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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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43/135

試合観戦 ~白鷹ホワイトホークス 対 米沢ローリングス~ (5回裏まで)

「もう少し真ん中のバックネット裏に寄るか」


 N`Carsのメンバーは観客席に着いた後、両チームを公平に見易いように、バックネット裏の真後ろの列の席に移動した。

 しかしながら今日は代表決定戦ということもあり、バックネット裏にも沢山のお客様がお見えになられていた為、結果としてN`Carsのメンバーは、1番真後ろの、1番高いところの席に陣取ることとなってしまった。


「席に座れただけ有り難いけどさ…」

「こんな高いところで見ること中々無いよ」


という他のメンバーの意見をよそに、関川は1人携帯ラジオを取り出して、AMラジオの放送局のチャンネルとボリュームを合わせてから、イヤホンを繋いだ。


 最初は各々リラックスした状態で試合を観ていたが、全員がリラックスしきったところで、客の1人が…。


「あれ、N`Carsでねぇが?」


と振り返って発言したのを切っ掛けに、徐々にお客の関心がN`Cars(こっち)に向いて来てしまった。


「何だ、敵情視察が?」

「ここさ来て何してんだ?」

「色々どわがんねぇチームだがらな」


―いや、オレらあくまで試合観に来ただけなんだが。

―アンタらの晒し者になりたくて来たわけじゃないんだけど。

―お前ら白鷹と米沢の試合がメインだろ…。こっち見てたら失礼じゃん。


 萩原、都筑と小宮山、そして永田がそれぞれ内心でちらほら見てはあれこれ言うお客に意見を返す。試合を観に来たチームじゃなくて試合をしているチームのほうを見てくれ―永田の意見が最も近いが、後の3人も裏を返せばそういう意見であった。


 一瞬でN`Carsに対するお客のほとぼりは冷めて、徐々に試合へと戻って行った。


 N`Carsのメンバーは再び全員リラックスしきった状態で試合を観戦していた。お客さんも含めて、皆ゆったりした状態でゆったりとした時間が過ぎて行った。しかしそれは、ある1つの “ 安心感 ” によるものだった。と言うのも…。


『4回の裏を終えて米沢ローリングスが2対0とリード。今日も無失点ピッチングを続けるエース・情野に貴重な援護点がこの回追加されました。今大会初戦から3試合連続で完封勝利を収めている情野投手、今日も4回まで無失点で今大会通算25イニング連続で無失点を継続中です。一方の白鷹ホワイトホークスはここまで内野安打のみの1安打だけ。今大会3試合すべて打ち勝って来た白鷹ホワイトホークスと言えど情野投手から点を取るのは至難の業か』

『…でしょうねぇ…』


 米沢ローリングスのエースピッチャー・情野の無失点好投―絶対に点を取られない―という安心感が羽前球場全体に伝わっていた。だから皆、リラックスして見ていられた。

ところが…。


カキ―ン!


「ありゃ、2本目出ちゃったよ」

「まずこれはね…多分想定内だと思う」


カキ―ン!


「えっ?」

「あれ、繋がっちゃった」

―…ちょっと雲行き怪しくなって来てない…?


『5回表、白鷹ホワイトホークスこの試合初めての連打でチャンスを広げました!』


―2アウト1・3塁だよ…。

―同点になっちゃうか…?


 白鷹ホワイトホークスの打線が段々繋がるに連れて、徐々に球場の雲行きが怪しくなった。


「情野さんピンチだね」

「まあでも情野のメンタルがこれで潰れたわけじゃないよ。向こうがかなり気合を入れて打って来ているんだ」


 相澤がペットボトルのお茶を飲みながら高峰と今の状況について話している中、


カキ―ン!


「あ゛―っ!!」

「センター前だ―っ!!」


とうとう、白鷹ホワイトホークスのスコアボードに「1」が灯った。


『遂に米沢ローリングスの情野投手から初得点を挙げました、5回の表の白鷹ホワイトホークス!! 情野投手の連続無失点イニング記録を25で止めて、尚同点、逆転のチャンスは続きます!! この3連打に続けるか』

『白鷹ホワイトホークスとしてはこのワンチャンスで一気に取りたいですね』

『逆に米沢ローリングスの、特に情野投手としては?』

『この回3つ目のアウトが長く感じているとは思いますが、だからと言って投げ急がないことですよ』


 確かにAMラジオ放送の実況・解説が言うように、白鷹ホワイトホークス押せ押せのムードではあった、が。


バシィ!


『三振!』


「ね?」

「本当だ…潰れない」


落ち着いて情野は三振を奪って、ピンチを切り抜けた。高峰の言う通り、簡単にメンタルは潰れなかった。

 一旦は怪しくなった羽前球場の雲行き。しかしそれを自分の投球で穏やかにして、カラッと晴れさせると、味方もそれに応えた。


『2対1、米沢ローリングス1点をリードして迎える5回の裏の攻撃です』


カキ―ン!

カキ―ン!


「うわー…」

「今度は米沢が本気出し始めたよ…」


 味方がやられたら今度は自分たちが取り返す―そのような雰囲気が、昨日の山形スタイリーズ 対 上山グローアップズ戦の6回にもあったが、チームが違うとは言え、同じような展開がもう1度見れるとは…。


カキ―ン!

カキ―ン!


「あーあ~…」

「投げて勝つってイメージ強いけど打って勝つチームでもあんのね米沢って…」


 周りが米沢ローリングスの集中打に半ば唖然としている中、永田は1人、徳山監督の近くにいた。

「オーダー書きました?」

「書いた書いた。この回終わっだら、さっき言った通りに動くぞ」

「はい」


 この集中打で、米沢ローリングス打線の “ 本気 ” を見たN`Cars含む観衆たち。4回裏と5回表、それぞれ1が灯っているスコアボードの右隣且つ真下の5回裏のスコアボードに、「2」が灯った。


―この2点で、勝負ありかなあ…。

―多分な…。


 まだ5回の裏だが今度はそのような雰囲気が漂い始めた。跳ね返すにはあまりにも分厚い壁であろう2点―その2点が、そのような雰囲気を醸し出していた。

 スコアボードのアウトカウントのランプは2つとも灯っていた。これを見て、N`Carsのメンバーは次第に片付けを始めていた。


―いつでも動けるように…、ってあれ? もうちょっとで終わる?


 もう少し長くかかると思っていた5回の裏、米沢ローリングスの攻撃だったが、そう思うなり終わってしまった。


「良し、皆動くぞ!」

「さっき監督に言われた通り、ロッカールームに行ってて! 忘れ物とゴミだけは必ず確認しろよ! わかってるとは思うけど」

「わかってるなら何で言ったんだよ」

「念の為だよ」


『この後第2試合で対戦いたします、鶴岡クレーンズとN`Carsの監督とキャプテンは、メンバー表を持って役員本部室までお越しください』


―あ、はい。今すぐ行きます。


「あれ、N`Carsもう行っちゃうのが」

「次試合だがらな。色々準備さねばいけねぇんだべ?」

「最後まで試合観れねぇの辛いべな」


 お客さんの御意見や整備員がグラウンドを整備しているのをよそに、N`Carsのメンバーは全員観客席から立ち上がって出口へ繋がる階段を降りて行った。この後永田と徳山監督は先程アナウンスがあったようにメンバー表を持って役員本部室に向かって、他のメンバーは全員ロッカールームに行って待機する。


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