試合時間<移動時間
「皆乗ったな!? 忘れ物は無いな!?」
「あ、うん」
―とは言っても念の為…。
永田はいつもより速いテンポで人数を指で数える。
「…17、監督も真奈美ちゃんもいる、そしてオレ、20人全員います」
「では、よろしくお願いします」
「はい、では安全運転で参りますのでよろしくお願いします」
マイクロバスの運転手はメモらしき紙を服の胸ポケットにしまうと、いつものルーティンで挨拶をしてから、左足でクラッチペダルを踏み込んでシフトレバーをニュートラルから1速へ入れると、そのままハンドブレーキを下ろして、左足をクラッチペダルのバネの力で少しずつ戻して、同時に右足でアクセルペダルを踏み込む、所謂半クラッチでマイクロバスをゆっくりと発進させた。
「じゃ皆、軽く2時間はある移動時間だからゆっくり寝ててね」
「えっ!? 2時間…!?」
「てことは…、試合時間の2倍…!?」
「うわぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~……………」
試合時間よりも長い移動時間だと聞かされて、皆我に返った。こんな長い時間と距離をかけて来たのか、と…。
現実を聞かされたことで疲労感が増したN`Carsのメンバー。現実直視と試合後の疲労感によって車内の雰囲気が重くなったまま、マイクロバスは来た時の駐車場とは裏側にある駐車場から、一般道へと向かった。




