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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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46/136

こういう気持ちの時こそ…

 羽前球場のベンチは一塁側・三塁側ともにロッカールームのすぐ近くにある。ミーティングを終えたN`carsのメンバーは、必要な荷物と道具を持って三塁側ベンチのすぐ裏で待機していた。


 …が、誰も話す余裕がない。第1試合はあと2イニング弱あるが、それでも重い雰囲気に変わりは無かった。


今朝から終始余裕のないキャプテンは、この雰囲気をどうするかで再び頭を悩ませていた。


―まあいざってなったら…、オレと開次でまずは突破口を開けるから…、皆はそれについて来てや。


―って関川は言ってたけど…、良いのかな本当に…? 黙ってついてくだけか…?


 考えている姿勢から、一瞬関川の方向を見遣る。その関川は、片山と小言でどうやら今日の配球についてを話し合っているようだった。


―あっちもあれでいっぱいいっぱいなのか…。


 その後、ゆっくりと全体を見渡す。やはり皆、それなりに緊張しているようだった。


―この状態で話しかけるのも反ってあれだしな…。ここは暫く待つか…?


 緊張を解そうと、まずは誰かに声を掛けようとしたが、声を掛けるのも難しい雰囲気だった。無理せず待つしかない状態だったので、第1試合が終わるまで待つことにした。


 そのまま、ゆったりとした時間が流れる。同時に試合も進む。ベンチ裏にいたことと、緊張から重い雰囲気になっていたのでN`Carsのメンバーは皆、グラウンドから漏れてくる音声に対して本能で気付くことしかできなかったが、第1試合は愈々佳境に入って行った。


 その証拠に、今はラジオを点けていないが、AMラジオの放送では、こんなことを言っていた。


『4対1…、置賜勢同士の対決となりました今日の代表決定戦第1試合、白鷹ホワイトホークス 対 米沢ローリングスの試合。2回の裏にまず米沢ローリングスが1点を先制、4回にも追加点を加えて2対0…と、比較的ロースコアの展開ではありましたが、5回は点の取り合い。5回の表、この大会初めて米沢ローリングスの情野投手から得点を奪った白鷹ホワイトホークスでしたがその裏すぐに米沢ローリングスは集中打で2点を追加。4対1とリードを広げました』

『点は取られましたけどもその後は落ち着いてますね情野投手。今大会特に盤石なピッチャーの1人と言えましょう』

『その情野投手、6回まではその1点だけに止めるピッチング。3連打があった以外は内野安打1本のみに抑える好投でここまで被安打4本、与えた四死球はありません。三振も6回まで8つ奪っているという内容です』

『三振も奪えてコントロールも良いですから相手にしてみたら強敵でしょうね』

『勝てば米沢ローリングスは25年振り2回目の全国大会出場。一方の白鷹ホワイトホークスは勝てば初出場です…が、7回の表、まずは3点を追う攻撃』

『3点ですから、まずはランナーを貯めることですね。出来ればノーアウトで2人置いておくと後の攻撃もやり易いと思います』


 勿論実況・解説の内容はN`Carsのメンバーには入って来ていない。それよりも、試合が佳境になるにつれて、N`Carsのメンバーの緊張度合いもピークに達しつつあった。


―何か、麻痺してきた…。


 緊張している時間が長過ぎたのか、体の感覚が緊張を通り越して麻痺して来た。永田は考えている姿勢から構えを解き、グラウンドのほうに目を遣った…、その瞬間だった。




―えっ? 終わった?


 先程とは打って変わって、一際大きな歓声が聴こえた。永田はゆっくりと出られるところまで歩を進めて、外の様子を確認する。


―あ、終わったな。


 永田が見た光景は、米沢ローリングスのメンバーたちがエースピッチャー・情野を中心に、歓喜の輪が作られている様子だった。これでお分かりの方もいらっしゃるかと思うが、今日の代表決定戦、第1試合は4対1で米沢ローリングスが勝利して、25年振り2回目の全国大会への進出が決定した。


―今頃ラジオでも25年振り2回目の全国大会への切符を手に入れましたー、とか言ってそうだな…。けどなぁ…。


 永田は戻りながら、もう1つの光景を気にしていた。それは歓喜の輪が作られた右側、どうやら三振に倒れたらしいバッターが片膝を着いてバットのヘッドを下に突けて地面に突っ伏している様子だった。


―自分らは試合終わった後どっちになってるんだ…? さっきの光景で…。


「どうだった?」

「えっ?」


と、高峰の声で我に返る。


「終わった?」

「終わった…、から準備して」


と、戸川に返しつつベンチ入りの準備を始めた。


「ん? 終わった?」

「終わりました」


と、徳山監督に返したそのタイミングで、第1試合の終了を告げるオートマチックサイレンが鳴った。


「あ、終わっだな。じゃ皆、準備して」

「はい」


 徳山監督の指示で、N`Carsのメンバーは改めてベンチ入りの準備を始めた。


―さっきの指示…、声のトーンがいつもより低がっだな…。オレが改めで言ったがら動いたけんど、やっぱまだ緊張してだのが?


―う~~~…、もう四の五の言ってらんねぇな…。こうなったら…、


「よし皆、いつも通りのことをしよう!」


―これしかない。もうこれしかない…。いつも通りのことをやってこそ、だ。


―声のトーンが戻ったな。吹っ切れたのか?


 いつもの声のトーンで他のメンバーに指示を出した永田は、1人準備を済ませると足早にベンチへ向かった。


「はい皆、早く早く!」

「お前が早過ぎるんだよ」

「皆が遅過ぎるの」


と、1人早いテンポでグラウンドに入る手前で、役員に止められた。


「え…何かしたんですか?」

「表彰式やってるから…、ベンチ入りはそれから」

「あ、はい」


 役員が左手で指し示したほうに目を遣ると、ホームベースより後方のファールグラウンド側で、大会会長と米沢ローリングスのキャプテンが、大会会長側に向けられたマイクを挟んで向かい合っていた。大会会長から表彰状が読み上げられる中、N`Carsのメンバーのうち、前方に来ていた永田と、すぐ後ろにいた戸川、中津はあることに気付く。

 それは、米沢ローリングスのキャプテンの背番号が1であったことなのだ。


―あれ情野だよな? 高峰とか相澤が気に掛けてた…。

「情野キャプテンだったのか」

「背番号1って書いてあるから間違い無いな」

「しっ。2人とも、今は表彰式に付き合ってやれ」


 永田は少しざわついた戸川と中津を静かにするよう言った後、もう1度表彰式のほうを向いた。


―表彰状を受け取って…、ん? 何やってんだ?


 表彰状を受け取った米沢ローリングスのキャプテン・情野が、その後隣の台に向かった。そして…、何とさっき貰ったばかりの表彰状を台の向かいにいる役員に渡しているではないか。


―えっ?

―えっ?


 しかしお互い特にそれで留まる様子も無いので問題無いのか…。そのままスムーズに、役員は表彰状を受け取って、情野は台に置かれていた箱の中に右手を入れる。


 念の為、永田はこの一連の作業について役員に訊ねた。


「あの、すみません、これって何…やってるんですか?」

「表彰式だよ」

「いえあのそうじゃなくて…、さっき表彰状を受け取った後…、渡してましたよね? あれ何なんですか?」

「あれはね、後でバインダーに綴じて改めて渡すんだよ。表彰状剥き出しのままじゃ、せっかく栄誉あるものを頂いても可哀想でしょ?」

「あ、そういうことだったんですね。ありがとうございます」


 情野が表彰状を役員に渡した理由に納得すると、再び先程と同じ位置に目線を向ける。今度は情野は、箱から取り出したであろう茶封筒を右手に持っている。


―あれ…は…、多分籤だな。全国大会の代表が決まった後の籤だから…、多分全国大会に絡む何らかの籤なんだろう…。


「おめが先頭さいたのが」


 考えごとをしているところへ、徳山監督が来た。


「あ、監督」

「あんまりおめがパッパど準備するもんだがら、皆ついでけねぇっつってだぞ」

「でも皆ついて来てるじゃないですか」

「いやあのそうじゃねぐて…、まずおめは落ち着け、ってこと」

「あ…、すみません」

「役員さ止められる程急いてんだば…、まずは今すべきことが何か整理して、冷静な判断で行動しろよ、っつぅごどだ」

「はい」


 徳山監督に諭されている間に表彰式が終わって、第1試合を終えた両チームがそれぞれの応援団に挨拶をすべく、駆け足でアルプススタンドへと向かった。


「はい、良いよ」


 挨拶が終わったタイミングで、漸くN`Carsはベンチ入り。役員から赦しを頂くなり、


「お願いします」

「お願いします」


永田を先頭にいつも通り元気良く挨拶をしてベンチに入る。


 グラウンド整備は表彰式の時から既に始まっており、N`Carsのメンバーがベンチ入りをする頃にはほぼほぼ引き揚げ作業に入っていた。


「皆ベンチ前に整列して!」

 

永田の号令で、N`Carsのメンバーが一斉に速やかに三塁側ベンチ前に整列する。全員が整列したのを見て、


「グラウンド整備、ありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」


 整備員さんにきちんと挨拶した後、シートノック開始のアナウンスを待つ。


『N'Cars、シートノックの準備をしてください』


「っしゃあいくぜ!!」

「おー!!」


N`Carsのメンバーが最初に各々のポジションにつく。整列したところから、全力疾走。


『時間は7分間です。それではシートノックを始めてください』


このアナウンスと同時に、シートノック開始のサイレンが鳴る。


「いつも通りのことをして良いからな! いつも通りにノック受けて、試合に備えるんだぞ!」

「最初内野ボールファーストや!」

―…って、今の指示外野に聴こえたんかな…? 約1名、めっちゃ張り切ってんけど。


 サイレンが鳴ったと同時に、関川の指示、そして、徳山監督のノックがまずサードへゴロで飛ぶ。


「良くこんなチームが代表決定戦まで残ったな…」

「でもエラー祭りは一旦見納めでしょ? さすがに今日は鶴岡勝つから…」

「だろうな。今のうちに見ておくか…、って言ってる傍から早速やらかしたぞ」


 観衆の声はどうでも良かった。今、グラウンドでノックを受けている面々はいつも通りにノックを受けて試合に備えることに集中していたので、いちいち気にする余裕は無かった。


 ノックが進むにつれて、開始時に7個全て灯っていたスコアボードのBSOランプも、1分経過する毎に1個ずつ消えていく。


「次、外野行ぐぞ!」


カキ―ン!


 今度は外野へのノック。金属のノックバットから、まずはレフトへ打球が放たれる。


「外野となるとエラーも派手だからな」

「範囲広いから一度エラーすれば大ごとになるからな…、見とくか」


「次ー、ライト行ぐぞ!」

「はーい、お願いしまーす!」

「気合入ってんなー、そらよ」


カキ―ン!


 打球は右中間へ、永田は走って打球の落下点まで回り込んで、両手を挙げた…時だった。


「どわっ」


何かに躓いたのか、何と豪快なバックドロップを見せてしまい、後方へ転倒。打球はその後ろへ弾んだ。


「ライトwww」

「ライト何やってんのwwwwwww」

「豪快過ぎるぞエラーがwwwwww」


 観衆の笑い者にされているライトをカバーしたセンターの萩原、

「大丈夫?」

と内野へボールを返すなり声を掛けて、永田も大丈夫というジェスチャーを取りつつ起き上がった。


「気合入り過ぎでだな」

「大丈夫なんすかねアイツ…?」


 観衆には笑い者の、N`Carsの他のメンバーには心配の対象にされているという空気の中だったが、


ドン!


突如、これを切り裂く豪快な音が聞こえた。


「え? 何今の音…!?」

「何か破裂したのか?」

「いや、でもそれならもっと慌ただしくなる筈なんだが…」


 観衆は今の音に騒めいていたが、しかしN`Carsのメンバーは落ち着いてノックを受けていた。


 音の正体は、片山がブルペンでキャッチャーをしていた相澤のキャッチャーミットを持ち球のストレートで豪快に叩いた音だった。しかも投げた主の様子がおかしい。


―え!? オレ何かした…!?

―いや祐希、お前とちゃうで。睨みの対象はお前やない、ここにおる人を笑い者にした愚かな観衆共や。


 片山はその表情のまま、ゆっくりと反時計回りに球場全体を見渡した。片山が見渡すにつれて、先程までの笑い声や騒めき声が、段々怖じ気付いた声に変わっていった。


「え…!? 何で睨んでんの?」

「あのピッチャーにオレら何かした?」

「マジで怖いんだけど…ちょっと今ヤバいオーラ出てる…」


 一通り見渡した後、片山はその表情のまま、もう1球投げ込む。


パ―ン!


うわ、これマジで今近付いちゃ駄目なやつだ…。


 2球続けて同じ表情、同じオーラで同じボールを投げ込む片山に、観衆の声は段々小さくなっていき、軈て黙った。


 バックネット裏から1塁側よりに座っている観衆から外野スタンドの三塁側ブルペンより最も遠い席に座っている観衆ですらあまりの怖いオーラに怖じ気付く中、ノックの時間は進んでいき、7個灯っていたランプのうち6個が消えて、あと1個となった。


『N`Cars、ノック時間あと1分です』


 外野手は全員、バックホームを終えてファールグラウンドに引き揚げている。残るは内野バックホームとキャッチャーフライで、シートノックの打球を捕ってバックホームした内野手から続々引き揚げる。その様子をこの後シートノックを控える鶴岡クレーンズのメンバーが、1塁側ベンチ前から見ている。キャプテン・羽黒の横に藤島がおり、藤島から話しかけた。


「どう?」

「どうもこうも…、今はシートノック優先だよ。それからだ」

―何てあっさり。


と思った藤島だったが、少し時間が経って、それもそうか、と納得したタイミングで、BSOランプの最後の1個が消灯して、サイレンが鳴った。


『N`Cars、シートノックの時間終了です』


 シートノックの制限時間、7分間が終わった。


「気を付け、礼! ありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!」


 永田を先頭にN`Carsのメンバーがグラウンドに一礼した後、三塁側ベンチへ引き揚げる。同時に、


『続いて鶴岡クレーンズ、シートノックの準備をしてください』


このアナウンスが流れて、今度は鶴岡クレーンズのメンバーが整列したところから全力疾走でそれぞれのポジションに就く。


『時間は7分間です。それではシートノックを始めてください』


このアナウンスと同時に、シートノック開始のサイレンが鳴り、BSOランプが再び7個全て点灯する。


 始まるなり、N`Carsはシートノックの巧さに沈黙した。打球が飛ぶなり彼らは軽快に捌き、スムーズな動きのまま矢のような送球を連発した。


「うわ、無駄が無いよ…」

「良い動き続けてる。ダッシュも良い」

「そこからちゃんと速い送球できてる…それもストライク」


 どんな打球でも彼らはそつ無く順応して、熟していった。内外野、打球を変えてもケースを変えても彼らは無駄無く熟していった。


「連係プレーも巧いよ」

「中継も確りしてるね」


 中でも、N`Carsで本業がショートの小宮山と松浪は、2人並んである選手に注目していた。鶴岡クレーンズのキャプテン・羽黒である。


 じっと羽黒を見つめる2人に、三塁側ブルペンへ行きかけた関川が、足を止める。

―涼と響が羽黒を意識せぇへんわけないもんな…。同じショートやから、同じポジション守っとる相手の巧いヤツには一目置くやろな。

 そのまま再び歩み出して、三塁側ブルペンへと向かった。同じ頃、灯っているBSOランプはあと2個にまで減った。


「外野バックホーム!」


 鶴岡クレーンズのシートノックも、愈々バックホームに入った。シートノックの総仕上げだ。


「最後まで凄いもん見せられたな…」

「凄かったな…」


 N`Carsのメンバーが口々に感想を言い始める中、


「バックホーム!」


こちらのシートノックは尚も続いていた。最後のバックホームまで、そつ無く軽快に熟していく彼らだった。


「次、センター!」

「お願いしまーす!」


―センター!? てことは…、

―愈々来るぞ…。


 センターのノックになるなり小宮山と松浪もそちらに目線を向ける。


カキ―ン!


 打球がセンター・藤島の正面へワンバウンドで飛ぶ。打球を捕って藤島はバックホーム。羽黒が中継に入っ…、


「!?」

「!?」


た、と思いきや何と片膝を着いてバックホームの送球を見送ったのだ。


「えっ…、今ノーカットって言った?」

「いや…、指示する前に片膝着いたぞ…」

―さっきのライトの時は一応ノーカットって言ってたのに…、何で?


 小宮山と松浪は今の判断に困惑していたが、羽黒はキャッチャーの温海が送球を見てからではなく、藤島がボールを投げた瞬間にノーカットで行けると判断して、片膝を着いて見送ったのだ。つまり、温海が指示するよりも早く羽黒が好判断をしていたのだ。実際、藤島の送球は矢のように速く、ワンバウンドでストライク送球だった。


「ナイスバックホーム!」

「うん」


 羽黒に褒められた藤島はそのままありがとうございました、とノッカーに礼を言うとファールグラウンドに駆け足で引き揚げた。


捕手(キャッチャー)より早い判断できるって…。

―どんだけ巧いんだこいつは…。


 小宮山と松浪は唖然としたまま、動けなかった。外野ノックは全て終えて、同時にBSOランプはあと1個となった。


『鶴岡クレーンズ、ノック時間あと1分です』

「内野バックホーム!」


 内野も愈々締めのバックホームだ。


―早い、巧い、ミスが無い…。オレら凄いのを相手にしちゃってんだな…。

―キャプテンのお顔はああやけどオレや開次からしたら結構好物やで。こういう相手のほうが燃えるわ。


 ベンチ前にちょっとだけ身を乗り出して沈んだような表情になっている永田を見て、逆に関川は前向きな心構えで闘志を燃やし続けていた。


 その関川が三塁側ブルペンから三塁側ベンチに戻る時、鶴岡クレーンズのシートノックも大締めのキャッチャーフライまで進んでいた。


 鶴岡クレーンズのキャッチャー・温海がこれを収める。それを見てから、関川は三塁側ベンチに入った。


 温海とノッカーを含めた鶴岡クレーンズのメンバー全員が整列して挨拶するタイミングで、最後のBSOランプが消えて、シートノック終了のサイレンが鳴った。


 唯々、凄いものを見せつけられた。相手のあまりの巧さに、沈黙してしまった…。うちとの差が、桁違いにわかるようなノックだった…。


…が、そんなことは言ってられない。既にシートノックは終わっているから、今は切り替えてやるべきことをやろう―永田はまず自分に気を奮い立たせて両頬を両手で叩くと、全員に次の行動の指示を出した。


「皆、応援団挨拶行くよ!」


 両手を叩きながら全員に指示を出すと、1人駆け足で三塁側アルプススタンドへと向かった。

 グラウンドでは整備員によるグラウンド整備が行われている中を、N`Carsのメンバーは全員駆け足でアルプススタンドに向かう。着いたところで、永田を先頭にメンバーが横1列に整列する。


「気を付け、礼! 応援お願いします!!」

「お願いします!!」


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