後半戦開始!
『グラウンド整備が終わって、これから6回の表に入ります。整備されたての綺麗に平らに均されたグラウンドにN`Carsの守備陣が就きます。サークル状に整備されたグラウンド、その中心部のマウンドに立つのは好投を続けるエース・片山。5回まで投球数は35球、打たれたヒットは僅か2本、失点は1。初回の羽黒の初球先頭打者ホームランによる1点で、これにより片山投手は今大会初めて自責点を記録しましたが、それでもその1点のみ。奪った三振は7個、与えた四死球はありません。そして2回の途中からパーフェクトピッチングを続けているという片山です』
『非常に良いピッチングですねえ…。格上の相手にも全く物怖じしないという雰囲気が、彼のピッチングから感じ取れます』
「同点に追い付いた直後。グラウンド整備があって、落ち着いとる筈や。冷静な判断と強い気持ちで、お前にかかってくるで」
「そらわかっとる。目の色変えて挑む気やからな向こうは。鶴岡もオレらと同じ、負けん気の強いヤツらばっかなんやな…」
―開次がわかっとるんやったら良し。
『6回の表、鶴岡クレーンズの攻撃は―9番 ファースト 上肴』
「プレイ!」
『3回の第1打席では外一杯のカーブに見逃し三振に倒れた上肴から』
―そのカーブにはもう残像がある筈。見逃し三振はコイツだけやったから、見逃した球のイメージとしても嫌でも残る筈や。
―カーブ狙っとるんと違うの?
―うん。せやからそのカーブで打たせる。但し芯を外して、ボール1個分低めに。
―狙い球を敢えて投げて打たせるって大分リスクあるような…。
―次羽黒と藤島やからあんま球数多くでけへんで。
―…あっそ。
『1人出て、勝ち越しのチャンスを作った上で羽黒と藤島に廻したい場面』
カキ―ン!
パァン!
『痛烈、あっ、捕ったか!?』
「キャーッチ! キャーッチ、キャーッチ!」
『捕った―――! 都筑ファインプレー!!』
「健ナイスキャッチ!」
「それ、1アウト」
『良く捕りましたね。三遊間への鋭い当たりだったんですが…』
『外のカーブ。先程見逃し三振に打ち取った球から入って来ましたが、バッターの上肴はそれを確り待って打って行きました』
『都筑選手も良い反応でしたね。1歩目の速さとダイビングするタイミングが素晴らしかった。ただ上肴選手の打球も抜けていてもおかしくない程速い打球だったので、どちらも素晴らしいプレーの上での結果ですよ』
「上肴気にするな。オレと亘でチャラにする」
「頼むよ」
『1番 ショート 羽黒』
『ランナーいません…が、今大会この1・2番には一発があります。ロースコアで終盤を迎えた時はこの一発長打には警戒しなければならないとされていますが』
『チームの中でもトップクラスの好打者・強打者ですから、警戒はしていると思います…が』
―さあ来たでヤマ。
―ほーら目付きが違う…。そう来る思ったで。
―オレや亘、良裕に対してはアイツらのウィニングショットとも言うべきストレート中心の配球を最初からして来る…。ならストレート1本だ。
『この強打の鶴岡クレーンズ打線に対して、ここまで強気の投球を見せて来たN`Carsバッテリー』
キィ―ン!
『センターへ、大きな当たりだ―っ!』
「瞬!」
『萩原バックして…、フェンス前、こちらを向いた』
パン。
「キャーッチ!」
『捕って2アウト。羽黒、第3打席は大きなセンターフライでした』
『ストレートを捉えた大きな当たりだったんですが…、頭を完全に越し切るまでには至りませんでした』
『ただこの回まだ2球ですけども3巡目に入るこの回、良い当たりが目立つようになって来ました』
『ただまだアウトに取れているうちは自分たちのペースで投げられている証拠なのでN`Carsバッテリーはこのペースを維持することが重要です。球数は少ないうえに疲れている様子も無いのでね』
『今のアウトで片山は37球。前の試合の最上ノーストップズ戦より若干少ないペースでアウトを重ねています』
『2番 センター 藤島』
―コイツもや。目付き変えて来よった。
―言うまでも無いな。開次は強気で攻める。
―ストレートのイメージもスライダーのイメージもどちらもある。でもどちらも躱す様な投球じゃなかった。スライダーはフォーム崩されたけど気持ちは強かった。
『今日ノーヒットの藤島ですが羽黒・平吹と並んで警戒すべきバッター』
キィン!
『スライダー引っ張って強い当たり、しかしセカンドの真正面! 今大会好守で活躍する梶原から三池へ、3アウト!』
―良い当たりだったんだけどなあ…。まあでもあのスライダーもめっちゃ強気で投げて来たから良いボールだったな。
―どんな球種でも強気で来る思たから敢えてサイン出さへんかったけどスライダーで来たか。
『今のも強い当たりでしたが』
『打ち取られているということは片山の投球ペースに嵌まっている可能性もあり得ますね。ただ一方でN`Carsバッテリーも危ない打順だったとは言え芯で捉えた当たりが増えて来ていますので、その辺りは確り肝に銘じて行きたいですね』
『6回の表終了。この回912番という、鶴岡クレーンズにとっては絶好の打順だったんですが、その3人が僅か3球で打ち取られました。片山投手は6回まで38球、2回の途中からこれで15人連続でアウトにしています!』




