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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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56/136

インサイドワーク

―欲しがっだな今の1点…、それだけ平吹がら1点取るのは至難の業ってことが。

―欲しかったな…。今のチャンスで取れへんかったの、後で響きそうやな…。まあ尤も、自分が打てへんかったことがアカンけどな…。…さて、5回からどないしようかな…。もう1点もやれへんからピッチングは兎に角0で行くとして…、バッティングやな…。チャンスはあってあと1回…。兎に角抑えるか…。守備でええ雰囲気作ってそのまま攻撃に持ち込むか…。

「浩介」

―?

「浩介、早よせんかい。祐希とのキャッチボール終わってまうわ」

「え!? キャッチボールのテイだったのこれ!?」

投球(ピッチング)練習って話は?

「ピッチングかてキャッチボールのうちやろ。それにピッチング練の総仕上げは浩介について貰わなでけへん」

―あ、てことはもう7球投げたのね開次。長く考え込んでもうたわ。

『今漸く関川が準備を終えて…、先程まで片山の投球練習のボールを受けていた背番号13、控えの捕手である相澤からバトンを受けます』

「皆お待たせ。ボールバック、セカン行くで!」

―待たせ過ぎやがな。肩冷えてまうわホンマ。


「走ったっ!」


バシィ!


「ナイボール!!」

「祐希ー」

「んー?」

―時間喰ってすまん。

―あー良いよ良いよ。


『片山投手は4回を投げて初回のみの1失点。被安打は2、鶴岡クレーンズは2回の先頭バッターだった平吹の内野安打を最後に出塁がありません』

『格下が格上を抑えるには兎に角点を与えてはいけませんがここまで抑えられるんですね…』

『初回の1点以降この中盤まで無得点だったのは鶴岡クレーンズにとっては2回戦の天童ファイリーズ戦以来ですが…、その時は5回に大きく突き放して勝負を決めました。この回は下位ですがパワーヒッターの五十川からですから十分チャンスはあります』

『打順の巡り次第では羽黒選手や藤島選手にこの回で再び廻るかもしれませんからね、買いでチャンスを作れれば大きいですよ』

『5回の表、鶴岡クレーンズの攻撃は―6番 ライト 五十川』

「プレイ!」

―とにかく無失点で抑える。最初は外一杯のカーブから。

―わかった。


パシィ。


「ストライーク!」

『最初は外一杯のカーブから来ました』

『結構ギリギリなところですね…、これだけ端のギリギリにストライクを入れられるコントロール、素晴らしいですよ』

―次は…、外一杯のコースを一瞬掠るスライダー。

―わかった。


バシィ!


「ストライクツー!」

『アウトコースギリギリのスライダー。2球続けて見送って2ストライク』

『捕った位置は明らかにボールですけどもホームベース上の本当に端っこに入れて来るんですねえ…』

「ちょっとのボール球でも打ちゃあ良いのに」

「いや、ボールだと思ったから見送ったんでしょ。けど見る限り外だったんだけど、あの強気バッテリーが最初からそんな弱気なリードをするとは思えない」

「何かあるの?」

「ある。亘、少なくともオレはそうだと思ってる」

―ま、兼人が言うならそうかもしれないけど。

―3球目は同じ踏み位置からストレートをインコースに。クロスファイア効かせて。

―わかった。


バシィ!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『空振り三振! 最後はインコースのストレート!』

『プレートの踏む位置は先程までと変わらず1塁側寄りだったんですが…、そこから3塁側に大胆に踏み込んで146km/hのストレート。クロスファイアが効いていて良いボールでした』

『しかもパワーヒッターを相手にあれだけ近いところに投げられていますからね。片山投手が今日奪った三振は7個目となりました』

『7番 サード 斎』

「1アウト1アウト!」

―けど1アウト取ったからって油断出来へん。2人出ればまた羽黒と藤島や。その前で切る。何なら3人で終わす。

『先程はバントが決まらずヒッティングに切り替えて三振。今度はランナーがいない場面での打席です』

『下位からチャンスを作れると大きいのでね、彼と次の朝日選手のバッティングは重要になってきますよ』

―ほれ見ろ。こういうバッターこそビシッと締めるで。何やったら頭っからこれ投げてもええよ。

―頭っから? 行ってええんやったら行くで。


ガキン!


『インコースの速い球、しかしこれはサード都筑の正面! 三池へと渡って2アウト』

『最初からインコースの速い球でしたね…しかもこれも体に近いところだっただけに思わず振ってしまったような印象があります』

『8番 セカンド 朝日』

―やっぱりな。ストレートを活かすリードに切り替えて来た。変化球を外一杯に見せて目線をずらさせた後でインに速いストレートを見せて打ち取るという…。

「朝日」

『あっ、打席に行きかけた朝日に、キャプテンの羽黒が向かいました』


「お前どっちに的絞ってる?」

「え…、ストレート」

「良し。変化球は追い込まれるまで振るな。向こうはストレートを活かすリードに切り替えて来てる。だったら最初からストレート狙え。良いな?」

「うん」


『さあ羽黒が戻ります。渡邊さん、これは羽黒が朝日にアドバイスを送ったという解釈で宜しいでしょうか?』

『ですね。タイム掛けてませんから…。それに神事監督が羽黒選手を呼び止めてアドバイスを送った様子もありませんので、羽黒選手が自主的に朝日選手にアドバイスを送ったものと考えられます』

―羽黒が態々行った? で、朝日はバットを短う持ちよる…。こらリード悟られたかもしれんな。

―ストレート狙いやろ。で、どないすんの?

―ストレートで行く。どうせストレート狙いやったら最初からストレート投げて打たせたほうがええ。変化球から入ったらその後投げた打ち取る筈の真っ直ぐを待ってました思てカモにされる。そのつもりのリードやったけど悟られたんならしゃあない。速い球を頭っからインにぶち込んでええ。

―ええねんなホンマにぶち込んで…。行くで。


『高めの球だっ!』

ガキィ!


『ややボール気味の球、これは真上に上がって…、』


パッ。


「キャーッチ! バッターアウト!」

『ピッチャーフライ、3アウト。この回も3者凡退、片山投手は3回以降をパーフェクトに、更に2回の五十川の打席から12者連続でアウトに抑えています!』

『ちょっとインハイのボール気味の球だったんですけどね…、スピードがあっただけに打たされてしまいましたね。しかし12者連続ですか…』

―インサイドワークも巧いねぇ。オレもアンタのリード読んで朝日にアドバイスしたのに更にもう1枚上を行かれた…。

『5回の表終了。依然試合は1対0、鶴岡クレーンズが1点をリードしたまま試合は膠着状態となっています』


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