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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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57/135

完全攻略…!?

「残り3イニング。何とか片山が頑張っているうちに、同点さ追い付け。良いな!?」

「はい!」

「この回…、追い付くぞ!!」

「おー!!」


『鶴岡クレーンズ、N`Cars。お互い今大会バッティングで結果を出し続けている両チームですが、今日に関してはそれが序盤以降小康状態が続いています』

『そうですね。それだけお互いの両先発投手が最高の状態で持ち味を存分に発揮しているということでしょうが、お互いの打線がその最高状態の投手に苦戦しているのもまた事実です』

『確かに渡邊さんの仰る通り鶴岡クレーンズは初回の羽黒の先頭打者ホームラン以降2塁が遠い状態で、N`Carsに至っては4回まで未だ2塁も踏めていません。N`Carsが4回まで2塁を踏めなかったのはこの大会4試合目にして初めてのことです』

『平吹投手、片山投手ともにここまで7奪三振、許した出塁も2人ずつ…。まだ両チーム合わせてここまで4人しか出塁してませんから、ここまでそれぞれ3試合で鶴岡クレーンズが平均8点超、N`Carsが平均7点を取って来た打線と言えど、如何に点を取るのが難しいかが良くわかる試合になってきました』

『5回の裏、N`Carsの攻撃は―6番 ピッチャー 片山』

「プレイ!」

『1対0というスコアですから、鶴岡クレーンズは如何に抑えるか、N`Carsは如何に同点に追い付くかがキーポイントになりそうですね』

―この回の最大のヤマは片山。コイツは最大限に警戒して、後の2人も気を抜かずに打ち取る。

―ちょっとは改心したな。で、どこにすんの?

―インコースのストレート。さっきはこの位置で大きなライトフライだったけど、もう1個内側のボールゾーンで。幾ら積極的な攻撃が得意な彼らでもボール球は打って来ない。ここで同じリードと思わせて、2球目以降で全然違うコースと球種で打ち取る。

―それで行くか。

『先程は大きなライトフライの片山、1点ビハインドで迎えた第2打席は先頭打者として自ら突破口を開くか』


キィ―ン!!


『大きな当たり――、ライト下がって行く――っ!!』

「ええ!?」

「行けぇ!」

『藤島、五十川下がって行って…、』


ドン!


『フェンス直撃! 片山は2塁へ!』

「よっしゃあっ!」

「廻れ廻れ―っ!」

「バックサードだ! 朝日繋げ!」

『2塁へ滑り込んでセーフ!! ツーベースヒット!!』

「皆こっからや! 意地でも同点にするで!!」

『さあ、N`Carsはこの試合初めて得点圏にランナーを置きました! 片山のツーベースヒットでノーアウト2塁、一打同点のチャンスです!』

『見送ればボールだったかもしれないインコース低めのストレートだったんですが…、バットを縦に回転させて確りと芯で捉えてあそこまで持って行きましたね。ナイスバッティングです』

―外した筈なのに…。あんなことしてまであそこまで持ってくなんて…。

「温海が気にすることじゃないよ」

「…ああ、うん…」

―温海随分気にしてる…。相手が巧いから打ったまでなのに、相手の成功じゃなくて自分の失敗だと思ってる…。

『7番 セカンド 梶原』

「栄次!」

「ん?」

―オレを還す仕事せえ。同点にするだけでええからな。

―ん。

『この試合初めてのビッグチャンスをどう活かすか…、梶原はこの構え』

―そらそうやろな。

―ランナー3塁のほうが点になり易いもんね。

―この構えとってるけど、バント…、ん?


―絶対ホーム取ったる。約55m先のその五角形のベース、絶対踏んだるわ。

―…睨まれてる…!!


『1つ間合いを取ります』

『温海選手のほうから間合いのサインが出たんでしょうが…、これ何か引っかかるところありますかね? 1点が重い試合ですから、盗塁とか足技の可能性よりはバント1本のほうが遥かに確率が高いでしょう』

―ごめんな間合いのサイン出して。

―いや良い。


『さあ再びセットポジションに入りました…』

―やべぇよアイツマジでホーム取る気だ…。三盗(サードスチール)されるかもしれん。1球外そう。

―ただでやらすか1球外すか迷ったのね。

『サード斎はベース上、ファースト上肴がやや前…、からダッシュ!!』


ドシィ!


「ボール!」

『梶原バットを引いてボール! ファーストの上肴だけがチャージして来ました』

―…して来ない…。でもあんなオーラあるヤツと目ぇ合ったんじゃやられそうで怖い…。

―あの目と目線…、わかった。温海は片山の(プレッシャー)に屈しているのか…。なら黙ってバントさせよう。

―えっ、何で?

―そのほうが気が楽じゃん。片山が正面から外れるから。

―…わかった。

『1球目の様子ですとサード側にやり易くはなったんでしょうが…、平吹投手の球も容易にバントできるようなものではありません』

『今日で4連投目になりますが疲れのような兆候は見せていません。それでいて未だ自責点1ですから渡邊さんの言葉がより重く圧し掛かります』

―オレは睨まれても強い気持ちを持ってるんだな、って平然としてられるけど温海が…。あんなにぶるってたんじゃいつも通りのプレーが出来ない。

『2球目…、同じく上肴ダッシュ!!』


コン。


『3塁側へ、良い位置にバントした!』

「朝日頼む!」

『平吹が自ら捕って、1塁へ! ベースカバーにセカンドの朝日が入って1アウト、送りバント成功!』

「栄次ナイバン!」

―これで少しはアイツも気が楽になったろ。

『1アウト3塁、同点のチャンスが広がって次は当たれば長打の桜場、その次はラストバッターながら今大会当たっている都筑!』

『下位にもこういうのがいますから幾ら平吹・温海のバッテリーと言えど油断できませんよ』

『8番 レフト 桜場』

「これで少しは楽になった?」

「うん」

「真正面オレだけだから、オレだけ見て良い」

「OK」

―良かった。()()()()

―最近はちょっとずつ良くなってるけど三振が多い俊和やからな…。でも当たれば飛ぶのもまた事実。内野はワンチャン、外野やったら確実にホーム取るか。

『今大会11打数2安打ですがその2安打は何れも2塁打。率は低いですが長打が期待できるバッター』

『外野フライを確実に打てるかどうかですね。N`Carsはこのビッグチャンスを取れるかどうかで試合展開も変わって来ますよ』


バァン!


「ストライーク!」

『ストレートから入って来たバッテリー。しかし桜場も初球から積極的に振って来ます』

―スイングはコンパクトになったけど合っとらんな。

「何やったら当てるだけでもええよ」

―ギリギリまで目を離さんと引き付けて、そこで当てる。内野ゴロなってもホーム取るからなオレは。この守備位置やったら取れる。


バシィ!


「ストライクツー!」

『またストレート。空振り2つで追い込んだのはバッテリー』

―随分思い切りよう投げてんな。

「栄次がさっきから浮かない表情してんだけど」

「元々寡黙で、表情もそんな変化しない子でしょ?」

「いやまあそうなんだけど…、どしたの栄次?」

「いや…、さっきのバントやらせに来たんじゃねーか、って」

「え…!?」


バシィ!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

「何やねんなもうー! 当てるだけでええっちぅたにー!」

『空振り三振! このピンチでも平静を保って自分のボールを投げ込みました平吹!』

「今の聞いててわかったで」

「あ、浩介…」

「今の栄次の発言聞いてオレもやっぱそうか思ったもん。涼、響、栄次がバントした時のボール、覚えてるか?」

「え…、ストレート」

「それにしては妙にやり易い思わんかったか?」

「…あ」

「その後にキャッチャーが落ち着いとる。その証拠に俊和に投げたストレート3球、全て思い切りようサインを決めて投げさせとった。つまりわざとバントさせて、落ち着いた状態で後続を断つ…、そういう作戦かもしれへんな」

「え…!?」

『9番 サード 都筑』

「でもチャンスは貰っとる。ランナー3塁に居るからな。健、ここが狙い目やぞ」

「でも()()()ってことは…、こっちが敵に塩を送ったみたいで嫌だな…」

「それは向こうかて同じや。アウトは取ったけどランナー3塁に進めとるからな。点になり易い3塁に居るから尚更このチャンス取るで。やったれ健!」

「無駄にすんじゃないぞ」

―浩介や栄次に言われなくたって点にするよ。オレは野球の総合成績では開次や浩介程優等生じゃないけど、巧いヤツと真っ向勝負したい気持ちは変わんない。そして、巧いヤツについて行く気持ちも変わんない。だから―、


―この平吹(巧いヤツ)を打って、開次と浩介(巧いヤツら)について行く―!!


キィン!


『1・2塁間抜けた――っ!!』

「やった――っ!!」

「健ナイスバッティング!!」

『3塁ランナー還って同点! ラストバッター都筑のタイムリーヒット、N`Cars1対1の同点に追い付きました!』

『ストレートだったんですけども短く持って初球から迷わず行きましたね。ナイスバッティングですよ』

『今大会ラストバッターながら通算5割を超す打率をマークしている都筑、その都筑のライト前へのタイムリーヒットで追い付いて尚も2アウト1塁と今度は一気に逆転のチャンスです!』

『1番 センター 萩原』

「…タイム」

「タイム!」

『勝ち越しのランナーを1塁に置いて1番の萩原を迎えるところで、キャッチャーの温海がマウンドに行きます』


「…ごめん良裕、オレが片山の視線にビビったばっかりに…」

「いや良い。あのピンチを完全に抑えきれなかったオレが悪い。それよりも次の1点は確実に封じるぞ」

「…うん」

「グラウンド整備が明けた後の次の回は2人出たらお前に廻って、お前も出れば次はオレだ。そこで突き放す」

「良し、絶対に抑えよう」

「うん」


『キャッチャーが戻ります』

『バッターは 萩原』

「5回裏N`Cars、2アウト1塁。プレイ!」

『N`Carsはこのチャンスで一気に勝ち越したいですね』

『ノーヒットが続いていますが今大会通算13打数4安打、俊足巧打の萩原にチャンスで廻って来ました』

「瞬続け―!」

― 一気に決める。平吹(コイツ)を捉えて、一気に追い越す―!!

『更にこの後は今大会これまた打率5割超の小宮山と当たっているバッターが続きますが、渡邊さん』

『好打者が続く状況ではあるんですが、鶴岡クレーンズは何とかこの1点で止まりたいですね』


キィ―ン!


『センターへ、大きな当たり――っ!! 藤島バック、バ―ック!!』

「行けぇっ!」

「抜けろっ!」

「亘!」


パン!


『とっ…、あっと、フェンスにぶつかったが!?』


「キャーッチ! キャーッチ、キャーッチ!」


『捕った―! 最後は惰性でフェンスにぶつかりましたがセンターの藤島、捕っています! ファインプレー!!』

「おわ―――っ!!」

「ナイスキャッチ亘!」

『センター後方を襲う打球でしたが、俊足の藤島が後方へバックして…、いやーでもこれ…、かなり紙一重の位置でしたよ』

『そうですね。俊足の藤島選手でもこのタイミングしかないというところでグローブを差し出して捕ってますからね…、そこじゃなければ…、』

「……」

『2アウトでしたから1塁ランナーの都筑は打ったら打球に関係無くGOという場面でした。ですから、そのタイミングで無ければ十分勝ち越しもあり得た打球でした…。まだちょっと呆気に取られている都筑と萩原ですが…』

『当たりは良かったのでね、逆転したかったんでしょうけど、まだあと2イニングありますから、ここは切り替えて行きたいですね』

「健、瞬、早よ引き上げや。グラウンド整備始まるで」

「あ、うん」

「ごめんごめん」

『5回の裏終了。この回初めて得点圏にランナーを進めたN`Cars、2アウト3塁から今大会好調のラストバッター・都筑のライト前へのタイムリーヒットで1対1の同点に追い付きました』


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