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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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33/136

今日の振り返り

その頃、3塁側ロッカールーム


 代表決定戦進出を決めた面々は、全員荷物と道具を持って3塁側ロッカールームにいた。

「では、これからミーティングを始めます。お願いします」

「お願いします」

 いつものように、永田がミーティングの挨拶の音頭を取って、他のメンバーがそれに続く。

 続いて徳山監督の談話。

「まず3つ目、勝ったね。純粋におめでとう」

「ありがとうございまーす」

 N`Carsのメンバーが徳山監督からの祝福にお礼を述べる中、

「監督もおめでとうございます」

「あ、オレもか」

「監督の勝利でもあるんですから」

「ああ、それはどうも」

1人、永田は徳山監督に祝福の言葉を返した。

 話は今日の試合内容に変わる。

「さて今日は、ちょっと今までと違う感覚だったかもしれねぇな。まず相手の、最上ノーストップズさんのチームカラーが地味だけんど堅実っていう、ゆっくり時間をかけて自分たちにペースさ引き込む、言い換えれば知らねぇ間に空いてのペースさ巻き込まれてってしまう厄介なタイプだったことだな。ほら、攻撃面ではアウトは取られてるけんど良い当たりは続き始めてねがったが?」

 全員に質問したこの内容。すると都筑が、あ…、と思い出したように尋ねる。

「それってもしかして…、オレの第1打席のレフトライナーとかですか?」

「…ああ、その辺りだな」

 徳山監督は更に続ける。

「良い当たりは打たせて、でも打球は野手の守備範囲さ収めで行く。勝負さ勝った気さ長くさせといて、でも試合は向こうのほうが勝ってる。アウト取られでんだがら。130km/hさ届かねぇような球でコントロール良く投げて、そういう形で0を並べる。守るほうも巧いけんど、これは瀬見の投球術(ピッチング)の巧さが出てだんだべな」

 つまり、瀬見は最初から相手の各バッターに良い当たりを打たせて、且つ野手の守備範囲内に飛ぶようにコントロールを狙い定めて投げていた、と…。だが、それだけでは無かった。

「あと守備面。守っててさ、打球強いってのあったが?」

「何本かはありましたけど、全体的に…」

「ヒット5本は全部クリーンや無かった気がする」

 関川と片山が答えたように、芯で捉えられた当たりは何本かあったが決して多くは無く、ヒット5本は全てクリーンヒットでは無かった。だが、何れもしぶとくヒットにされていた。これを踏まえた上で、徳山監督は更に続ける。

「打球は決して強くなくとも、型は決して綺麗でなくとも、しぶとく塁さ出て、着実に進めて、確実に返す。地味であんまインパクト無ぇかもしれねぇけんど、野球で得点する上で必要最低限なことは果たしてんだ。しかもアウト1つ捨てた上で、後ろ2個を熟してんだがら余計にな。それまでの2試合で挙げた8得点も、今日のはエラー絡みでとは言え取られた1点も、そういうやり方が中心で取って来たんだべな」

―だとすると南陽さんはこれに嵌まって負けたのか…? 皆下馬評はこっちだったんだけど。

 徳山監督が話している間、永田は一昨日の2回戦で最上ノーストップズと戦った南陽サウスポジティブズがどうして負けたのかを、話の内容を基に憶測した。そんな中、徳山監督は更に続ける。

「そういうチームの時は、相手を自分たちのペースさ乗せねぇことだ。つまりは早めに流れを切っでしまう。だがらそこ行くと…、3回の攻防が危なかった。あそこを抑えで、次の回でうちのいつも通りの野球さ持ち込めたわけだけんど…、良く持ってけだな」

「ありがとうございまーす」

「打つほうはちゃんと皆…、打ち取られた当たりも多かったけんどそれでも逆方向さコンパクトに低い打球を打ってだな、っていう印象。長打は出てるけんどヒットの延長線だがらなあれは。逆方向さコンパクトに振った結果だがら、これは以後も続けて」

「はい」

「で次、守備なんだが」

―もう察してくださいよ。

「エラーは3つ出てるけんど、それ絡みの失点が1点だったのはまだ良い。ただ3つとも、バッターランナーが2塁さ行ってしまう大きなエラーだったよな」

 …と、話を振ったところでメンバー全員の顔が()()()()()()ような表情を見せたので、徳山監督もあまり深掘りするとまずいと判断した。

「…まあでもこれは、本当に以後気を付けて頂きたいことなので。一歩間違うと今までよりもっと酷いことさなるから、っていうことだけは言っておきます」

「はい」

 徳山監督がアイコンタクトで永田に話の主導権を渡す。

「今日の良かったところと悪かったところ、それぞれ出てたのでそれぞれ以後肝に銘じて、では」

「以上だな」

「はい。これでミーティングを終わります。ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

「では忘れ物ないように荷物纏めて、あといつものようにこのロッカールームを掃除してから出ましょう」

「はい!」

 N`Carsのメンバーはミーティングを締めると、すぐにロッカールームの掃除に取り掛かった。


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