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The Baseball Novel  作者: N'Cars


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31/135

草野球カップ3回戦・最上ノーストップズ戦(その15)

「この回で4点、何が何でも追い付け。いつも通りの攻めをしろ。片山からはヒット出てるんだから、自信持っていけ。良いな!?」

「はい!」

「皆で4点、追い付くぞ!」

「おー!!」


『試合開始から1時間5分という実に早い時間経過で7回表までを終えました。初回に相手のエラー2つで最上ノーストップズが先制、しかし直後の2回にN`Carsの先発ピッチャー・片山が自らバックスクリーンへ大会第8号のホームランを放ち同点に追い付きます。その後N`Carsは中盤から終盤にかけて大技小技、足技やバント等多彩な攻撃を絡めて小刻みに加点してゲームをひっくり返すと、6回にはキャッチャーの関川もバックスクリーンへ、大会第9号のホームランを放ち振り返ってみれば4点リードに広げていました。最上ノーストップズも2回以降ランナーを出し続けてはいますが…、中々本塁が遠い状態が続いたまま4点差でこれから7回の裏の攻撃です』


『7回の裏、最上ノーストップズの攻撃は―7番 ファースト 若宮』

『さあまずは当たっている若宮が出て反撃のきっかけを作れるか』

「プレイ!」

『そしてN`Carsはこの回を守り切って初の代表決定戦進出なるか。アウトはあと3つです』


バシィ!


「ストライーク!」

『初球はインコースのストレート。若宮も積極的に振っていきますが空振り』

「ナイススイング!」

「それで良いよ!」

『最上ノーストップズも代表決定戦進出を狙ってますからね。その為か力の籠った良いスイングでした』

『そしてネクストバッターズサークルには8番の法田の打順ですが背番号10の月楯が入っています。これは…?』


ガッ!


『2球目のカーブ、打たされた! 球速差のある縦のカーブに体勢を崩されて…、』


パン。


「キャーッチ!」

『ショートフライ、1アウト。先頭若宮出られず』

「ほれ、1アウト」

「ん。ん…?」

―代打やな。

『そしてネクストバッターズサークルにいた月楯がそのままバッターボックスに行きます。代打です』

『8番 法田に代わりまして バッター 月楯。バッターは 月楯』

『背番号10、ピッチャー登録の月楯が代打で起用されました。先程6回に登板しかかった月楯を打者として起用してきました最上ノーストップズベンチ』

『これは4点差ですから少しでも打てる選手を、ということでしょう。この試合でヒットはおろか出塁すらない法田くんに代打、というところまではわかるんですが…、ピッチャーを代打に起用するということはそれだけバッティングも信頼されているということなんでしょうね…』

「プレイ!」

―まー代打やったら初球から振ってくるわな。ストレート狙いやから変化球で躱す…、ところを敢えて。


バシィ!


「ストライーク!」

『ここも若宮に続いて初球から振っていきます』

―今インコースに真っ直ぐを見せたから、次は。

―ん。


バシィ!


「ストライクツー!」

『ここも振っていきますが空振り。外いっぱいに縦のカーブでした』

『代打ということで初球から積極的に振っていく姿勢は良いですね。ただまだちょっとどこかスイングに力みがあるように感じます』

「うわ…、監督、これ沢原のほうが良かったんじゃないすか?」

「沢原でも良いけんど、月楯もスイングが良くなって来てる。向の気持ちもわかるが、これはさっき登板できなかったからとかいう情けじゃない。あくまで1人の打者として、ここで確りと打って塁に出て貰う為に起用したんだ」

―スイングはええほうやけど、向町程やない。それにオレら、申し訳ないけどもっとええスイングしよるヤツらぎょうさん見て来とんねん。開次、3球勝負行くで。ええスイングしとるけどアンタのこれで十分抑えられる。

―ビシッと決めたるわ。


パァン!


「ストライクスリー! バッターアウト!」

『アウトコース、続けましたが今度はストレート! 空振り三振で2アウト!』

―今日の配球は多分向こうも見慣れてるやろから、況して代打やったらたいてい打撃技術のええヤツを使うて来るからそれを踏まえた上で打ってくるかもしれへんからここは敢えて三振取りに行かせて貰うたで。

―打たせて取るリードと三振取りに行くリードは全然違うからな。浩介のリードも、さっきまでと今のとで違うてたわ。

『9番 ピッチャー 瀬見』

『8番・法田の代打・月楯が空振り三振に倒れ2アウト。後が無い最上ノーストップズ、今日ヒット1本と当たっている先発ピッチャーの瀬見はそのまま打席に向かいます』

―瀬見はそのまま立つのね。

―さっき監督に発破かけられとったからな…。そんで闘志も前向きになったから、その気持ちを汲んで、ってことやろ。

―さてどうする? さっきはこれまでの打たせて取るリードが読まれてるかもしれへん思て三振取るリードに変えて三振取ったけど、ここどうする浩介?

―ビシッと締める。形はどうあれ、ここはアウトで締めるで。

『最上ノーストップズは瀬見が自ら出て後続に繋げるか…、出れば次はチーム1の好打者・向町です。一方のN`Carsは初の代表決定戦進出まであとアウト1つ』


パ―ン!


「ストライーク!」

『今日最速の143km/hの真っ直ぐ!! 今大会自己最速の144km/hに迫るストレートを投げて来ました!』

『今日初めてじゃないですかね…、こんな力のある真っ直ぐを投げて来たのは…。今まではどちらかと言うとあまり球が走ってないように最初私疑ったんですが…、関川くんが声を掛けに行ったのが1回あったぐらいですから、その辺り、3回辺りからこれは最初からセーブして打たせて取ることを狙いとしていたようだったんです。それがこの試合の山場で今まで温存していた力を解放した感じですね』

『今日の試合もこれまでは最速139km/h。ただどちらかと言うと打たせて取るような印象だった片山投手ですが、その前の月楯の辺りから、少しずつこういうボールを投げ込んでくる印象がありました』


パーン!


「ストライクツー!」

『ここも143km/hの真っ直ぐ、今度は空振り! 2ストライクと追い込んだのはN`Carsバッテリー、さあ代表決定戦進出まであとストライク1つです』

―これだよオレが打ちたかったの…。始めて打ちたいって思える球を投げて来てくれた気がする。良い選手だってわかってんなら、その良い球を打たなきゃ!!

『締めるかバッテリー、それとも打って望みを繋ぐか』


キィン!


『スライダー打って、ショートの横…、は抜けない! 小宮山捕った!』

 ランニングキャッチで小宮山が打球を捌き、三池のファーストミットへ。瀬見もヘッドスライディングで1塁へ―。


「アウト!」

『間一髪アウトだ―!! 試合終了、N`Carsが5対1で最上ノーストップズを下して代表決定戦進出! 最後の切符を掴みました!』

「ナイス涼!」

「うぃ」

「皆並ぶでー」

「そこ永田じゃないの?」

「永田はライトやから遠いの。今来たけど」

―終わっ…たか…。もうちょっと良い打球飛ばしたかったな…。

 瀬見もヘッドスライディングの体勢から起き上がり、土埃を両手で払いながら整列に加わる。

『5対1で、N`Carsの勝ち。ゲーム!』

「ありがとうございました!!」

 試合終了を告げるサイレンが鳴る。


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