン!


「ストライクツー!」

『これも空振り。チームで打率・打点トップの関川が平吹のストレートに当てられません』

『それだけ素晴らしいボールなんでしょうね。わかっていても打てないという…』

―凄いスイング。こんなに良いバッターを備えているチームが、何で今年になって漸く出て来たんだろ?

―読みはストレートやったけどな…。やっぱわかっていて打てるもんと違うか、平吹(アイツ)の球は。

『先程渡邊さんから勝負強いというお話を頂きましたが関川は今大会通算ここまで11打数7安打、4打点はチームで打率・打点ともにトップの数字です』

『うち本塁打(ホームラン)1本、2塁打3本ですからね…、サヨナラのランナーを置いてこれだけのロングヒッターを迎えていますから追い込んでいるとは言え抑えるのは難しいかもしれませんが平吹投手の球も延長に入って尚良くなっていますから打つのも難しいかもしれません。お互いに難しい状況、どう抑えてどう打つか』

―抑える。

―打つ。


ドォン!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『3球目もストレート、空振り三振! 最後も148km/hの速いボールでした!』

『素晴らしいボールでしたね。ただ関川選手も3スイングとも凄いスイングでしたので、お互いに速いボールと凄いスイングで挑んだ、素晴らしい対決でした』

―凄ぇな。…ただ本当にホームラン打たれるかもしれないな。最後確かチッ…て、微妙に金属バットに掠った様な音が聞こえた気がしたな…。

―配球は読み通りやった。…けどわかっていて尚捉えられへんボールがある平吹はホンマ凄いわ…。()()()はあったけどな。

―何でオレに廻らへんのや。決めるつもりやったのに。

『3アウトチェンジ、延長9回の裏も無得点。平吹投手はこの回振り逃げを含めますと1アウト後、永田以降のクリーンアップから3者連続3球三振を奪いました。これで平吹投手のこの試合の奪三振は14個、両チームの先発出場メンバーでまだ三振が無いのはN`Carsの片山のみとなりました』


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