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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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54/135

意気投合

「これから4回、クリーンアップの攻撃だ。平吹に廻る前に点取るぞ。良いな!?」

「はい!」

「良し…、追加点取っぞ!!」

「おー!!」

「櫛引、温海、お前ら2人で1点取れよ!」

「おー、任せとけ!!」


「この回まず、櫛引と温海は警戒。しかしそれ以上に警戒せなアカンのが…、」

―せーの。

「「平吹」」

「よっしゃ、それで行くで」

―ピッタリ意気投合したな。

―開次の目ぇ見てわかってそうやったからオレから振ったら当たった。

「皆、この回はクリーンアップや! 締まっていくでぇ!!」

「おー!!」

『1点をリードする鶴岡クレーンズ。4回表はクリーンアップからの攻撃です。従ってエース・平吹投手にも打順が廻って来ます』

『4回の表、鶴岡クレーンズの攻撃は―3番 レフト 櫛引』

「プレイ!」

『平吹選手が自分のバットで援護するのも良いんですが…、出来ればその前の2人で援護点を挙げたいですね』

―さっきはストレートとスライダーやったから…、カーブで行くで。

―え、もう曲げるん?

―恐らく相手投手の球種を引き出すのが巧いバッターや。さっきの様子から見るに、まだ誰にも見せてへん球をこっちが投げるまで手ぇ出さへんで。その証拠にさっきはストレートを初めから捨てて、スライダーで振って来た。さっきと同じ組み立てやったら無駄に球数使ってまう。それやったら最初から見せてへん球を投げて、早いカウントで打ち取ったほうがええ。

―…何でコイツ1番やないねん。そんなん1番のやる仕事やろ。


―ストレートとスライダー…、正直この2球種だけじゃない筈…。


―来た!


カキ―ン!


『中に入ってきたカーブ、しかしこれはセカンドの正面! 今大会堅い守備を見せる梶原から三池に渡って1アウト』

―カーブだけどストライクからボールに巧く沈められたな…。

『ちょっと芯を外したとは言え強い当たりだったんですが…、それでも梶原選手難なく捌きましたね』

『今大会既に3試合で10失策と守備に課題を残しているN`Carsですが、その中にあってセカンドの梶原は守備での活躍が一際目立ちます』

―やっぱりな。カーブで振って来た。この位置に構えてへんかったらカーブでもヒットになっとったかもしれへん。

―振ってくるの見越して初めからゴロになるような位置に構えとったな浩介?

「ナイス栄次!」

「1アウト1アウト―!」

『4番 キャッチャー 温海』

『N`Carsもゴロでアウトを奪ったのはこの試合初めて。しかしながら次はチームで1・2を争うパワーヒッターです』

『パワーヒッターですから…、尚更低めへの制球力が必要になってきますね』

―ストレート3つ続けたから、スライダーで。それもインコースのボールゾーンから一瞬中へ入って再びボールゾーンのギリギリバウンドせぇへん辺りで。

―浩介も1点勝負と見たか。ストレートでさっき三振取ってるとは言え速さには目で見て慣れている上パワーヒッターやから力で持って行く可能性あるもんな。一発長打を確実に避けるリードに切り替えてきた。


カキ―ン!


『内に構えて低めの球、しかしこれはサードの正面! 都筑から三池へ、2アウトです』

―スライダーだったか…。芯外された。

『低めの、スライダーですね。鋭いスイングでしたが芯を外されたので正面の凡打になってしまいましたね』

『5番 ピッチャー 平吹』

『さあ変化球2球で2アウトを奪ったN`Carsバッテリーですが…、次はバッティングも良い平吹です。足も速い選手で、事実第1打席ではバットの先に当たった…、謂わば当たり損ねの打球でしたが俊足を飛ばして結果的には内野安打でした』

『良く層が厚いと言われる鶴岡クレーンズの選手層ですが、その中でも羽黒選手、藤島選手に続いて平吹選手は走攻守の総合面でチームのトップクラスに並ぶと思いますよ』

―さてこの回最も警戒すべきバッターが出て来たで。

―待ち望んだバッターが現れたな。

―待ってましたよ、って目ぇしてるな片山のヤツ。ならばこっちも全力で応えるか。良い選手程全力で挑む価値はあるからね。

―ストレートでも変化球でも順応力は高い。さっきの2人には変化球を見せたから、この回は変化球で組み立てる思っとる筈。ストレート、但しアウトコース。全力投球で威圧させるのと同時に動きを見る。

―さっきは内容と結果がお互い痛み分けやったからな…。今度は内容も結果も取らせて貰うで。


―ストレート!


キィン!


「ファールボール!」

『3塁側のアルプススタンドへ、初球から振って行きましたがファールボールです』

『打球の行方には、くれぐれもご注意くださいませ』

―ふーん。

―真っ直ぐはやっぱ狙って来んのね…、わかった。組み立て変更や。

―で、何するん? 真っ直ぐに強いんはもうわかるけど。

―カーブ。もう最初っから曲げたれ。さっきの羽黒と藤島にやったみたく、相手バッターのフォームを崩して打ち取る作戦や。

―わかった。

―ニューボールを受け取った時片山の表情が何か悟ったような気がしたけど…、負けん気強そうなヤツだから力勝負かと思ったが、変えるのか?


―いっそワンバンさせてもええからな。

―わかった。

―カーブ!


―!


キィン!


『低めのカーブ、これは打ち上げてレフトフライ!』

―まずい、やっちまった…。角度付き過ぎたから反って伸びないか…。しかしN`Carsの守備陣は信用無い筈…。


パシィ。


「キャーッチ!」

『レフト桜場の正面でした。掴んで3アウト』

『ワンバウンドするかもしれなかったようなカーブでしたが…、打って行きましたね。ただ体勢を崩された上ボールのやや下を振る形になりましたので、結果的に力の無い打球が行く形になりましたね』

―ん? 平吹のヤツ、俊和が捕った時にもう2塁近くまで来とる…。めっちゃ足速いんやな。

さっきの内野安打と言い、警戒せなアカンな。

「開次、早よベンチ帰るで」

「あ、うん」

―滞空時間長かったのかな? 何か気付いたらここまで来てた。

『この回クリーンアップからの攻撃でしたがこの試合両チーム通じて初めて奪三振無しで攻撃を終えました。僅か4球、三者凡退で無得点です』


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